BCP(事業継続計画)対策には一人多役も必要。新型コロナ肺炎蔓延を見て痛感

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BCP

「BCP(事業継続計画)」の必要性が叫ばれるようになって10年以上経つと思いますが、果たして実際に企業での「BCP対策」の策定や体制構築などの対応は十分に行われているのでしょうか?新型コロナウイルス肺炎蔓延を見て、その必要性を痛感しました。

私は6~7年前に勤務していた会社で、BCP対策として、社員が身近にできることとして「一人多役体制の充実・実践」を提言したことがありますが、結局取り上げられませんでした。

今回はこれについて考えてみたいと思います。

1.「BCP(事業継続計画)」

(1)「BCP」の定義

「BCP」とは、「Business continuity planning」の略称です。これは「テロや災害、システム障害や不祥事などの緊急事態が発生した時に、企業や官公庁などが損害を最小限に抑え、事業や業務の継続や復旧を図るための計画」のことです。

よく似た言葉に、「コンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)」(Contingency plan)があります。これも非常事態が発生した場合の対応策をまとめた計画ですが、「事業継続よりも緊急時の初動計画」に力点を置いています。

(2)「BCP」の必要性が高まった理由

①外的なリスクの増加

1995年の阪神・淡路大震災以降、日本では大地震や噴火が頻発しています。さらに毒性の強い新型インフルエンザや、国内でのテロ発生の懸念も増しています。また、食中毒やリコールなどの不祥事が起きた場合、SNSなどを通じて急速に情報が拡散するリスクも増加しています。

②事業構造の弱体化

「サプライチェーンマネジメント」や「ジャストインタイム生産方式」による「供給連鎖の最適化」や、自社のコア業務以外を外部に委託する「アウトソーシング」が拡大しています。

「サプライチェーン」とは、直訳すれば「供給連鎖」ですが、要するに「製品を作る最初の段階から、作った製品が消費者に届くまでの一連の流れ」のことです。「材料調達ー製造ー販売ー配送ー消費者」という流れです。

「サプライチェーンマネジメント」とは、「物流システムをある一つの企業の内部に限定することなく、複数の企業間で統合的な物流システムを構築し、経営の成果を高めるための管理手法」のことです。

今回の中国・武漢から起きた新型コロナウイルス肺炎騒動では、日本の企業や消費者が使用・消費するもので中国において作られている製品や部品があまりにも多いことに問題があることがわかりました。

「ジャストインタイム生産方式」とは、「生産過程において、各工程に必要な物を、必要な時に、必要な量だけ供給することで、在庫(あるいは経費)を徹底的に減らして生産活動を行うシステム」のことです。

これらは平時には大変有効なシステムですが、「サプライチェーン」の連鎖の一か所が断ち切られると、関連する企業全体が操業停止するという弱点があります。今回の「新型コロナウイルス肺炎」で、中国に過度に依存した「サプライチェーン」の問題が露呈しました。「アウトソーシング」の場合も、代替先を探す必要が出てきます。

③BCP導入に関する外部圧力の上昇

2013年時点で大企業の7割がBCP策定済みあるいは策定中とのことですが、今後「系列会社」「子会社」「孫会社」に対してBCP策定圧力が高まることが予想されます。

2.「一人多役体制」

企業として総合的なBCP対策を策定し、いつでも実施できるようにするのは、経営サイドの仕事ですが、社員としてそれぞれの専門分野に特化して知識・技能を修得するだけでなく、横の連携として、ほかの人の業務も緊急時には代替できる「一人多役」、そして究極的には一つのチームの「オールラウンドプレーヤー」を目指すことも必要ではないかと思います。

「一人多役体制」とは、「社員一人一人が、自分の担当の業務をこなせるだけでなく、他の人が主に担当しているいくつかの業務を修得し、緊急時には代行できる体制」です。その場合チームの長は、全ての業務を遂行することができる「オールラウンドプレーヤー」である必要があります。

そのために、日頃から横の連携を取って、お互いの業務を教え合い、「副担当」としてこなせる業務を増やす努力をする必要があります。

私が「一人多役体制の早急な確立」を提言した時は、今回のような「新型コロナウイルス感染症」(COVID-19)はまだ発生していない時期でしたが、インフルエンザの蔓延で多くの社員が長期間休む事態が予想されました。属人的になっている業務を極力減らし、業務知識の共有が必要と感じたのです。しかし実際にはその提言は取り上げらませんでした。幹部の「危機管理意識」が低いように私は感じました。

私はその当時はもう正社員ではなく、「契約社員」でしたが、新しく導入された業務のコンピュータシステムの操作要領がほかの人には理解しにくいように思えたので、自分なりに工夫して、エクセルで「誰にでもわかる操作マニュアル」を、パソコン画面の絵も貼り付けて作成しチーム全体で情報共有しました。

妻からは「契約社員なのだから、そんなに頑張らなくてもよいのでは?」と言われましたが、私には「緊急時に備えるための対策として、マニュアルを作ること」が自分の義務のように感じてマニュアルを完成させました。少しは皆の役に立ったのではないかと自負しています。

国鉄職員だった父から聞いた話では、「車掌」は緊急の場合は「運転士の代行ができる」とのことでした。当時「車掌」は「運転士の資格」を持っている人が勤務していたそうですが、今のJRではどうなのでしょうか?

「運転士の資格のある」車掌は「列車の運行管理」「緊急時の安全確保」「運転士に万一のことがあった場合の運転代行」など何でもこなせる「オールラウンドプレーヤー」と言えます。

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