「寒餅(かんもち)」で「おかき」(かきもち)を作った話

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餅つき

忽ちに食ひし寒餅五六片(日野草城) 寒餅を搗く音のして杵あがる(兩角竹舟郎)

皆さんは「寒餅(かんもち)」あるいは「寒の餅」という言葉をご存知でしょうか?「寒餅」は、俳句の季語(季別:新年、項目:生活)にもなっていますが、現在では家で餅を搗くことはあまりないようですね。

「寒餅」というのは、立春までの約30日間のあいだに搗くお餅のことです。寒中に搗いた餅には黴が生えず、保存がきくと言われており、かき餅やあられ餅にして干して貯蔵しておき、春にお茶菓子代わりに食べたものです。寒餅は、旧正月を祝うために搗いたとも言われています。

地方によっても異なりますし、同じ関西でもそれぞれの家によってやり方が違うとは思いますが、我が家のやり方を、思い出しながら詳しく書いてみます。

我が家では、1月末頃に寒餅を搗きました。寒餅は、干し海老・青海苔・胡麻・白下糖(しろしたとう)の四種類を作りました。ひと臼ごとに中に混ぜるものを変えて、色や味の変化を楽しむのです。そして作った大きな楕円形の「海鼠(なまこ)餅」を種類ごとに分けて麹蓋(こうじぶた)」(我が家では「こうじゅうた」と呼んでいました)という大きな杉の柾目の箱に入れておき、乾いたら、断面が5cm四方くらいの細長い棒状に切り分け、それをさらに餅切リ専用の押切(おしきり)で幅1mmくらいの厚さに切って、生のおかきを作ります。

それを棚(我が家では、金網の棚ではなく古い簀戸で代用)に並べて10日間くらい乾燥させた上で、自家製の「おかき」(かきもち)にして食べるのです。醤油をたっぷり塗った市販のおかきとは違って素朴な美味しさがあり、懐かしい味です。私は、「干し海老」と「白下糖」のおかきが大好きでした。「白下糖」というのは、「和三盆(わさんぼん)」を作る前に糖汁を煮詰めた粗糖の塊を板状にしたもので、黒糖の一種です。私の友人が我が家へ遊びに来た時、母が「家で作った粗末なもので、お口に合わないか知れませんけど」と言って例の「おかき」出したところ、皆「おいしい、おいしい」と言って何枚も食べていました。

皆さんのご家庭の「寒餅」はどんなものだったでしょうか?

かんもちづくり―立山歳時記