「人口爆発」による将来の「食糧難時代」に「昆虫食」は救世主となるのか?

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人口爆発の課題

<2024/3/11追記>大量発生する厄介者カメムシの「食用化」がSDGs大賞に選ばれる

高校生のSDGs実現のアイデアを発表する大会(岩手県で初開催)で、「厄介者のカメムシの食用化」というSDGsのアイデアを出した葛巻高校が、最優秀賞を受賞したそうです。

地域で大量発生するカメムシを食用化するアイデアで、厄介な害虫を地域の魅力にするという発想の転換が高く評価されたそうです。

葛巻高校の吉田深桜さんは「めちゃくちゃうれしいです。身近にカメムシがいるので、普及して家庭料理ぐらいになったらうれしい」と語っています。

しかし、SDGsという考え方そのものに疑問がある上、「昆虫食」についてもコオロギで失敗が判明しているので、ましてやカメムシなど日本人には受け入れられないと私は思います。

<2024/2/17追記>食用コオロギ会社「倒産」が日本人の拒絶感を浮き彫りにした「昆虫食」

食用コオロギの養殖や販売を手掛ける「クリケットファーム」親会社もろとも倒産したことが明らかとなり、大きな話題となりました。昆虫食は食糧危機を救う貴重なタンパク源として注目されていますがその一方で激しく拒否反応を示す人も少なくありません

クリケットファームは2021年に設立し、環境に配慮した次世代フード『コオロギパウダー』を配合した食品などを販売。諏訪信用金庫および日本政策金融公庫より4100万円の協調融資を受けるなど期待されていましたが事業は軌道に乗らず、昨年末には業務を停止していました。なお、親会社を含めた3社の負債総額は2億4290万円にのぼるといい、食用コオロギが世間に受け入れられなかったことが鮮明となりました

昆虫食は、2013年に国連食糧農業機関(FAO)が食料問題の解決策に有効との報告書を発表。2015年に開催された国連サミットでは貴重なタンパク源として推奨されたこともあって、欧米を中心に注目されていました。

日本では2020年に無印良品が「コオロギせんべい」を販売して話題となりましたが、2022年には徳島県の高校で乾燥コオロギの粉末入りの「かぼちゃコロッケ」が給食として提供されたことが物議を醸し、学校には「子供に虫を食べさせるな」といった苦情が殺到しました。

クリケットファーム倒産のニュースに、アイドルグループ『仮面女子』の猪狩ともかさんは『現状他に食べるものがあるのにわざわざコオロギを食べたいと思いません』とXに投稿していましたが、これが多くの日本人の本音でしょう。

「恵方巻は食品ロスで大量廃棄されるのに、なぜ昆虫を食べることを推奨されなければならないのか?」と疑問に感じる人が多い中で、食糧危機だ、SDGsだと少々前のめりになり過ぎていたことは否めません。

日本は今少子化による「人口減少」で、労働力の減少や若年層の年金負担増大など様々な問題に直面していますが、全世界的に見ると、人口爆発による食糧難時代の到来が迫っています。

そんな中で、「昆虫食」が注目を集めています。

1.人口爆発

人口爆発グラフ

人口爆発

現在の世界の人口は、約77億人です。1900年には約15億人だったと言われていますので、100年あまりで62億人も増加したことになります。

人口爆発の原因は、医療や科学の飛躍的な発展と、食料生産技術の進歩、18世紀末のイギリスの産業革命、ヨーロッパ列強の植民地政策などいろいろな要因が指摘されています。

原因がどの場合であれ、子供の死亡率が高かったかつての「多産多死」の時代から、医療や食糧状況の改善によって死亡率が低下し、「多産少死」の時代になったことが最大の要因です。

現在、先進国では人口減少か微増ですが、アフリカ、中東や南米、東南アジアなどの発展途上国では「人口爆発」が続いています。

人口爆発に加えて環境汚染や温暖化、気候変動などにより、食糧や水資源の確保が深刻な問題となっています。

2.食糧難時代

食糧難

2016年に、イギリスのロイズ銀行のシンクタンクが発表した研究報告によると、2050年までに世界の人口は約90億人に達し、世界各国で深刻な食糧不足が発生すると予測されています。

2013年に国際連合が発表した「世界人口展望」では、2050年に約96億人、2100年に約109億人に達すると予測しています。

新型コロナウイルス肺炎に関連して、世界各国は競ってワクチン開発を進めていますが、今後各国の間で、「有効性と安全性が確認されたワクチンの争奪戦」が起こると予想されています。

