河井元法相夫妻の選挙違反で被買収県議・市議はなぜ立件されないのか?

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河井克行・河井案里

<2022/1/28追記>検察審査会が現金受領の100人のうち数十人を「起訴相当」と議決

2019年7月の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で、元法相の河井克行元衆院議員(58)=1審で実刑確定=と、妻の案里元参院議員(48)=1審で有罪確定=から現金を受領したとして公職選挙法違反(被買収)容疑で告発され、東京地検特捜部が不起訴処分にした100人について、東京第6検察審査会が広島県議ら35人を「起訴相当」46人を「不起訴不当」と議決したとの報道がありました。なお、検察が捜査に乗り出す前に現金を自ら返却していた県議や後援会員ら19人については、不起訴を妥当と認める「不起訴相当」と議決されました。

そもそも「現金を受領した100人全員を起訴する」のが当然だと私は思いますが、遅ればせながらもそのうち35人を「起訴相当」としたことは一定の評価をすべきかもしれません。

しかし、最初の段階で検察誰に忖度して、何のために100人を全員不起訴にしたのか」についての明快な説明がない限り、到底多くの国民の納得は得られないと思います。

特捜部が再捜査し、3カ月以内に起訴か不起訴かを改めて判断する。再び不起訴としても、審査会が起訴すべきだとの2度目の議決を出せば、検察官役に指定された弁護士が強制起訴することになります。

<2021/7/6追記>東京地検が「現金受領の100人を全員不起訴」としたのは大いに疑念が残る

100万円単位のを受領した政治家もいるのに、「政治的な影響力の大きい克行被告から現金を押し付けられるなどした状況を踏まえ、刑事責任を問う必要はないと判断した」とのことですが、「これで公正な検察なのか?」と全く理解に苦しむ説明です。

<2021/3/9追記>被買収側の県議・市議が一人も立件されていないのは不公平

河井杏里元参院議員の有罪が確定しましたが、保釈された河井克行元法相はまだ公判中です。

それにしても不可解なのは、今もって「被買収側の県議・市議が一人も立件されていない」ことです。このままでは、コロナの時短協力金バブルで潤った中小飲食業者の場合と同様に「もらい得」で、不公平極まりないと私は思います。

「自民党本部からの1億5千万円の資金提供に『交付罪』が適用される可能性がないのか」も気になるところですが、今のところそのような動きはないようです。

今後、公判での河井克行元法相の供述(暴露?)に注目したいと思います。

2019年7月の参院選で当選した河井案里参院議員の選挙違反(買収)事件で、河井克行元法相と河井杏里参院議員が逮捕されるという事態に発展しました。法相経験者の逮捕は憲政史上初という異常事態です。

今回の事件で異例なのは、94人もの多数の地方自治体首長・議員、後援会幹部や地元有力者に対する大規模な買収事件であることのほかに、現金を受け取ったとされる大半の人が続々と受領を認めていることです。

河井夫妻の逮捕容疑は、案里容疑者を当選させるため、共謀して2019年3月下旬~6月中旬ごろ、5人に投票や票の取りまとめを依頼する目的で計170万円の現金を渡した疑いです。また克行容疑者は単独で、2019年3月下旬~8月上旬ごろ、91人に対して116回にわたり、計約2400万円の現金を渡した疑いです。

ところで現金を受け取ったとされる大半の人が続々と受領を認めているのは、「これだけ大々的に報道されたため、観念して罪を認めたのか?」、それとも「司法取引が行われたのか?」が気になるところです。

また、参院選前に自民党本部が案里容疑者に対して、1億5千万円もの極めて多額の資金提供をしたことが、公職選挙法の「交付罪」に当たらないかも気になるところです。

1.「司法取引」があったのか?

「司法取引」とは、「刑事手続において検察官の訴訟裁量を背景に、被告人と検察官との間で処分上の利益と引き換えに、捜査あるいは公判手続における協力を得ること」です。

日本では、もともと「司法取引」が認められていませんでしたが、2016年5月に改正刑事訴訟法が成立し、2018年6月1日から司法取引が認められるようになりました。

適用第一号が「三菱日立パワーシステムズ贈賄事件」、適用第二号が「カルロス・ゴーン事件」です。

今回の「河井克行元法相と河井案里参院議員の選挙違反事件」が適用第三号となるかもしれません。

ある法曹関係者は、「今回は被買収側は立件されない可能性」を示唆しています。理由は、地方議員の被買収者が約40人に上り、立件した場合、地方政界への影響が大きいとの懸念のようです。

しかし、そうだとすると、「検察の起訴・不起訴についての恣意的判断」「司法取引の恣意的運用」と言わざるを得ません。検察による厳正な捜査と公正かつ厳正な処罰を望みたいと思います。

2.自民党本部からの1億5千万円の資金提供に「交付罪」が適用される可能性は?

もう一つ気になるのが、現職の自民党参院議員溝手顕正氏との2人当選を図るためか、あるいは河井案里1人当選を狙って非常に多額の1億5千万円もの資金提供をしたことです。これは他の候補者と比べても突出している(一般的に提供される選挙費用の10倍)ようです。

多額の選挙資金の提供を決定した側が、「選挙人」等に供与する資金に充てられると認識した上で提供したのであれば、公職選挙法221条の5「買収目的交付罪」(買収行為をさせる目的を持った金銭・物品の交付)に該当することになります。

検察による厳正な捜査を望みたいと思います。