生きた化石と言われる植物。メタセコイア・古代ハス・イチョウ

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メタセコイア秋

よく「時代遅れの人」を指して「生きた化石」と皮肉を込めて言うことがありますね。私もそうならないように気を付けたいと思います。

ところで真面目な意味で、はるか太古の昔から命を繋いできた「生きた化石」は、植物にも動物にもいくつか存在します。

今回は生きた化石の植物について考えてみたいと思います。

1.「生きた化石」とは

「生きた化石」(living fossil)とは、「太古の地質時代に生きていた祖先種の形状を色濃く残している生物」のことです。地層の中から発見される化石と同じ姿で現代まで生息していることから、このように呼ばれています。

「living fossil」という言葉は、チャールズ・ダーウィンが「種の起源」の中で、カモノハシ・ハイギョに言及した際に初めて使用されました。

2.メタセコイア

メタセコイアの葉

「メタセコイア」は、並木道、公園や学校の校庭などによく植えられていますので、ご存じの方も多いと思います。皇居にも献上されたメタセコイアが植えられています。

しかし、このメタセコイアが日の目を見たのは70年ほど前と比較的新しいのです。

メタセコイアは高さが30m~35mにも達するスギ科の落葉高木で、「アケボノスギ」とも呼ばれています。

日本の化石学者の三木茂氏が1941年に、日本産の化石を規準標本として、スギ科の新属として「メタセコイア属」を創設しました。当時は絶滅したと考えられていましたが、1943年に中国で現生種が発見され、「生きている化石」として注目を集めました。1949年には日本にも伝えられ、挿し木繁殖で全国各地に広まったのです。

秋には落葉松(カラマツ)のような美しい金色の黄葉が見られます。

3.古代ハス

古代ハス

「古代ハス」というのは、日本の植物学者でハスの研究者である大賀一郎氏が、戦前に中国大連市近郊で、1000年以上前のハスの実を発掘して、その開花に成功した時に「古代蓮」と呼んだのが最初です。

そして、大賀一郎氏は戦時中から戦後にかけて日本で「大賀ハス」と「行田古代ハス」と呼ばれる古代ハスの発掘と開花に成功しています。

「大賀ハス」は、戦時中の燃料不足に対応するため、東大検見川厚生農場(千葉市)の一部を借りて、燃料になる「草炭」を採掘したことが発端で見つかりました。採掘は戦後も継続して行われ、丸木舟や櫂のほかに「ハスの花托」が見つかり、「落合遺跡」と命名されました。

ハスの花托が発見されたので、1952年3月から大賀一郎氏やボランティアがハスの発掘調査を進めました。その結果、地下6mの泥炭層から3粒のハスの実が発掘されました。そのうちの1粒が翌年の1952年に大きな花を咲かせたのです。

この大賀ハスは約2000年前の弥生時代のものと推定されています。

もう一つの「行田古代ハス」は、偶然が幸いして古代のハスが目覚めたものです。

埼玉県行田市では、1971年に焼却場施設を新設するために、造成工事を始めました。その際、穴を掘った場所に水が溜まって池のようになってしまったのです。その結果、地中深く眠っていたハスの実が静かに目覚めたのです。

出土した縄文土器などから、この行田古代ハスは約2500年~3000年前の縄文時代のものと推定されています。

「古代遺跡」は「古代のロマンに思いを馳せる」という醍醐味はありますが、「古代ハスの開花」は、それ以上に「生命力の神秘・凄さ」を目の当たりにするようで驚嘆に値します。「はるか昔に冷凍保存されていた種が、2000年以上の時を経て不死鳥の如く蘇り、見事に開花した」とでも表現したらよいのでしょうか?

4.イチョウ

大イチョウ

「イチョウ」は大阪の御堂筋をはじめ各地の街路樹・並木道で親しまれている木ですが、「中生代」から「新生代」にかけて世界的に繁栄した「世界古来の樹木」で、分類上は「特殊な針葉樹」です。

約6500万年前、隕石の衝突による急激な寒冷化をきっかけとして恐竜など多くの生物種の絶滅が起きましたが、その後の数度にわたる氷河期を経て、イチョウの近縁種は全て絶滅し、イチョウは中国・上海の西の山岳地帯だけに奇跡的に生き残ったのです。

そういうわけで、イチョウは「生きている化石」として、「レッドリスト」の「絶滅危惧IB類」に指定されています。

日本には鎌倉時代前後に伝来し、鎌倉幕府の寺社政策によって全国に八幡宮が造営されると同時に境内に植えられました。17世紀末にドイツ人が長崎からギンナンを持ち帰り、それが18世紀には欧州各地へ、更に北米へと移植されたのです。

後に、オセアニアや南米でも植えられ、約6500万年振りに全世界で再び繁栄することになりました。燃えにくく、大気汚染にも強いなどの理由で、日本では現在57万本も植えられているそうです。

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