最近は大雪に関するニュースが多いですが、皆さんは「日本は世界の豪雪都市ランキング上位を独占し積雪世界記録も持つ」ことをご存知でしょうか?
雪が多い国と言えば、北欧やカナダ・アメリカなどを思い浮かべる方が多いと思いますが、実はそうではないのです。
また、「地球温暖化」と言われているのに、最近日本でたびたび「大雪」「ドカ雪」がニュースになるのも不思議ですね。
今回はこのミステリーについて、わかりやすくご紹介したいと思います。
なお雪に関しては「ドカ雪の原因[JPCZ(日本海寒帯気団収束帯 )]をわかりやすく紹介!」「雪という漢字の成り立ちと語源・由来、雪だるま、雪の種類と名前の面白い話。」という記事も書いていますので、ぜひご覧ください。
1.世界の豪雪都市ランキング上位
1位 日本 青森市 792cm
2位 日本 旭川市 743cm
3位 日本 札幌市 597cm
4位 日本 山形市 426cm
5位 日本 富山市 383cm
6位 日本 秋田市 377cm
7位 カナダ サグネ 336cm
8位 カナダ セント・ジョンズ 335cm
9位 アメリカ合衆国 シラキュース 325cm
10位 カナダ ケベック・シティー 303cm
アメリカ・カナダも、やはり積雪量が多いイメージ通り上位にランクインしていますが何と日本が1位~6位を独占しています。
青森市八甲田山の積雪量は792cmで、世界一です。
青森市の人口は約30万人ですが、市街地において平均200cmも積雪があるのは、広い世界を見ても青森市くらいのようです。
青森市は、陸奥湾、八甲田山、東岳、津軽半島と、山と海に囲まれている特殊な地形であるため、積雪量の多い都市となっています。
青森市に住んでいる方は、この積雪量の多さで「雪掻き」が大変とも思います。
しかし「雪解け」があり、八甲田山の地中で雪が濾過され、陸奥湾へと流れていきます。その陸奥湾の海水は多くのミネラルを含み、そこに住む魚介類は身もふっくら、甘みのある素晴らしい美味しさに繋がっています。
積雪量の多いことで美味しいものが食べられているという環境となっています。
2.「積雪世界記録」と「年間最多積雪記録」
「積雪世界記録」は、伊吹山(標高1,377m)の1,182cmです。
伊吹山は冬に日本海側からの季節風の通り道となり、亜寒帯湿潤気候で雪も非常に多く、1927年2月14日に、「世界最深積雪記録」となる積雪量11.82mを記録しました。
なお、「年間最多積雪記録」は、アメリカ合衆国・ワシントン州にあるレーニア山国立公園(標高4,392mのレーニア山全体を含む)の31.5m(1971年2月19日~1972年2月18日)です。これは10階建てのビルの高さに相当します。
3.日本海側と太平洋側で雪の降るメカニズムが違う
日本は国土の大部分は中緯度の温帯気候であるにもかかわらず、世界でも有数の「豪雪国」として知られます。
特に雪が多い地域は「豪雪地帯」としても知られ、その多くが日本海側に集中しています。
同じ日本の中でも日本海側と太平洋側で雪が降るメカニズムが違います。それぞれの特徴について考えてみましょう。
(1)日本海側 冬の北西季節風が大量の雪雲を作る
実は、日本の積雪量の多い地域は日本海側に集中しています。その理由は、冬特有の北西季節風にあるのです。
大陸からとても冷たい北西季節風が吹いてくると、その風より温度の高い日本海から多くの水分が水蒸気となって風に乗ってきます。
そして、日本列島の中央で連なっている、高い山々にぶつかり上昇し、大量の雪雲となるのです。この雪雲が、日本海側の山間部や平野部で雪となり積もるのです。
季節風の風速や、風向によっては、太平洋側まで影響を与え、一部地域に降雪をもたらすことがあります。
(2)太平洋側 南岸低気圧が、降雪を発生させている
西高東低という、いわゆる冬型の気圧配置が崩れる時期になると、日本付近を西から東へ通過する低気圧が増えます。
その中でも、本州を進む低気圧(南岸低気圧)は、太平洋側に大雪や大雨を降らせる原因となります。
4.日本が「世界の豪雪都市ランキング上位を独占」し、「積雪世界記録も持つ」理由
日本がこのような「豪雪国」である理由としては、次の三つのポイントが挙げられます。
(1)季節風
大雪が降る理由の一つに、季節風があります。
空気は気圧の高いところから低いところへ流れる性質があります。
冬になると西高東低の気圧配置になるので、ロシアや中国などの寒い地域から冷たい空気が流れてきます。すると日本はこの冷たい空気によって寒くなります。
