「国際競技連盟」幹部の「汚職」多発について考える

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ブラッター

最近、国際競技団体幹部による汚職事件の報道が多いように感じます。

今回は、この問題について考えて見たいと思います。

1.世界陸上招致の贈収賄疑惑

2019年5月24日、「フランスの司法当局が、今年9月にドーハで開催予定の世界陸上招致を巡る贈収賄疑惑で、捜査を開始した」とのニュースがありました。

贈賄側は、カタール出身で仏サッカー「パリ・サンジェルマン」のナセル・ケライフィ会長です。

収賄の疑いが持たれているのは、国際陸上競技連盟前会長のラミーヌ・ディアック氏と息子のパパマッサタ氏の二人です。この二人は次に述べる2020年東京五輪誘致を巡っても収賄疑惑が持たれています。

2.オリンピック誘致の不正疑惑

2019年1月11日、「フランスの司法当局が、竹田恒和JOC会長を、2020年東京五輪招致に絡む贈賄容疑で、訴追に向けての手続きを開始した」とのニュースがありました。

日本が五輪招致のために「コンサルタント契約」を結んだ相手の会社の社長が、「国際陸上競技連盟前会長」(1999年~2015年)で「IOC委員」のラミーヌ・ディアック氏(1933年~ )の息子の友人で、コンサルタント料として支払った約2億3000万円がラミーヌ・ディアック氏に流れた疑いが持たれているのです。

ラミーヌ・ディアック氏はセネガル人で、1950年代に走り幅跳びで活躍した選手です。彼は2016年のリオデジャネイロ五輪誘致でも「買収」の不正疑惑が持たれています。

3.FIFA汚職事件(2015年)

国際サッカー連盟(FIFA)のゼップ・ブラッター会長(1936年~ )は、在任中の1998年から2015年までの17年間に、資金工作をはじめとする組織的不正や詐欺・汚職が事務局内で横行していたことが発覚して、実質的な職務停止処分を受けています。本人も2015年FIFA汚職事件における不正支出に関して捜査を受けています。

これは、FIFAワールドカップ招致活動やテレビ放映権をめぐる利権、賄賂の要求、不正受領した金のマネーロンダリング(資金洗浄)と私的流用などの問題です。

ゼップ・ブラッター氏はスイス人で、1975年にFIFA事務局に入局後、有力者を後ろ盾にして会長にまで上り詰めた人物です。

4.「IOC委員」の接待疑惑

国際オリンピック委員会(IOC)のサマランチ元会長(1920年~2010年)は、スペインのスポーツ官僚でしたが、1980年から2001年までの21年間もの長きにわたってIOC会長職にありました。

1970年代までは、オリンピックを開催すると開催都市の財政に巨額の負債が残るため、開催を敬遠する都市が多く、IOC委員たちは開催都市を探すのに大変苦労したそうです。

しかし彼の在任中に「オリンピックの商業化」が急速に進みました。特に1984年のロサンゼルス五輪以降、特にそれが顕著になりました。そんな中で、IOC委員への「買収合戦」「過剰接待疑惑」がたびたび指摘されてきました。

オリンピックの開催地を決める立場にある「IOC委員」の何人かが、「開催候補都市の関係者」から各種のプレゼントや利益供与を受けていたのではないかという疑惑です。

これについては、以前は「開催候補都市の関係者」が直接「IOC委員」と接触することが認められていたのですが、このような疑惑が出て来たため、「エージェント(コンサルタント会社)」以外は「IOC委員」に直接接触することが出来なくなりました。

その結果、リオデジャネイロ五輪招致の時も、今回の東京五輪招致の時も「エージェント(コンサルタント会社)」が「ロビー活動」を行うことになり、またしても「買収疑惑」が出て来たのです。

しかし、考えて見れば、忠臣蔵の吉良上野介と浅野内匠頭との話でもわかるように、利権のあるところに金品が流れるのは当然です。

従来からIOC委員は、巧妙な隠ぺい工作をしていたかも知れませんが、開催候補都市の関係者から何らかの利益供与を受けていたとみる方が自然です。

その上で、どの都市が良いかを判断することになる訳ですが、「裏口入学の口利き」のように明らかに「箸にも棒にも掛からぬ」ような都市を推薦すれば「怪しい」となりますが、そうでなければ、全ての候補都市から利益供与を受けて「もらい得」「やらずぼったくり」ということもあり得ると思います。

ですから、今回問題になったのは、あまりにも高額な金額の利益供与を受けたためでしょう。

今後、「オリンピック・パラリンピック開催が、金がかかり過ぎて、その割に経済効果が見込めない」ということになれば、1970年代までのように立候補する都市も少なくなり、IOC委員に接待攻勢をかける都市も減少するのではないかと私は思います。また、それが望ましいことだとも思います。

また、ラミーヌ・ディアック氏もゼップ・ブラッター氏もサマランチ氏も全て15年以上会長職にありましたが、このように「長期間権力の座にあると腐敗する」ことは、イギリスの歴史家・思想家ジョン・アクトンが指摘している通りです。