今のゴルフ界は「飛距離」を求め過ぎ

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マスターズゴルフ

<2023/11/29追記>全米ゴルフ協会などがゴルフボールの飛距離抑制の規則変更を立案

次のような報道がありましたが、私は大賛成です。ただし、プロゴルファーやプロゴルフ協会、ゴルフ用品メーカーの賛同を得られるかは疑問です。

ゴルフルールを統括するR&Aと全米ゴルフ協会(USGA)は、年々伸び続けるゴルフボールの飛距離を抑えることを目的に、今年3月にプロやトップアマチュアのエリート競技に採用を求める「ローカルルールのひな形(モデルローカルルール=MLR)」を立案しました。

 エリート競技における使用球を公認球よりも“飛ばないボール”に限定するMLRで、R&AとUSGAは世界中の競技団体や用具メーカーなどの利害関係者にその案を示し、意見の聴取を進めました

 両団体は8月14日に意見聴取を締め切り、寄せられた意見を参考にしたうえで飛距離抑制のための新たな規則(アメリカのメディアは「ゴルフボール・ロールバック」と呼称しています)を策定。近々発表されることになっていました。

 ところが、その発表を前にR&Aのマーティン・スランバーズCEOがアメリカのゴルフメディア「ゴルフダイジェスト」のインタビューで語った話がかなり“意味深”でした。

「15年前と比べて飛距離が伸びていることに疑いの余地はありません。そして、間違いなく今後も伸び続けることでしょう。それに対し、私は長年意見を控えてきましたが、われわれが『ディスタンスレポート』(注:USGAと共同で2015年から毎年、世界中のツアーやアマチュアのドライバーの飛距離を調査・分析する『ディスタンス・インサイト・レポート』を発表)を発表するようになった時点で、この問題に対処する必要があることははっきりと認識していました」

 スランバーズCEOは飛距離抑制の必要性を認めたうえで、次のように続けました。

「この問題に対するわれわれの考えは明確です。それはUSGAのマイケル・ワンCEOも同じです。われわれの選択肢は3つしかありません。エリート競技に対するMLRの制定か、ジェネラルルールによる規制か、何もしないかの3つです。しかし、何もしないという選択はありません。マイケル・ワンも同じ考えです」と、何らかのルール改訂の敢行を断言しています。

 しかし、3月に発表したエリート競技に採用を要求するMLRについては、「競技ゴルフ界は“ノット・ハッピー”の反応でした」と明かし、「彼らからは、エリート競技と一般が分化され、別々のゲームになってしまうことに懸念が寄せられました。PGAツアーはその考えを公表。PGA・オブ・アメリカも同様で、それに多くの選手が続きました。多くの選手が反対の声を挙げ、私たちはそれに耳を傾けてきました」と、MLRの受け入れには大きな困難があることを認めています。

 そのうえでスランバーズCEOは「でも、われわれにはこのゲームの未来に対する責任があります。R&AとUSGAはゲームを健全に守らなければならないのです。ですから、われわれは関係者の声に耳を傾けたうえで、決断を下さなければなりません。その作業を進めており、年内に発表する予定です」と答え、インタビューは結ばれています。

 インタビューを掲載した「ゴルフダイジェスト」は、スランバーズCEOが掲げた「何もしない」を除いた2つの選択肢のうちどちらの可能性が大きいか、の判断は下していません。

 しかし、他のゴルフメディアは、「ゴルフボール・ロールバック(後退)の決定は間もなくだ。それは皆に影響するかもしれない」(スポーツ・イラストレイテッド)、「年末が近づくにつれ、このスポーツ全体に及ぶゴルフボール・ロールバックが唯一の選択肢のように思われる」(CBSスポーツ)といった見出しの記事を掲載。

 R&AとUSGAによる“飛ばないボール”の使用規則は、エリート競技に限定されるローカルルールではなく、ジェネラルルール――つまり、近い将来、公認球の規定が変わり、ゴルファーは皆、今より“飛ばないボール”でプレーすることになるのかもしれません。

小関洋一                ( 出典:e!Golf )

1.中嶋常幸はドライバーで300ヤードを目指す英才教育を受けた

今から40年以上前、日本のプロゴルフ界の名選手と言えば、尾崎将司・青木功・中嶋常幸・杉原輝雄などがいました。

その中で一番若い中嶋常幸は、父親からゴルフの英才教育を受けて「300ヤード」のドライバーショットを目指していたそうです。当時のゴルフクラブは、「パーシモン」ですから、最も飛ばす選手でもせいぜい270ヤードぐらいで、300ヤードの飛距離というのは、途轍もない数字で、当時の私は、中嶋常幸のお父さんも息子に無理な課題を与えていたものだと思っていました。ただその父親のスパルタ英才教育のおかげで、中嶋常幸はアマ・プロ・シニアを通しての「日本のメジャー7冠」(日本アマ・日本プロ・日本オープン・日本シリーズ・日本プロマッチプレー・日本シニア・日本シニアオープン)の偉業を達成したのです。

