確定申告のe-Taxは本当にラクラク簡単なのか?それとも書面の方が簡単か?

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e-Tax

サラリーマンの場合、現役時代は「不動産所得」などがある人は別として「確定申告」とは縁がありません。

ところが退職して年金をもらうようになると、「確定申告」が必要になります。

1.確定申告は難しい

個人事業主の場合は、会計帳簿や領収書などの書類が多い上、会計処理の専門的な知識が必要なため税理士に依頼することが多いと思います。しかしサラリーマンOBの場合は自分でする人がほとんどだと思います。

しかし、税務署から配布される「所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」を見てもややこしいというのが第一印象です。

毎年税務署や、税務署からの「出張会場」に、確定申告書の作成方法についての相談者が大勢詰めかけるのもわかるような気がします。

2.e-Taxは本当にラクラク簡単なのか

e-Tax手続き

ところで確定申告の季節になると、有名タレントなどが税務署でe-Taxを操作し、「驚くほど簡単にできる」とコメントする様子がテレビでよく流れます。しかし、本当に簡単なのでしょうか?

(1)結論

e-Taxの実態は、「事前準備が大変で、利用環境の制約もあるネットサービス」であり、「利用者の利便性を考えていないメリットがほぼゼロのサービス」です。

確定申告書は「書面」で作成し、税務署に直接持参して提出するか、郵送する方が簡単だと私は思います。

ただ、税務署に直接持参する場合に注意すべき点は、駐車場が少ないことや、提出する人が多いため待ち時間がかかることです。

郵送する場合に注意すべき点は、返信用封筒を入れて必ず控を返送してもらうようにすることです。なお郵便料金が一番安いのは「定形外郵便」ですが、郵便事故などが起こった場合何の保証もありません。やはり「レターパック」を利用したり、定形外郵便に特定記録を付けてもらうのが安全です。

(2)e-Taxのメリット

①添付書類の提出を省略できること

「マイナンバーカード(写し)」「源泉徴収票」「医療費の領収書」「社会保険料控除証明書」「生命保険料控除証明書」「地震保険料控除証明書」「寄付金控除証明書」の添付が不要です。

ただし、e-Taxでなくても2019年提出の申告から「医療費の領収書」添付は不要となり、2020年提出の申告から「源泉徴収票」添付も不要になりました。

②早めに申告できること(24時間受付)

通常は2月中旬から受付開始ですが、e-Taxなら1月初旬から申告できます。

③還付が早くされること

通常は還付処理まで1カ月~1カ月半かかりますが、e-Taxなら2~3週間で還付されます。

④2020年分の青色申告(2021年提出)から、e-Taxを使わないと青色申告控除が65万円から55万円に減額されること

(3)e-Taxのデメリット

①事前準備が面倒なこと

「マイナンバーカードの作成」「ICカードリーダーの購入および設置」「各種ソフトのインストール」「電子証明書の取得」「e-Tax開始届出書の作成」「利用者識別番号の取得」「電子署名登録」などが必要です。

このうち「ICカードリーダー」は有料(3,000~5,000円台くらい)です。

②「ID・パスワード方式」の場合は、税務署に出向いて本人確認が必要なこと

③ブラウザは、基本的にWindowsの場合はInternet Explorer11、Macの場合はSafari10.1を使う必要があること

ChromeやFirefoxは使えません。Edgeを利用したい場合は事前に「Microsoft Store」にアクセスして、専用のEdge機能拡張をダウンロードする必要があります。

④e-Taxの説明文が非常にわかりにくいこと

⑤「イメージデータ」で送信する添付書類データは、スキャナなどで読み取った上で、「PDF形式」に変換する必要があること

3.国税庁発表の「e-Taxの利用率」について

2019年8月に国税庁から発表された「平成30年度におけるe-Taxの利用状況等について」によれば、次のようになっています。

ただし、「税理士」が行う会社や個人事業主申告についてはe-Tax利用が進んでいますが、個人が自分で行う所得税申告では「書面なしの完全なe-Taxの利用」は、まだそこまで普及していないように感じます。

〇オンライン利用率

・マイナンバーカードの普及割合等に左右される国税申告2手続(所得税申告、消費税申告 (個人)) 58.5% (+3.4 ポイント)

・ 上記以外の国税申告4手続(法人税申告消費税申告(法人)、酒税申告、印紙税申告) 82.9% (+2.9 ポイント)

・ 申請・届出等9手続(給与所得の源泉徴 収票等(6手続)、利子等の支払調書、 納税証明書の交付請求、電子申告・納税 等開始(変更等)届出書) 76.9%   (▲0.5 ポイント)

〇 ICT活用率 82.7% (+2.9 ポイント)

〇 e-Tax の利用満足度  81.5% (+5.5 ポイント)