日本では「ダイエットブーム」が長らく続いていますが、素人判断で、「粗食」や「断食」をするのは危険な場合があるようです。
ダイエットのために、食事の量を減らしたり、野菜中心の「粗食」にしたり、あるいは何食かを抜く「断食」(ファスティング)をする人が少なくありません。
しかし、専門家によると、これは寿命を縮めるリスクもあるそうです。
1.ダイエットのための「粗食」「断食」の問題点
極端な粗食や断食に走ると、「栄養不足」に陥って様々な障害を引き起こします。
確かに野菜はビタミンやミネラル類、食物繊維が豊富なので、一見健康的なように見えます。しかし、これだけでは完全に栄養不足です。
人間が生きて行くためには、最低でも1日約1800~2000kcalのエネルギーが必要です。エネルギーが食事として外部から供給されないと、体は「体内にあるもの」で補おうとします。
不足した分だけ脂肪が燃焼されれば都合が良いのですが、現実はそうは行きません。人間の体には、タンパク質を分解して糖を作り出す「糖新生」(体タンパク質分解)という仕組みがあります。
最初に標的になるのが大量のエネルギーを消費する「筋肉」です。その器官の働きを抑えて、その分のエネルギーを生命維持に必要な脳や内臓を働かせるために回すことになります。
筋肉を動かすためには、カルシウムなどのミネラルも必要ですが、それが食事から得られないと、今度は骨を分解して補うようになります(骨密度の低下)。
また、断食をすると、リバウンドしやすくなるという弊害もあるそうです。
2.伝統的な和食より欧米型の食事のほうが寿命を延ばせる
国立国際医療研究センターの研究チームの面白い研究結果の発表があります。
この研究では、食事の内容を、「健康型」「伝統型(和食)」「欧米型」の3つのパターンに分け、それぞれの死亡リスクについて調べました。
・健康型の食事:野菜、果物、イモ類、大豆製品、キノコ類、魚、緑茶など
・伝統型の食事:ご飯、味噌汁、漬物、魚介類など
・欧米型の食事:肉、パン、乳製品、果物のジュース、コーヒーなど
この中で、死亡リスクが最も低かったのは「健康型」で次が「欧米型」で、「伝統型」は死亡リスクが最も高いという結果でした。
医師で作家の鎌田實氏や、東京都健康長寿医療センター研究所の新開省二副所長は、「粗食や断食は寿命を縮める」「50歳を越えたら、メタボより栄養失調に注意すること」「運動後30分以内にタンパク質を摂取すること」「(肉や卵などを)食べない健康法に騙されないこと」などと述べています。
3.「五大栄養素」のバランスの良い摂取が重要
結局のところ、「タンパク質」「炭水化物」「脂質」「ビタミン類」「ミネラル類」という「五大栄養素」をバランスよく摂取することが重要だということです。