「いろは歌」の謎。いろは歌には「暗号」が隠されている?

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いろは歌

1.いろは歌とは

戦前まで、日本語の「字母(じぼ)」を表すものは、「いろは(伊呂波)歌」でした。

「字母」とは、「音を書き表す場合の基本となる一つ一つの文字」のことです。「アルファベット」がその代表的なものですが、「仮名文字(ひらがな、カタカナ)」も日本語の字母です。

この「いろは歌」は一般には、真言宗の開祖空海(774~835)が作ったものと言われています。空海は、中国で皇帝から「五筆和尚」の称号を与えられたくらいの天才ですから、日本語の字母を重複させずに過不足なく(「ゐ(ヰ)」と「ゑ(ヱ)」も入っています)織り込んで、一つの意味のある歌を作ることも出来たのでしょうが、見事というほかはありません。

ろはにほへ   色は匂へど     いろはにへと

ちりぬるをわ   散りぬるをわが   ちりぬるわか

よたれそつね   世たれぞ常な    よたれそねな

らむうゐのお   らむ有為の奥    らむうゐおく

やまけふこえ   山今日越えて    やまけふえて

あさきゆめみ   浅き夢見じ     あさきゆみし

ひもせ     酔ひもせず     ゑひもせす

「いろは歌」の意味は、次のようになります。

「花は色艶やかに咲くけれども、間もなく散り果ててしまう

人間の命もこの花と同じであって、永久に生き続けることは出来ない

だから空しい夢を見たり、人情に溺れたりする浮世の煩悩の境地から

逃れて、ひたすら仏様に縋って往生を祈ろう」

2.いろは歌の「暗号説」

ところで、この「いろは歌」については、いろいろな「暗号説」があります。上の表は、通常の「七五調」の区切り方と違って、「7音」ずつで区切った変則的なものですが、ここに「暗号」が隠されていると言われます。

「金光明最勝王経音義」という古文書では、7文字毎に区切って書かれています。

左側の表の右端の文字を下に読んでいくと「とかなくてしす」となり、「咎無くて死す」と解読するわけです。そして、左側の表の左端の「い」「ゑ」と最終行の「す」があるので「イヱス」が隠されているというのです。

しかし当時の日本には、仏教や神道はあっても、キリスト教が知られていたとは考えにくく、キリスト教の暗号が隠されているというのは、かなり無理がありそうですね。

もう一つの「暗号説」は、「とかなくてしす」を「咎無くて死す」と解読するのは同じですが、遺恨を持って死んだ源高明(みなもとのたかあきら)(914~983)だとする説です。源高明は、平安時代の公卿で、醍醐天皇の第10皇子ですが、藤原氏に忌まれて「安和(あんな)の変」(969年)で失脚し、政界から退いています。

第三の「暗号説」は作者が柿本人麻呂(660?~724)だというものです。「咎無くて死す」は、「イヱス」説と同じですが、「右側の表の右から3番目の文字を下に読んでいくと「ほをつのこめ」となり、「本を津の小女」と解読し、「私は無実の罪で殺される。この本を津の妻へ届けてくれ」というメッセージだというのです。

3.新しいいろは歌

蛇足ですが、最後に「いろは歌」以外に、明治時代に作られた「新しいいろは歌(国音の歌)」をご紹介しましょう。

これは、明治36年に「萬朝報(よろずちょうほう)」という新聞社が、募集したもので、一等に選ばれたのが、坂本百次郎氏の次の「鳥啼歌(とりなくうた)」です。

とりなくこゑす ゆめさませ
みよあけわたる ひんかしを
そらいろはえて おきつへに
ほふねむれゐぬ もやのうち
鳥啼く声す 夢覚ませ
見よ明け渡る 東を
空色映えて 沖つ辺に
帆船群れゐぬ 靄の中

もう一つ蛇足ですが、「仮名手本忠臣蔵」とよく言われますが、この「仮名手本」とは「47人」の赤穂義士を「いろは四十七文字」になぞらえたものです。


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