2.クラブやボールの進化で今やドライバーで300ヤードは珍しくない

しかし、その後「ゴルフクラブ」や「ゴルフボール」の進化は目覚ましく、今では男子のプロゴルファーなら、300ヤードのドライバーショットも珍しくありません。

私がゴルフを始めたのは30歳と早かったのですが、その後あまりゴルフをしないでいたので、クラブやボールの進化に完全に取り残されていました。50歳近くなってゴルフを再開した時、始めた当時の「パーシモン」のゴルフクラブでティーショットしようとすると、同伴競技者から、「今どき、まだパーシモンのクラブを使っているとは珍しい」と、あたかも骨董品の道具を使っているように驚かれました。

パーシモンに比べて、新しいドライバーは「でかヘッド」で、大きさが全く違います。ボールもやや大きくなり、糸巻きボールからウレタンカバーボールに変わりました。その結果、同じ人がショットしても飛距離が伸び、クラブヘッドが大きい分ミスショットが少なくなったようです。

1995年から2005年までの10年間にゴルフクラブとゴルフボールの進化がどんどん進み、2017年現在では、アメリカのプロゴルファーを中心に、300ヤード以上のドライバーショットの飛距離を持つ選手が40人もいるそうです。日本の松山英樹も、この中に入っています。

3.ロングホールも今や2オン狙いが当たり前

こうなると、パー5のロングホールも2オン狙いが当たり前になり、ロングホールの距離を伸ばすゴルフ場も出て来る始末です。ロングホールは「472ヤード以上」と定められているだけなので、600ヤード以上にしても問題ない訳です。

ただ最近は、「高反発クラブ」は公式競技では使用禁止となるなど、「飛距離志向」も一段落した感があります。

4.今こそ「ヒッコリーゴルフ」に回帰すべき

ところで、私が提唱したいのは、昔のようなパーシモンの「飛ばないクラブ」と糸巻きの「飛ばないボール」を使った「箱庭ゴルフ」に戻ることです。もちろん、既存のゴルフ場を使えばよいのです。アマチュアでスコアが悪くなって嫌な人は、パー72を必要に応じてパー76とか自分で適当に増やしてもよい訳です。

それと最近のゴルフ場は、お客を沢山入れるためか、1ラウンド2時間30分以内とか言って急がされるので困ります。70歳近い老人としては、もっとゆっくり楽しみたいのですが・・・

5.日本のプロゴルファーはもっと「ショットの精度」を上げよ

パー5で2オンを狙う必要なし

最近の日本のプロゴルファーについても、注文があります。男女とも「飛距離全盛」のプロゴルフ界ですから、「飛ばす選手」は確かに増えたのですが、ショットの精度というか技術が低下しているようです。これはかつての尾崎将司・青木功・中嶋常幸・杉原輝雄ような「スーパーヒーロー」、女子で言えば樋口久子・岡本綾子・不動裕理のような「女王」がいないからかも知れません。唯一それに該当する選手は、アメリカで活躍している松山英樹ぐらいです。

パー5でのピンに絡むサードショットとか、パー4でのべたピンショットとか、パーオンできなかった時でも絶妙の寄せパーを拾うような「これぞプロのスーパーショット」というような熟練の技・達人の技をもっと見たいのです。飛距離で劣っていた杉原輝雄は、弛まぬ練習を重ねた成果である精度の高いフェアウェイウッドを駆使して、尾崎将司や青木功などに対抗して優勝を重ねました。

どうも、今の日本選手は、男女ともに、韓国選手などと比べて技術が劣っているように思えて仕方がないのです。特に女子に場合、週替わりで韓国選手の誰かが優勝してしまうことが多いのです。二日目の上位に韓国選手がいると、「今週も日本選手の優勝は無理だな」と思って、日曜日の最終ラウンドを見る気もしなくなります。つまり、日曜日の大逆転を期待できる選手がいないのが現状なので、見ても面白くないからです。ちょうど、マラソンや駅伝の「一人旅」が全く面白くないレースなのと同じです。

日本のプロゴルファー並びに日本プロゴルフ協会の皆様へのお願いですが、もっとゴルフの精度を上げる努力・工夫をして頂きたいのです。そうしないと、男子ゴルフだけでなく、女子ゴルフのスポンサーになりたい企業も減って、試合数はどんどん少なくなると思います。テレビの視聴率も、当然ながら低下の一途をたどることでしょう。

優勝する韓国選手の「引き立て役」になった「どんぐりの背比べ」のような小粒の日本選手ばかりでは全く面白くありません。

尾崎将司は「ジャンボ尾崎」という愛称の通り、「飛ばし屋」ですが、彼は飛距離だけでなく「小技」も抜群に上手でした。そうでなければ「通算113勝」は成し遂げられません。彼の再来のような「飛距離」「小技」ともに抜きんでた日本人の男女プロの登場を熱望いたします。