スウェーデン出身の精神科医アンデシュ・ハンセン氏の著書「スマホ脳」(新潮選書)によると、現代人(と言っても、若い人だと思います)は1日に2600回以上スマホに触り、平均して10分に一度はスマホを手に取っているそうです。
ちょっと計算が合わないような気もしますが・・・
1.スマホ認知症の増加
最近20代~40代で「スマホの使い過ぎ」による「スマホ認知症」が増えていると聞いたことがあります。スマホを使いすぎると「頭の中が情報過多でゴミ屋敷状態になり、脳の働きが低下して物忘れがひどくなったりする」そうです。
2.スマホ認知症の対処法
(1)デジタルデトックス
その対処法として、「スマホの使用を1日1時間以内に抑えること」と「デジタルデトックス」(スマホ断食)が推奨されていました。知らないことやわからないことがあると、何でもすぐにスマホで調べる習慣を捨てて、まず自分の頭で考える習慣を取り戻すことが大切だということです。
デジタルデトックスの効果としては、次のようなことが挙げられています。
◆ 肩こり、首のコリなどの解消
◆ 脳が冴えて仕事に集中できるようになる
◆ 時間の使い方がうまくなった
◆ 脳疲労がとれる
◆ 睡眠の質が高まる
◆ 身体の疲労が回復しやすくなる
◆ 生活にメリハリが出来る
(2)頭を休める時間を持つこと
何もせずにぼーっとする時間を持つことも大切だとのことです。
NHKの人気テレビ番組の「チコちゃんに叱られる!」の中で、チコちゃんが「ボーっと生きてんじゃねーよ!」という決めゼリフで喝を入れる場面がありますが、たまには「ほっと一息つく」とか、過労だと感じた時は「1日中ぼーっとしている」ことも必要です。
ゴム紐でも引っ張り続けていると伸び切るか、プツンと切れてしまいます。落語の桂枝雀の笑いの要諦「緊張の緩和」も似たようなことです。
前に「教養を娯楽にする」という記事を書きましたが、その中で3カ月ぐらい本やテレビを見なかったあとに頭が急によくなったような感覚を持った経験を述べました。
石原慎太郎氏が息子たちへの教育で、「一日、テレビも見せない。新聞や本も読ませない日を作った」という話を聞いたことがあります。テレビや新聞や本にどっぷりつかっていると、それ無しではやって行けないように感じてしまいがちですが、決してそうではないということを息子たちに教えたかったのでしょう。また「自分の頭で考える日を作らせる」という目的があったのではないかと私は想像します。
ダイエットのための無理な「断食」は問題もあるようですが、指導者のもとで正しい「断食修行」をした場合は、頭脳が明晰になるという話を聞いたこともあります。断食で体内の老廃物などの有害物質が除去されるからのようです。
3.アナログ思考とデジタル思考
(1)アナログ思考も大切
IT化が進んで「完璧主義」の人が増えています。「完璧主義」の人ほどストレスに弱くなりがちです。現代社会はストレス社会でストレスがなくなることはないので、心の「いい加減さ」「適当さ」を持つことも必要です。
自分自身を追い詰めすぎず、心や考え方にゆとりを持つことが大切です。そんな時に役立つのが「アナログ思考」です。「デジタル思考」のような厳密な正確さや完璧さはなくても、「当たらずといえども遠からず」のいい加減さが良いのです。
「デジタル思考」は、結論を急ぐあまり目前の問題ばかりに目が行ってしまい、大きな流れをつかめないといった欠点があります。
(2)「デジタル思考」と「アナログ思考」の具体例
横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長の山本晴義医学博士は次のような例を挙げています。
結論が出なくてもよい
【デジタル思考】
会議などでは、よりよい答えを出さなければならない。
【アナログ思考】
話し合うことで、改善点やよいアイデアが出てくる。結論が出なくても、話し合うことそのものが大切なこともある。
「失敗」or「成功」で考えない
【デジタル思考】
失敗やミスは「悪」で、ペナルティーが課せられるべきであり、誇れるものは何もない。
【アナログ思考】
失敗のなかにも、次に役に立つことがある。学ぶべき材料として分析する。
一人ひとり違っていい
【デジタル思考】
会社など、集団のなかで違うことを考えたり、組織の方針と反発するような人とは、行動を共にできない。
【アナログ思考】
人の数だけ考え方あるのは当然。考え方が異なって衝突したときは、話し合っていけばよい。