前に「植物の生態についての誤った常識や知られざる生態」の記事をかきましたが、身近な動物やよく知られている動物でも、その生態についての誤った常識があったり、意外と知られていない驚きの生態も多いものです。
1.タツノオトシゴ(竜の落とし子/海馬)はオスが出産するって本当か?
「タツノオトシゴはオスが出産する」という話をお聞きになったことがあるでしょうか?非常に奇想天外な話なので、一度聞いたら忘れられない話です。
しかし、この話は本当なのでしょうか?
答えは「半分は本当だが、半分は間違い」です。
タツノオトシゴのメスは、オスの「育児嚢(いくじのう)」と呼ばれる子宮のような腹部の袋に自分の卵を産みつけ、オスはそこに自分の精子を振りかけます。
そして、産卵後2~6週間で陣痛が始まりその育児嚢から何匹もの稚魚が飛び出してくるため、「オスが出産する」と言われるのです。
普通の魚の場合は、メスが水底の岩や海藻など適当な場所を選んで産卵し、オスがその卵の上に精子を振りかけます。そして卵が受精して幼魚が生まれるのです。
しかし、タツノオトシゴの場合は、メスの産卵場所がオスの育児嚢で、安全に孵化するまでオスが守っているということです。「育児パパ」の更に上を行っていますね。
タツノオトシゴがこのような行動を取る背景には、メスが産む卵の数が他の魚類に比べて圧倒的に少ないことがあります。タツノオトシゴのメスは100個~200個しか卵を産みません。
イワシは数万個、マグロは数百万個、マンボウは3億個も卵を産むそうです。しかし卵を産みっぱなしにするため、卵から幼魚になる前に9割以上が食べられたりして死んでしまいます。
タツノオトシゴは産卵数が少ない代わり、卵が孵化するまでオスが育児嚢で守って生存率を高めているわけです。
2.ナマケモノは本当に「怠け者」なのか?
ナマケモノといえば、一日中木の枝にぶら下がって何もせず、動作も驚くほどゆっくりなため名前の通り「怠け者」という印象がありますね。
しかしナマケモノは本当に「怠け者」なのでしょうか?
一見無気力に見えるナマケモノですが、実はとても賢い「省エネ動物」なのです。木の上で毎日昼寝(約10~15時間)をすることで、敵の捕食動物から身を守っています。ナマケモノは週に一度緑豊かな隠れ家を離れるだけで、この習性は非常に安全な行動パターンです。
また、湿気の多いジャングルでは、藻がナマケモノの毛皮で成長することがあります。この藻は緑色であるため、ナマケモノが木に捕まって休んでいる間、周りの木々と一体化しているように見え、カモフラージュとして機能します。
そして草食であるナマケモノは、自分の体に生えた藻を食べたりもするそうです。「省エネ」ですね。驚くほど遅い動作も、生存のために多くの食べ物を必要としない結果につながっています。
ただし意外なことに水中での動きは非常に速く、素晴らしいスイマーです。
またナマケモノはヘビ・ジャガー・ワシなどの敵から身を守るため、交尾期以外はひっそりと単独で行動する孤独を愛する動物です。
3.ゾウは立ったまま3時間の睡眠で活動できるというのは本当か?
「ゾウは立ったままで、3時間の睡眠をとるだけで活動できる」という話をお聞きになったことがあるでしょうか?
人間だけでなく、哺乳類や鳥類からより下等な動物まで「睡眠行動」を取ることがわかっています。
ただし、「睡眠時間」については千差万別です。
ライオンやトラの睡眠時間は平均15時間、キリンは4.6時間、野生のアフリカゾウは3.3時間と言われています。
この差をもたらす最大の原因は、「食性」です。睡眠時間は肉食動物⇒雑食動物⇒草食動物の順に短くなります。
肉類は栄養価(エネルギー量)が高いので、常にエサを探し回る必要がありません。特にライオンやトラなどの大型肉食獣は、生態系の頂点に君臨して周囲に敵がいないため、野生でも仰向けで脚を広げ、のびのびと昼寝する姿が見られます。
一方、大型草食動物のキリンやゾウは睡眠時間が短く、ほとんど立って寝ています。植物は栄養価が低く、大量のエサを常に探し回らなければならず、エサの草を咀嚼するのに時間がかかる上、周囲に敵が多いため、睡眠時間や睡眠スタイルがこのようになったわけです。