日本人の行動様式の良さと衛生意識の高さが感染者数を低く抑えている大きな要因

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マスク手洗いうがい

イタリアやスペイン、アメリカなど欧米で「新型コロナウイルス肺炎」(COVID-19)の感染爆発(オーバーシュート)が起きているのに、日本が瀬戸際の状態が続いているとはいえ何とかギリギリの状態で持ちこたえていることについて、欧米からは「日本の謎」として、日本は感染者数を低く発表しているのではないかと疑いの目を向ける人々がいる一方、日本の対応の仕方を称賛・評価する意見もあります。

今回はこれについて考えてみたいと思います。

1.欧米人と日本人との行動様式の違い

(1)土足か否か

欧米人は室内にも「土足」で上がるのに対して、日本人は玄関で「靴を脱いで」から室内に入ります。このように、日本人は戸外の汚れを室内に持ち込みません。

(2)キスやハグ、握手などの頻度

また、欧米人は親しい人とはもちろんですが、挨拶代わりの「キス」や「ハグ」を頻繁にしますし、初対面でも「握手」は欠かせません。日本人は「お辞儀」はしますが、日本人同士では「握手」はあまりしませんし、「キス」や「ハグ」は滅多にしません。

そういう意味で、家庭内での家族同士以外で「濃厚接触」が起きる可能性は、イベントに参加したり、集会や宴会に参加する時ぐらいです。

日本人は、「新型コロナウイルス肺炎」の世界的感染拡大以前から、「社会的距離(social distance)」「物理的距離(physical distance)」も適度に保たれていたのです。

欧米人との民族性の違いによるところが大きいですが、日本人の伝統的な「節度ある距離の取り方」が今回の感染拡大防止に役立っているように思います。

2.日本人の衛生意識・衛生観念、公衆衛生道徳の高さ

感染対策

(1)マスクの着用

日本人は自分が風邪をひいた時は、咳やくしゃみなどで他人に風邪をうつさないためにもマスクをします。

インフルエンザなどが流行している時は、風邪にかからないように予防のためにマスクを着用する習慣があります。

また、花粉症や鼻炎の人も、自己防衛のためにマスクをします。

しかし、欧米人はほとんどマスク着用の習慣がないようです。

(2)手洗いの励行

日本人は一般的に「清潔好き」なので、普段からよく手洗いをしますが、季節性のインフルエンザの流行時や今回のような新型インフルエンザ流行時には、より一層念入りに手洗いを励行します。

(3)うがいの励行

うがいについては、日本人は幼児の頃から「外から帰ったらうがいをするように」親からしつけられていますし、小学校に入るとインフルエンザ流行時には学校でも強制的にうがい薬でうがいをさせられたものです。

以上のような日本人の衛生意識・衛生観念の高さ、公衆衛生道徳の高さも、感染拡大防止に寄与していると思います。

3.日本で「新型コロナウイルス肺炎」の感染爆発が起きていない理由

(1)上記の「欧米人と日本人との行動様式の違い」と「日本人の衛生意識の高さ」

(2)マスコミ、特にテレビの情報番組が連日のように「コロナ」に関する情報を専門家も交えて紹介しているため、多くの日本人に予防対策などの知識が浸透していること

(3)日本人は規則や指示を遵守する「規範意識」が高いため、「外出自粛」や「イベント自粛」などの要請があれば、それに従う人が多いこと

(4)やみくもに「PCR検査」を受けようとするのではなく、「4日間7.5度以上の熱が続く場合」(発熱の4日ルール)までは、病院受診をせず自宅で安静にして注意深く用心するため、欧米のように「PCR検査」に人が殺到するようなことになっていないこと

(5)日本は「軽症者や無症状者は検査せず、熱が4日続くなど感染が強く疑われる人や、感染者との濃厚接触者、クラスター感染が起きた場合のライブイベントや集会参加者などに絞って検査を実施する方針」を取っていること

なお、この方針は「感染者と接触した人が症状を示した場合にのみ検査を行う」というWHOの推奨に沿ったものです。「医療崩壊」を防ぐためにも、このような「仕分け」は有効だと私は思います。

4.「日本には隠れた感染者が大勢いる」という見立ては根拠がない

東京都公衆衛生医の垣本烈氏は、「プレジデント」2020年4月3日号で、日本のコロナへの対応や感染状況について「検査態勢の不備は確かにあるものの、判明した患者数を遥かに上回る莫大な感染者が既に偏在している、といった煽情的な物言いには根拠がない」と述べています。

三つの密

しかし、気を緩めることなく、「三つの密」(密閉空間・密集場所・密接場面)を避ける努力は継続する必要があると思いますし、感染経路が明らかになった場合やクラスター感染については、徹底的にこれ以上拡大しないように封じ込める努力が不可欠です。

余談ですが、「三密(さんみつ)」という言葉が、「仏教(主として密教)用語」として元々あります。これは「身密・口密・意密」の総称で、仏の体と言葉と心によって行われる三つの行為は不思議であることから、このように呼ばれます。衆生の体と言葉と心によって行われる三つの行為も、その隠された本性においては同等であるとされます。

「三密」の本来の意味から外れますが、我々は今「三密を避けること」を肝に銘じて新型コロナウイルス肺炎に打ち勝ちたいものです。