ルイ14世の「すり替わり説」とは?「鉄仮面」についても紹介

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ルイ14世

前に明治天皇の「すり替わり説」をご紹介しましたが、フランスの「太陽王」ルイ14世にも「すり替わり説」が存在します。

1.ルイ14世とは

ルイ14世胸像

ルイ14世(1638年~1715年)は、ブルボン朝第3代のフランス王国国王(在位:1643年~1715年)です。ナバラ王国国王としてはルイス3世です。

ルイ13世(1601年~1643年)(下の画像)の長子で、妃はスペイン国王であるフェリペ4世の娘マリー・テレーズ・ドートリッシュです。王朝の最盛期を築き、ルイ大王(Louis le Grand)、太陽王(le Roi Soleil)と呼ばれました。

ルイ13世

父王ルイ13世の崩御により、4歳で即位し、宰相ジュール・マザランの補佐を得てフロンドの乱を鎮圧しました。

1661年に親政を開始するとジャン=バティスト・コルベールを登用して中央集権と重商主義政策を推進しました。対外戦争を積極的に行い、帰属戦争、仏蘭戦争で領土を拡張して権威を高めると、ジャック=ベニーニュ・ボシュエの唱える王権神授説・ガリカニスムを掲げ、絶対君主制を確立しました。さらにミディ運河とヴェルサイユ宮殿を建設しました。治世後半のアウクスブルク同盟戦争、スペイン継承戦争では苦戦し、晩年には莫大な戦費調達と放漫財政によりフランスは深刻な財政難に陥りました。

72年もの在位期間はフランス史上最長であり、18世紀の啓蒙主義思想家ヴォルテールはルイ14世の治世を「大世紀」(グラン・シエクル Grand Siècle)と称えています。

また、「中世以後の国家元首として最長の在位期間を持つ人物」としてギネス世界記録にも認定されている。

また、メヌエットを宮廷舞踊に取り入れメヌエットを最初に踊った人と言われ、その時、太陽神アポロンに変装して踊った姿から「太陽王」と言う諢名がついたとも言われています。

2.ルイ14世の「すり替わり説」とは

この輝かしいフランス国王であるルイ14世に、有名な「すり替わり説」があります。

(1)ルイ14世の出生をめぐる醜聞・俗説

ルイ13世王妃・アンヌ・ドートリッシュ

ルイ14世の出生には醜聞が付きまといました。実父については父王の宰相リシュリューとする説や、父王の王妃アンヌ・ドートリッシュ(1601年~1666年)(上の画像)の摂政時代に宰相を務めたマザランであったとする説があります。

こうした俗説が出回る背景には、ルイ13世と王妃アンヌ・ドートリッシュの仲が長い間冷え切っていたという事情があります。アンヌ・ドートリッシュは美女として名高く、例えばイングランドのバッキンガム公爵ジョージ・ヴィリアーズが公然と言い寄ったこともあるほどですが、ルイ13世とは反りが合いませんでした。

ルイ13世は同性愛傾向が強かったともされています。ところがある日、狩りのため遠出したルイ13世は妻アンヌの城館の付近で悪天候に見舞われ、やむなくアンヌの城館に一夜の宿を請うたところ、その夜のことで生れたのがルイ14世であったとされています

リシュリュー実父説は1692年にドイツのケルンで出版された『アンヌ・ドートリッシュの情事』と題された小説が出典であり、ヴォルテールの『ルイ十四世の世紀』で言及されたことでお墨付きが与えられてしまいました

また、アンヌ・ドートリッシュとマザランが愛人関係にあったとする説も根強いですが、少なくともアンヌがルイ14世を妊娠した1637年12月は、まだマザランがイタリアにいた時期であり、このマザランが父親という話の方も単なる噂話です。

(2)ルイ14世の「すり替わり説」

鉄仮面

またルイ14世の治世に実在した謎の囚人(いわゆる「鉄仮面」)(上の画像)の正体をルイ14世の兄弟とする説は、ドラ=キュビエールという無名に近い作家の史話が初出ですが、後にこの話をアレクサンドル・デュマ(1802年~1870年)(下の画像)がダルタニャン物語 の第3部『ブラジュロンヌ子爵』の題材としたことで有名になりました

デュマ

デュマの説の特徴は、親政開始の時点でルイ14世は双子の弟に入れ替わったという点にあります。大変大胆な仮説なのですが、大胆な仮説を展開するに足る傍証を、デュマは丹念に拾い集めています。

その最大のポイントは、成人に達し、親政開始を宣言する頃から、ルイ14世の性格が、大きく変わったという点にあります。それまで、どちらかというと、口数の少ない生真面目な青年の雰囲気を漂わせていた国王が、マザランの死後に親政を宣言した時からは、「若き国王は、威厳と貴賓に満ちていらっしゃる」とか、「王は大変公明で、戯れにも人を軽蔑したり、人の悪口を口にされることがありません」と、評されるように変貌を遂げたことにあります。

この点は、ルイ14世に帝王学を伝授する師匠役を果たしたマザランという、国王が頭の上がらなかった偉大な師の死去によって、国王の頭にのしかかっていた大きな重石が除かれたことによる、解放感のなせる技と考えた説もあるのですが、あまりの変化にいぶかしく思った貴族たちも多かったのです。

