ファラデーの「ロウソクの科学」は子供だけでなく大人も魅了する科学の啓蒙書!

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ファラデー

皆さんは、中学の理科か高校の物理の授業でファラデーの名前をお聞きになったことがあるでしょう。しかし、詳しく知っている人はあまりおられないのではないでしょうか?

2019年のノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんが、「小学生の時にファラデーの『ロウソクの科学』を読んで、化学に興味を持つきっかけとなった」と明かしたことから、この本が急に人気が出て、楽天市場やAmazonなどのネットで見ても「10月下旬以降入荷予定」となっており、今出版社では増刷に大忙しのようです。

吉野彰さんがリチウムイオン電池を開発して「スマホのある暮らしを可能にした」のに対し、ファラデーは「電磁誘導の法則」を発見して「電気のある暮らしを可能にした」学者です。

1.マイケル・ファラデー(1791年~1867年)とは

彼は、イギリスの化学者・物理学者で、電磁気学および電気化学の分野で多大な貢献をしました。「電磁誘導の法則」「反磁性」「電気分解の法則」などを発見しました。肖像画を見るとなかなかハンサムですね。

19世紀最大の天才的科学者で、科学史家は彼のことを「科学史上最高の実験主義者」と呼んでいます。

もっとも有名な「ファラデーの電磁誘導の法則」は、磁束の変化の割合と誘導起電力は比例するという法則です。

彼は貧しい鍛冶屋の息子だったため、早くから家事を手伝い、小学校中退で14歳から20歳まで年季奉公で製本屋の小僧になりました。

しかし、彼が製本途中の書物の片隅にすばやく好奇の目を光らせるのを見て、その製本屋の主人が彼に興味を持ち、彼に書物を読む時間を与えてくれたので、上級学校には行けませんでしたが、多数の本を読むことが出来ました。

これが科学者ファラデーの出発点となった訳です。その後二人の科学者の講演を聞いて、科学者への道を歩き出します。

彼は「ロンドン市哲学協会」の会合で勉強するようになり、やがて「王立研究所」のハンフリー・デービーの化学助手となります。しかし当時の「階級社会」では、その出自ゆえに「紳士(gentleman)(*)」とは認められず、デービーのヨーロッパ旅行の際は、「助手兼従者」として随行させられました。

(*)「紳士(gentleman)」とは、イギリスの歴史的社会階層である「ジェントリー(gentry)」(通常「郷紳」と訳される)に属する者を指す言葉です。「ジェントリー」は、貴族階級である「男爵(baron)」の下に位置する下級地主層の総称です。貴族には含まれないものの、貴族と共に「上流階級」を構成しました。

デービーはファラデーの才能に嫉妬を抱き始め、ファラデーが王立協会の会員になることに猛烈に反対しています。しかしファラデーの友人の推薦により、協会員に選ばれました。

ただデービーは、「私の最大の発見はファラデーである」という言葉を残しています。

ファラデーは教育にも関与し、王立研究所で教育について講演したり、一般向けの講演を行っています。少年少女向けの「クリスマス・レクチャー」も行っています。

2.「ロウソクの科学」とは

有名な「ロウソクの科学」は、1860年の「クリスマス・レクチャー」(6回連続講演)の内容を編集したものです。

ロウソクを題材に、燃焼時に起こる様々な物理・化学現象を多面的に解説したものです。併せて、ロウソクを使って手品のような様々な実験も披露したそうです。

(1)ロウソク:炎ーその源ー構造ー流動性ー明るさ

(2)炎の明るさ:燃焼のための空気の必要性ー水の生成

(3)生成物:燃焼からの水ー水の性質ー化合物ー水素

(4)ロウソクの中の水素:燃えて水へー水の他の部分ー酸素

(5)空気の中の酸素:大気の性質ーその特徴ーロウソクからの他の生成物ー炭酸ーその性質

(6)炭素または炭ー石炭ガスー呼吸と燃えるロウソクの類似点ー結論

3.マイケル・ファラデーの名言

(1)ロウソクは自分自身で輝くから、どんな大きなダイヤよりも美しい。

(2)自然の法則が一貫しているなら、これほど素晴らしいことはない。そんな中で実験はそのような一貫性を調べる最良の手段だ。

(3)次の日曜日で70歳になるのだから、記憶力が衰えても不思議ではない。この70年間私は幸せだった。そして、希望と満足感がある今も幸せだ。

4.米村でんじろう氏(1955年~ )と湯川学

(1)米村でんじろう氏は、元都立高校の物理の教師で、テレビで様々な面白い実験をやって見せてくれるユニークな「サイエンスプロデューサー」ですが、ファラデーの「ロウソクの科学」の「クリスマス・レクチャー」でも、このような面白い実験があったのではないかと思います。

(2)湯川学は、推理小説家の東野圭吾氏の「ガリレオシリーズ」の主人公ですが、「真夏の方程式」という作品で、小学生の少年を相手に、美しい玻璃ケ浦の海底の様子をペットボトルロケットとスマホの撮影機能を使って見せる話があります。

また、卓上コンロの「紙なべ」が燃えないのを実演しながら説明する話があります。これは、「水は百度で沸騰して気体になる、液体の水(出汁)が残っている限り紙なべは燃えない。紙が燃えるのは三百度ぐらいになった時だから」というのが種明かしです。

さらに、グラスの下のコースターを水に濡らして固形燃料の筒の上に置いたりして、完全燃焼・不完全燃焼・燃焼に酸素が必要なことなどを説明しています。

これも、子供向けに「サイエンスショー」を見せるような話で、ファラデーや米村でんじろう氏を想起させるものでした。