また、この季節風が「JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)」という収束帯を作り出し、大雪をもたらす原因の一つになっていることもわかっています。
朝鮮半島の北部にある長白山脈によって季節風が2つに分かれ、日本海の上空で合流して雲が発達していきます。
(2)対馬海流の海水気温
日本海側で雪が多い理由の二つ目に対馬海流の海水気温が挙げられます。
海の流れに注目すると、対馬海流と呼ばれるとても暖かい海流が北に向かって流れていることが分かります。
こうした海流は冬の気温に比べると暖かいため、たくさんの水蒸気が発生し、雲となって空に登っていきます。この雲を、先ほど説明した季節風が日本列島へ運ぶのです。
(3)日本の独特な脊梁山脈の地形
理由の三つ目として、日本の独特な脊梁山脈の地形があります。
そもそも雪の降る仕組みとしては水蒸気が上昇気流によって上空に上がり、上空で温度が下がって水滴になり「雲粒」という雲の要素になります。
先ほど説明した温かい対馬海流から、たくさんの水蒸気が発生して雲となり、季節風で日本列島まで運ばれるのですが、この運ばれた雲が日本の脊梁山脈にぶつかってさらに上昇し、大量の雪雲に変化します。
この雪雲が日本海側の山間部や平野部で雪となって降り積もるのです。
5.日本の「豪雪地帯」
まずどのエリアが降雪が多いのかを知るためには、国土交通省が認定している「豪雪地域」をみると分かりやすいです。「豪雪地帯」とは積雪量が多いために経済や生活においてサポートが必要な地域のことをいいます。その豪雪地帯のエリアを見てみると、ほとんどが日本海側に位置しています。
なぜ日本海側に豪雪地帯が集中するのでしょうか?
さきほど、運ばれた雲が日本の脊梁山脈にぶつかってさらに上昇して大量の雪雲に変化することを説明しましたが、この長く延びる脊梁山脈により本州は日本海側と太平洋側に分けられてもいるため、日本海側と太平洋側で天気は大きく異なります。
山脈に注目してみると日本海側と太平洋側の間には、奥羽山脈、越後山脈、飛騨山脈、中国山地と、山脈が連なっていることが分かります。
6.「地球温暖化」なのに日本で「大雪・ドカ雪」が多くなっている理由と問題点
(1)ラニーニャ現象
NHKニュースウォッチ9の天気予報でおなじみの気象予報士・斉田さんは、2021年の年末年始の大雪を「ラニーニャ現象」が原因だと説明しています。
「ラニーニャ現象」とは、南米のペルー沖、赤道付近の海面水温が低くなる現象です。
発生すると東からの風が通常よりも強まり、温かい海水が太平洋西部にたまりやすくなります。そこで積乱雲が次々に発生し、ユーラシア大陸上空の偏西風の通り道が北に上がり、その反動で日本付近では南下。シベリアなど大陸からの寒気が日本上空に西回りで入ってくることになり、西の方ほど平年より寒くて、雪が多くなる可能性があるのです。
(2)ドカ雪
近年は地球温暖化の影響で、一晩で1メートルぐらい積もるような「ドカ雪」が増えてきていると言われています。
積雪地域の複数の観測点でのひと冬での降雪量を足したグラフでは、ひと冬で降る雪の量は、昭和に比べて平成は少なくなっていることがわかります。
一方、1日の降雪量の平均値をあらわした折れ線グラフを見ると、一気に降る雪が頻繁に来て、1日あたりの降雪量は大きくなっているのです。
(3)立ち往生
近年、頻発する雪の災害といえば 「立ち往生」です。2021年1月、北陸自動車道では1500台以上の車が立ち往生する事態となりました。中には三日三晩、車の中で耐えた人もいました。
2018年には、首都高速道路でも山手トンネルなどで大規模な立ち往生が発生。総延長の7割以上にあたる230キロにわたって通行止めとなり、完全復旧には97時間を要しました。
近年どこで大雪による立ち往生が起こっているのでしょうか?
新潟大学 災害・復興科学研究所教授の河島克久さんがまとめた分布図によると、関東地方だけでなく四国や九州といった温暖な地域でも発生しています。
最近EV(電気自動車)化が急速に進んでいますが、このような立ち往生が発生した場合、電気自動車が多くなると簡単に動かせず、立ち往生がさらに長期化するリスクが増大するのではないかと思います。
これについては、「電気自動車のメリットとデメリット。純ガソリン車の新車販売禁止政策は性急で愚策!大規模停電の恐れもある!」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。