ルイ14世自身、「王様、お変わりになりましたね…」と語りかけられることも多かったらしく、自ら以下のように語ることも1度や2度ではなかったようです。「親政を宣言した瞬間、朕は気力が高まってくることを感じたのだ。朕は、これまで知らなかった物を、自分の中に見出した。今朕は国王であり、また国王たるために、生まれてきたように思えるのだ。」と。

ルイ14世の出生時、産室に伺候していた貴族たちを遠ざけ、ルイ13世妃アンヌは、双子の弟を出産し、その子はリシリューの命を受けたマザランを通じ、パリ市内の市井の市民に預けられました。マザランは、ルイ14世に万一の事があった場合、この双子の弟を替え玉として使うことを考え、この弟を大事に育てるよう命じたのです。

マザランの命により、ルイ14世の弟の見守り役を続けたのが、マザランの死後一時財務卿を務めながら、収賄の罪に問われて失脚したフーケでした。フーケの後を継いだのがコルベールでした。

腹心の部下に命じて、フーケの身辺を徹底的に調査したコルベールは、ある時期ルイ14世の弟の存在に気付きます。国王に瓜2つの若者の存在を知ったコルベールは、即座に事情を理解します。密かにこの弟君に接近したコルベールは、その聡明さに驚き、密かに国王の入れ替えを画策したというわけです。

ブルボン王家の王族は、誰もが狩猟好きだったことが知られています。フランス革命で処刑されたルイ16世も、国王の逃亡事件を起こした時、狩猟用の愛犬2頭を伴ってテュイルリー宮を脱出したことが知られているくらいです。

ですから、狩猟の際に国王をかどわかし、そっくりの若者に入れ替えることは、全く不可能ではありません。

3.「鉄仮面」とは

「鉄仮面」と呼ばれた謎の囚人ユスターシュ・ドージェ(17世紀中頃?~1703年)は実在の人物です。1669年、ルイ14世の大臣からピネローロ監獄の監獄長サン・マルスに預けられ、監獄長自ら世話をしたということです。以降、サン・マルスの転任と共にその囚人も移送され、サント=マルグリット島を経て、1698年にバスティーユ牢獄に移送されました。当時のバスティーユ牢獄の看守は、「囚人は常にマスクで顔を覆われ、副監獄長直々に丁重に扱われていた」と記録しています。

なお、世間一般では「鉄製の仮面を常に着用していた」というイメージが広く定着していますが、実際は布製のマスクだったとされ、それも人と面会する時にだけ着用させられていました。もし人前でマスクを取ろうとすれば、その場で殺害せよとの指示が出されていました。そのため、牢獄で世話をしていた者も囚人の素顔を知りませんでした。

囚人は1703年11月19日に死亡しました。「マルショワリー」という偽名で葬られ、彼の所有物などは全て破棄されたということです。

(1)「鉄仮面」の正体についての諸説

当時の噂では、フランス軍元帥、オリバー・クロムウェル、フランソワ・ド・ヴァンドーム(アンリ4世の庶子ヴァンドーム公セザールの子でフロンドの乱の指導者の一人)などが挙げられており、その後も様々な憶測がなされました。

主な推測だけでも以下のようなものがあります。

①「ルイ14世本人」説

1801年にナポレオンの支持者に広まった説では、囚人はルイ14世本人で、マザランによって扱いやすい替え玉と取り替えられたということです。この話には、囚人が獄中で子供を作り、その子が後にコルシカ島へ行き、ナポレオンの先祖になるという尾ひれも付いています。

②「ルイ14世の庶兄」説

ヴォルテールは、宰相ジュール・マザランとルイ13世妃アンヌ・ドートリッシュの息子で、ルイ14世の庶兄であるとしました。デュマはこの説を双子の兄にして『鉄仮面』を書きました。鉄仮面を扱った映画には、ルイ14世と鉄仮面の男が最終的に入れ替わるものもあります。

③「チャールズ2世の庶子」説

アーサー・バーンズ(Arthur Barnes)の『仮面の男』(The Man of the Mask, 1908年)によれば、チャールズ2世の庶子ジェームス・ド・ラ・クローシュ(James de la Cloche)とのことです。この人物はフランスとの連絡役を務めていましたが、イギリスとの関係の露呈を恐れたルイ14世によって監禁されたということです。

④「ルイ14世の双子の兄弟」説

マルセル・パニョル(Marcel Pagnol)の『鉄仮面の秘密』Le Secret du masque de fer, 1965年)は、アーサー・バーンズ説とは異なり、実はジェームズ・ド・ラ・クローシュはルイ14世の双子の兄弟で、この男を鉄仮面の正体としています。

⑤「イギリス貴族(ジャコバイト)」説

ルイ14世の義妹オルレアン公爵夫人エリザベート・シャルロットは、ウィリアム3世暗殺未遂(フェンウィック)事件(1696年)に関わったイギリス貴族(ジャコバイト)だと主張しました。

(2)「鉄仮面」をモチーフにした映画『仮面の男』

アメリカ映画『仮面の男』(1998年、主演レオナルド・ディカプリオ)はデュマの小説を原作にしています。

映画「仮面の男」予告編



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