プラスチックごみ問題の解決には中国などアジア諸国のゴミ処理方法改善が不可欠

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海洋プラスチックごみ

2019年6月28日~29日に大阪で開催されたG20において、「海洋プラスチックごみ(廃プラ)を2050年までにゼロにする目標」(「2050ゼロ」)が合意されました。これは、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」と呼ばれるものです。ただ、その実現に向けてはいろいろな問題があります。

1.海洋プラスチックごみ問題

最近、「プラスチックごみ問題」があちこちで話題になっています。特に「海洋プラスチックごみ問題」が深刻なようで、毎年800万トンのプラスチックごみが海洋に流れ込んでいるそうです。

海洋には既に1億5000万トンものプラスチックごみがあると推定され、このまま行くと2050年には海にいる魚と同じ量まで増えると予測されています。

海で海洋ごみに絡まったり、誤って摂取したりして、絶滅危惧種を含む700種もの生物が傷つけられたり死んだりしており、そのうち92%が海洋プラスチックごみによるものだと言われています。

2.海洋プラスチックごみ問題の解決策

基本的にプラスチックごみは、「リサイクル」「焼却処理」「埋め立て処理」されます。しかし川へのポイ捨てごみの流入のほか、ごみ処理施設が整備されていないか、ごみ処理に無頓着なアジアの国々の「不適切な処理」によって、大量の海洋プラスチックごみが発生しているようです。

「陸上から海洋に流出したプラスチックごみ発生量」(2010年推計)ランキングは次のようになっています。

1位:中国353万トン、2位:インドネシア129万トン、3位:フィリピン75万トン、4位:ベトナム73万トン、5位:スリランカ64万トン、・・・20位:アメリカ11万トン、・・・30位:日本6万トン

これを見てもわかるように、中国・インドネシア・フィリピン・ベトナムなどのアジア諸国のごみ処理方法を抜本的に改善しなければ、海洋プラスチックごみ問題は解決できません。

中国の習近平主席は軍事力強化に熱心で、「海上軍事基地建設」などの海洋進出で周辺国に脅威を与えたり、アフリカ諸国に対してかつての帝国主義国による植民地政策のような動きを見せていますが、PM2.5のような環境汚染問題や海洋プラスチックごみ問題には無頓着のように見えます。

国際社会は、まず海洋プラスチックごみを大量に排出している上記の国々に対して、ごみ処理と管理をきちんと行う体制を構築するとともに、自国民に対してもごみ排出についての指導を強めるなど適切な対策を講じるよう働きかけを強めるべきだと思います。

中国などのアジア諸国は、現段階では「リサイクル」までは無理としても、「焼却処理」か「埋め立て処理」の徹底を推進すべきでしょう。

日本のように、「ごみ焼却により熱や蒸気にしてエネルギーを回収し、発電や施設の暖房、周辺施設への温泉供給などに利用」する「サーマルリサイクル」が実現できれば、PM2.5対策にもなると思います。

欧米では、「サーマルリサイクル」は二酸化炭素を排出するとしてリサイクルと認めていないようですが、「サーマルリサイクル」での二酸化炭素の排出は微々たるもので、欧米の考え方は硬直的だと私は思います。これもうがった見方をすれば「ジャパンバッシング」の一つの表れなのでしょうか?

3.日本におけるポリ袋(レジ袋)の使用制限や有料化の動きは行き過ぎ

ポリエチレンは「エチレンプラント」での石油精製の過程で必然的に出来るもので、ポリ袋やペットボトルなどのプラスチック製品はこれの「有効活用」と言えます。

このポリ袋は安価で、買い物袋に使った後は、ゴミ袋にもなりとても便利なものです。これを「悪者」扱いするのは、本末転倒です。

しかも、ポリ袋(レジ袋)は、国内で1年間に出るプラスチックごみの2%程度と見られています。2016年に環境省が国内10地点で行った海岸の漂着ごみ調査によれば、プラスチックごみのうちレジ袋を含むポリ袋は容積で0.3%、ストローやフォークなどの食器類もわずか0.5%でした。比率が高いのは、漁網やロープ(26.2%)、発砲スチロールブイ(14.9%)などの産業用品で、生活関連では飲料用ボトルが12.7%を占めていました。

今の風潮は、「木を見て森を見ず」で、「穴の開いたバケツの、大きな穴(中国や東南アジア諸国)を修理せずにそのまま放置し、小さな穴(日本などの先進国)を一生懸命修理しようとしている。その結果、水漏れ(海洋プラスチックごみ汚染)はほとんど改善しない」ように見えます。

やはり、海洋プラスチックごみを大量に排出している国の排出を抑制することが第一です。日本としては、今後ともプラスチックごみが海洋に流出しないよう努める必要はありますが、わざわざ安価なポリ袋の有料化を強制したり使用をやめるような風潮は、的外れのようで、どうかと思います。

海中でも分解可能なプラスチックの代替品の研究開発によって技術の進歩があるのは、悪いことではありませんが、今の風潮はどこか的外れのように思えてなりません。


プラスチック汚染とは何か (岩波ブックレット) [ 枝廣 淳子 ]