中国は今、空前のマラソンブーム!その背景と、不正行為横行の原因や課題を探る

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中国のマラソンブーム

中国では今、マラソンが空前のブームとなっています。日本の東京マラソンや大阪マラソンのような大規模な大会も多数開催されています。

それとともに、気になるのが集団で近道を通ったり、途中区間を自転車で走ったりする不正行為が横行していることです。

1.中国のマラソンブームの背景

(1)マラソンブームの現状

中国の国家体育総局は、「2018年に800人以上が参加するマラソン大会が1581カ所で行われ、参加者総数は583万人、285の都市が主催した」と発表しています。実に毎日4カ所以上でマラソン大会が開催されていることになります。ちなみに2017年は1102大会で、参加者総数は498万人でしたから、大会が43%増、参加者が17%増と大幅増加です。

北京や上海、広州などの一線都市の大会には申込者が殺到し、エントリーするのも難しい状態で、開催地が次第に中・小都市に移って来ているようです。

マラソンがネットで絶大な人気を誇るスポーツとなり、ランナーは増加の一途をたどっています。そして、微信(WeChat)や微博(ウェイボー)などのSNSのマラソン関連の書き込みや投稿も人気を集め、健康的な身体作りや生活の質向上の代名詞ともなっています。

(2)歴史

今や「2兆円市場」とも言われる中国のマラソンブームですが、このブームはいつごろから、どのような背景で起きたのでしょうか?

2012年に発足した習近平政権が「『スポーツ大国』から『スポーツ強国』への発展」を掲げたことが背景の一つだと思います。

そして、大都市も地方都市も、「市民の健康増進」に資するほか、「街の名前を冠した大会は宣伝になり、経済効果も大きい」ということがあると思います。

マラソン大会が開催されると、飲食や観光、小売り、交通などの関連産業もそれに伴って発展します。2018年の中国のマラソン関連消費額は約2850億円、マラソン大会開催による経済効果は約4600億円、総生産額は約1兆1900億円に達しています。

何だか、中国人の日本における「爆買い」を連想させるような凄まじさですね。

2.不正行為横行の実態と原因

(1)不正行為横行の実態

テレビでも様々な不正行為の画像が放映されていますが、今回詳しく見て行きたいと思います。

①2018年11月の深圳市のハーフマラソン(参加者16000人)で258人の集団不正行為

・「折り返し地点」の手前1kmの茂みを通過するショートカット:237人

・代走を使った参加者:21人

不正行為者は「2年間大会出場禁止処分」を受けました。

②2019年3月の徐州市の国際マラソン大会で女性選手が途中「自転車」で走る不正行為

・15km~20km区間を自転車で走って制止されたが、40km以降再び自転車で走行

この女性選手は、「記録取り消し」と「本大会永久追放処分」を受けました。

(2)不正行為横行の原因

①「フェアプレー精神」が根付いていないこと

中国では「フェア(公正な)プレーでルールを遵守して競技を行う」という「フェアプレー精神」がまだ根付いていないからではないかと思います。勝つためにはどんな手段を使ってもよいという考えの選手がまだまだいるということでしょう。

②「スポーツマンシップ」が根付いていないこと

「公明正大に全力を尽くす」という「スポーツマンシップ」がまだ根付いていないからではないかと思います。「フェアプレー精神」と同様に勝つためにはどんな手段を使ってもよいという考えの選手がまだまだいるということです。

本論から脱線しますが、このような現状を見ると、習近平主席の何としてもスポーツでも覇権を目指す『スポーツ強国構想』のもとで、水泳の孫楊選手が不正なドーピングを行っていた疑いがあることや、女子重量挙げ選手にもドーピング違反があったことなども思い出させます。ロシアのプーチン大統領も習近平主席と似たようなところがあります。

3.急速なマラソンブームの陰で山積する課題

2018年11月に紹興市で行われたマラソン大会では、レース中に2度倒れて心肺蘇生術を受けたランナーが、意識を取り戻すと再び走り出そうとして医療スタッフに止められるという一幕もあったそうです。

また2019年5月には、青島市で開催された「青島マラソン大会」で、先頭ランナーを間違った方向に誘導するミスが発生しています。

ランナー自身の「マラソン競技」についての危険性や安全に関する意識の欠如や、大会主催者、運営スタッフの「マラソン大会運営」に対する未熟さも一因だと思いますが、そのほかにも問題が山積しているようです。

(1)医療関係者の不足

(2)マラソン関連の医療訓練プログラムの不足

(3)マラソン大会主催者の収支赤字

(4)ドーピングや替え玉(代走)、近道などの不正行為の続出

(5)迷惑行為(トップ走者に無理やり中国国旗を手渡す行為など)の発生

(6)マナー違反(給水地点の水や食物を観客やスタッフが飲んだり食べたりする)の発生