日本の「過大なノルマ」の悪弊は企業・役所に蔓延!もう少し適当・いい加減に!

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過大なノルマ

1.ノルマとは

「ノルマ(ロシア語:Hopma、ラテン文字転写:Norma)」というのは、第二次大戦後、シベリアに抑留されていた人たちが日本に帰国した際に広まった言葉で、半強制的に与えられた労働の基準量のことです。

一般に日本の民間企業の営業においては、「ノルマ(目標)」が設定されるのが普通です。ノルマを達成した者には「インセンティブ」(報奨金、昇給、昇進、海外旅行などの高額商品授与など)が与えられ、未達成の者には「ペナルティー」(解雇、減給、左遷、パワハラなど)が課されます。

2.日本の過大なノルマ

しかし、その「ノルマ」が適正なものか、適切に運用されているかが問題です。なかなかそのチェック機能を果たす部署は見当たりません。社内監査(検査)でも、その支店(営業所)の業績が良ければ、そのノルマが適正かとか適切に運用されているかについて指摘することはなかなか難しいというのが実情です。ブラック企業でない普通の企業でも同様だと思います。

生命保険の「自爆営業」というのを聞いたことがあります。「契約獲得件数」を水増しするため、家族名義で自腹を切って契約を増やすというものです。郵便局の「年賀状販売ノルマ」が過大なため「金券ショップ店」への早期売却で自腹の損失を極力抑えているという話も聞きます。大手コンビニで、アルバイト店員に「恵方巻」の過大な販売ノルマを課して、達成できない場合は買い取らせるという事実上の「自爆営業」をさせていたとして問題になったこともあります。

<2019/7/11追記>「かんぽ生命の不適切販売」のニュース

郵便局員が営業手当欲しさに、新旧保険料を二重徴収していたケースなどの「不適切販売」が2019年3月までの5年間で最大93000件に上るとのニュースがありました。この背景にも「過大なノルマ」があったようです。

<2019/9/14追記>「ゆうちょ銀行の投資信託不適切販売」のニュース

ゆうちょ銀行の高齢者に対する投資信託の不適切な契約が、約19600件に上ったとのニュースがありました。勧誘時と購入時の2回、健康状態や商品への理解度を確認する必要がありますが、これを怠っていたのが9割にも上ったそうです。この背景にも「過大なノルマ」があったようです。

3.不毛な「ノルマ主義」はもうやめてほしい

自腹営業とは異なりますが、銀行やクレジットカード会社の「新規口数稼ぎ」営業があります。これは「新口契約件数」を増やすことが至上命題であり、「新口獲得件数」だけが評価基準なので、契約後すぐに解約されても「後は野となれ山となれ」になるのです。これでは、銀行やクレジットカード会社は、新口通帳やクレジットカードの作成手続きに掛った費用倒れに終わる可能性大です。

日本の警察には「交通取り締まり」や「職務質問や軽犯罪法などでの被疑者検挙件数」のノルマがあり、検挙実績を上げて見せるための不正がよく問題になっています。警官の行き過ぎたネズミ捕りや、事件のでっち上げ・捏造が起きる遠因はこのノルマにあります。

こういう不毛で有害な「ノルマ主義」はもうやめてほしいものです。有効な対策としては、「製品(あるいはサービス)価格」を徐々に値上げして、無理なノルマを課さなくても利益の出る企業体質に変えて行くことだと思います。

4.適正な製品価格に値上げして労働分配率向上を図るべき

話は少し違うかも知れませんが、ドイツのベンツが「高級車だから、当然価格が高い」という認識が定着しているように、日本の自動車メーカーも「日本車は高性能だから、当然それなりに価格が高い。」というイメージを定着させるべきではないでしょうか?

そうしないで、「高性能で低価格」を極限まで追求するから、アメリカなどから日本車は安売りしていると目の敵にされる訳です。これは、松下幸之助の「水道哲学」の影響かも知れません。水道哲学とは、「水道の水のように、低価格で良質な物を大量供給することにより、物価を安くして消費者の手に容易に行き渡るようにしようという経営哲学」です。しかし、従業員は過酷な勤勉労働を強いられることになり、たまったものではありません。自殺した電通の東大卒の新入女性社員も、超過密労働でノイローゼになりました。

これでは、会社(経営者)ファースト・顧客セカンド・従業員サード(あるいはラスト)になっていないでしょうか?

日産自動車のカルロス・ゴーン社長に代表されるように、外国人役員は驚くほど高額の役員報酬をもらっています。Jリーグの外国人監督も桁違いの報酬、実績に比べても過大な報酬を取っています。日本が敗戦のどん底から立ち上がって、欧米の製品に負けないように、販売競争に打ち勝つようにと「安価で高品質の製品」を作り続けた時期は、そうする必要があったと思います。中国や韓国が今、かつての日本のような「価格競争」を仕掛けています。しかし、日本はもうそういうやり方は終わりにすべき時期に来ていると私は思います。日本人の経営者・従業員は、もっと「正当な対価・報酬」をもらえるように、意識を変える必要があるのではないでしょうか?自動車の販売価格を上げることで売上が下がるかも知れませんが、アメリカの報復関税を課されるよりはましだと思います。今こそ「スピード調整」をすべき時期ではないでしょうか?

他の業種でも、「製品価格」を少しずつ値上げすれば、黒田日銀総裁のインフレ率2%の目標達成にも貢献できますし、それにつれてインフレが徐々に進めば、労働者賃金のゆるやかな上昇も期待できます。「値上げすると売れないから、値上げしない」と会社経営者がいつまでも言っているようでは、問題は解決しません。

もっと、「適当」「いい加減」の方がよいと思います。。「適当」「いい加減」という言葉は、一般的には悪い意味に使われていますが、「適切な」と良い意味に捉え直す必要があるのではないでしょうか?