これと同様に人口爆発の結果、世界的な食糧難時代の到来が迫っており、日本のように食糧自給率が39%と低い国にとっては、食糧が十分に輸入できなくなる「食糧争奪戦」のような切実な死活問題(「食糧安全保障」の問題)が起きる可能性があります。

国連食糧農業機関(FAO)でも、人口爆発による食糧不足に対応するため、2050年までに食糧生産を60%増加させる必要があるとしていますが、実現はなかなか困難です。

日本としては、「食糧自給率」を極力引上げ(できれば江戸時代以前のように自給率100%にして)、中国その他の国からの輸入に依存するサプライチェーンを断ち切り、「自給自足体制の確立」を一刻も早く行うべきだと思います。

3.昆虫食

昆虫食

アフリカ・オーストラリア・南米・タイや中国などのアジア諸国では「昆虫食」は伝統的な食文化の一つとして続いています。

現在、世界では少なくとも20億人が約1900種類の昆虫を食用にしています。

日本でも長野県のような山間部の地方では、貴重なタンパク源として「蜂の子」や「イナゴ」を食べる習慣があります。

世界で食用とされている昆虫には、コガネムシや毛虫・芋虫類、ハチ、バッタ類、セミ、シロアリ、トンボ、ハエなどがあります。

気になる風味ですが、セミはナッツ味、オオスズメバチの幼虫はフグの白子、トノサマバッタはエビ・カニに近い食感、タイワンタガメの雄は洋ナシの香りがするそうです。

(1)昆虫食のメリット

①栄養価が高い

人間が食用とした場合、白米が100グラムあたり約170キロカロリーであるのに対し、昆虫は400~500キロカロリー程度あります。

バッタと豚肉の動物性タンパク質を同じ重量で比較した場合、バッタの方が多く含まれています。

昆虫の種類によっては、ビタミンなどが豊富な場合もあり、豚肉や牛肉に比べて脂肪に含まれるコレステロール量が少ないのも特徴です。

②飼育単価が安く環境への負荷が少ない

鶏肉より豚肉、豚肉より牛肉と、大きな家畜を育てるほど、より多くの飼料や水が必要となります。たとえば牛肉1kgを生産するには約8kgの飼料が必要です。これに対して、昆虫肉1kgを生産するには2kgで済みます。

また温室効果ガスの発生量も、豚はミルワーム(ゴミムシダマシの幼虫)の10~100倍生産してしまうと考えられています。

昆虫飼育は、環境への負荷や、水使用量、必要な土地も小さいことから、「未来食」として、また「宇宙食」として注目されています。

なお、国連食糧農業機関(FAO)は、食糧難時代を乗り切るために、まずは「家畜の飼料用」に昆虫を養殖することを提案しています。

(2)昆虫食のデメリット

①見かけの気持ちが悪い

私が高校生の時、文化祭(学園祭)で生物部の人が「炙(あぶ)ったイナゴの試食」をさせていましたが、誰も食べようとしませんでした。

「昆虫食」は、見た目から「気持ちが悪い」「気味が悪い」「ゲテモノ食い」という印象を持つ日本人も多いのではないかと思います。

「粉末」にするなど加工しない限り、そのままの形では日本では一般に受け入れられないと思います。

②安全面の問題がある

自然採集の昆虫はどこで何を餌として食べたかわからないので、安全面に問題がある場合があります。したがって、獣肉の「ジビエ料理」と同様に、生のままで食べるのは厳禁で、必ず加熱が必要です。

また、昆虫は腐敗しやすいので、死んだ虫を拾って調理するのも危険な行為です。

③アレルギーリスクがある

昆虫は衛生的な環境で扱われる限り、病気や寄生虫が人間に感染した事例はあまり知られていませんが、まだまだ研究を重ねる必要があります。

また、昆虫には毒を持っているものや、毒のある花の蜜を吸う昆虫も避ける必要があります。

また昆虫は、カニやエビに近い種類であるため、「甲殻類アレルギー」を引き起こす可能性もあります。

④単価が高い

意外なことに、タイやアフリカでは昆虫は「高級食材」で、肉の10倍以上の価格で取引されるということです。

その理由は、ほとんどが「自然採集」であり小さいため、捕獲に時間や手間がかかり、人件費が高くついてしまうためです。

ちなみに、日本国内で流通している「ハチの子」や「イナゴ」は、価格の安い中国産・韓国産を加工したものであっても高価です。