ほら吹き男爵と虚言癖。「代理ミュンヒハウゼン症候群」という精神疾患もある!

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ほら吹き男爵

<2020/9/10追記>「代理ミュンヒハウゼン症候群」の母親による乳幼児虐待事件が発生

代理ミュンヒハウゼン症候群」とは、「子供にわざと病気を作り、熱心に面倒を見ることによって周囲から関心を集めようとする精神疾患」で、子供に対する虐待の一種です。

「ほら吹き男爵」で有名なミュンヒハウゼン男爵の名前にちなんで命名されました。

昨日報道された事件は、母親が生後2カ月の長男に血液を飲ませ、嘔吐させたもので、「代理ミュンヒハウゼン症候群」の疑いがあるとのことです。2010年には、「代理ミュンヒハウゼン症候群」の母親が、入院中の娘3人の点滴に水などを混ぜて死傷させた事件がありました。この母親には懲役10年の実刑判決が言い渡されました。

なお「ミュンヒハウゼン症候群」とは、「周囲の関心や同情を引くために病気を装ったり、自らの体を傷付けたりする行動が見られる虚偽性障害の精神疾患」です。

皆さんは「ほら吹き男爵」という物語をお聞きになったことがあると思います。また「虚言癖」という言葉も、たまに耳にします。

今回はこれについて考えて見たいと思います。

1.「ほら吹き男爵」とは

「ほら吹き男爵」とは、奇想天外な物語として知られる「ほら吹き男爵の冒険(ほら吹き男爵物語)」の主人公のミュンヒハウゼン男爵カール・フリードリヒ・ヒエロニュムス(1720年~1797年)のことです。

彼はプロイセンの貴族ですが、話好きで晩年は館に人を集めては、フィクションを交えた自分の体験談を話して聞かせました。その話がとても面白いので、ある人物がその話を記録し、本人に無断で出版することにしました。話を聞いた男爵は怒って出版をやめさせようとしますが、本は結局売り出され大変な人気を呼びますが、男爵は憤慨のあまり亡くなったそうです。

若い頃の彼は、機知に富んだ話術で評判を集めましたが、同時に実務的な面では「誠実な人物」と評価されていたそうです。

1989年にテリー・ギリアム監督の映画「バロン」が公開されましたが、これは、「ほら吹き男爵の冒険」を映画化したものです。

日本でも「パロディー」作品として、星 新一氏の「ほら男爵 現代の冒険」や、寺山修司氏の「絵本・ほらふき男爵」があります。

2.「虚言癖」とは

イソップ物語の一つに「嘘をつく子供」という話があります。「オオカミ少年」とか「狼と羊飼い」というタイトルの場合もあります。

内容は、羊飼いの少年が退屈しのぎに「狼が来た!」と言って騒ぎを起こす。最初大人たちは騙され武器を持って出て行くが、徒労に終わる。少年が同じ嘘を繰り返したので、大人たちは信用しなくなり、本当に狼が現れた時誰も助けに来なかった。その結果、村の羊は全部狼に食べられてしまったという話です。

この寓話から、嘘を繰り返す人物を「オオカミ少年」と呼ぶことがあります。

ところで、「虚言癖」というのは、「どうしても嘘をついてしまう人物の性質」を表す専門用語で、1891年にドイツの心理学者アントン・デルブリュックによって提唱されました。

傾向としては、「虚栄心やうぬぼれから、自分を実際よりも大物に見せようとほらを吹く」もので、「劣等感の変形」とも言えます。

「虚偽性障害」「統合失調症」「演技性パーソナリティー障害」「妄想性パーソナリティー障害」「ミュンヒハウゼン症候群」という病気が関係する場合もあるようです。

「虚偽性障害」というのは、「義務を避けたり、利害を得るといった動機がないにもかかわらず、病者を装いたいという動機によって、意図的に病気のように振舞う精神障害」です。

最近殺人事件などでは、容疑者が犯行時「心神耗弱状態」だったと主張したり、わざと訳の分からない話をして精神障害を偽装するケースが多いように思います。これは「詐病」(仮病)です。

最近のテレビのバラエティー番組で、「貧乏自慢」の若いタレントの話を聞いていると、話を面白おかしくするために、「かなり話を盛っている」と思うことがよくあります。

たとえば、極貧のために「雑草」を食べていたという若い女性タレントや、貧乏だったので「ドッグフード」を食べたことがあるという話などです。

しかし、「春の七草」の中の「セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ」などは雑草で、「七草粥」に入れるものですから、雑草を食べることは何の不思議もありません。

また、「ドッグフード」は、今では人間用の食物より高価なものが多いので、「本当にドッグフードを食べていたのかな?」という疑問が残ります。

これはタレントの営業用の「虚言癖」と言うべきかも知れませんね。

蛇足ですが2019年6月に、金ピカ衣装でお坊ちゃまキャラを貫く「ほら吹き漫才師」として人気のあった横山たかしさんが70歳で亡くなりました。ご冥福をお祈りします。