バブル時代は全員が躁の時代だったが、渦中にいると先行きが冷静に読めない

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バブル時代

1.日本のバブル時代

日本で「バブル時代」と言えば1986年(昭和61年)12月から1991年(平成3年)2月までの「バブル景気」の時期を指します。

1985年9月の「プラザ合意」により、「円高」が進行しました。円高不況対策として日銀は公定歩合を引き下げるなどの大幅な金融緩和を実施したため「過剰流動性」が生まれ、「バブル景気」は始まります。絶頂期は1989年12月29日に日経平均株価が38,915円という「史上最高値」を付けた時でしょう。

バブルが弾けたのは1991年です。大蔵省が1990年3月に「土地融資の総量規制」という金融引き締め策を発動し、日銀の三重野総裁が、1990年8月に公定歩合を6%に大幅に引き上げたことで、景気に急ブレーキをかけたのが原因です。1991年には「地価税法」が施行され、バブル崩壊(クラッシュ)を決定的にし、「失われた20年」をもたらしました。もう少し「ソフトランディング」させる政策判断をすべきだったと私は思います。

高速で走っている車に急ブレーキを掛ければ「大惨事」となることは明らかです。そのような政策判断の誤りについては、私がとやかく言える立場でないことは重々分かっていますが、返す返すも残念なことです。

2.世界三大バブル

「世界三大バブル」と呼ばれるものがあります。世界最古の「バブル」は、1630年代にオランダで起きた「チューリップバブル」(チューリップの球根が異常に高騰)です。次は、1720年にイギリスで起きた「南海泡沫事件」(投機ブームによる南海株式会社などの株価の急騰と暴落、およびそれに続く混乱)です。最後は同じく1720年ころにフランスで起きた「ミシシッピバブル」(ルイ14世時代から続くフランスの放漫財政を再建しようとしたスコットランドの実業家ジョン・ローが設立を提案したミシシッピ株式会社の株価急騰と暴落、破綻)です。

3.バブル時代は「とてつもなく景気がよい」時代

私は、日本の「バブル時代」の頃、中堅サラリーマンでしたが、「営業マン」でなかったため、あまり「バブルの恩恵」を受けた覚えがありません。

バブルの絶頂期の頃は、「地上げ」「財テクブーム」「消費の過熱」「就職売り手市場(バブル入社組)」「(ジュリアナ東京などの)ディスコブーム」「クリスマスイブに高級ホテルで食事・宿泊」「豪華列車」「高級車ブーム」「地価の高騰」「株価の高騰」「ゴルフ会員権の高騰」「絵画の高騰」「含み資産」「郵便貯金が10年半年複利で年10%超」など「景気の良い話」が山ほどありました。

1987年には、ゴッホの「ひまわり」の絵を、安田火災海上が53憶円で落札しました。

1989年には、アメリカのロックフェラーセンタービルを、三菱地所が2,200憶円で買収しました。

1990年には、ゴッホとルノアールの2作品を、大昭和製紙名誉会長の斎藤了英氏が244億円で落札しました。同氏は、「私が死んだら、絵を棺桶に入れて燃やしてくれ」と語ったため、顰蹙(ひんしゅく)を買いました。なお、この2つの絵画は同氏の死後、燃やされることなく(相続税支払いのためでしょうか)サザビーズに売却されています。

4.バブル芸人

最近はあまり見なくなりましたが、数年前大ブレイクした「バブル芸人」の平野ノラ(バブリー美奈子)さんの芸は、バブル時代を「夢よもう一度」と懐かしむ中高年だけでなく、バブル時代を知らない若い世代にも憧れに似た気持ちや興味を持たれたようです。

5.バブル入社組

「就職売り手市場」の結果生まれた「バブル入社組」に関しては、池井戸潤さんの「オレたちバブル入行組」(半沢直樹シリーズの第一作)という銀行員を主人公にした小説が大ヒットしましたね。

6.バブル時代は「投機の時代」「全員が躁の時代」で先行きが冷静に読めない

バブル時代は、「土地ころがし」や「株価の値上がり」、「ゴルフ会員権の値上がり」などで大儲けした人も沢山いたでしょうが、バブル崩壊の最後まで「現金」に換金せず、「土地・株式・ゴルフ会員権」などで持っていた人は、トランプの「ババつかみ(ババ抜き)」でジョーカーをつかんだようなものです。絶頂期までに現金に換金して損失を免れた人はどれくらいいたのでしょうか?

私の会社の上司は、「今はspeculation(投機)の時代だ」と、喝破していましたが、土地の値上がりがまだ続くと最後まで「土地神話」を信じていました。

バブル時代の渦中にいると、「台風の目」の中にいるようなもので、この景気がいつまで続くのか、もう終わりなのかの判断がなかなかつかないものです。「まだはもうなり。もうはまだなり」という相場の格言が身に沁みます。これは、相場は自分の予測した通りや思った通りには、なかなか行かないものという教えです。

7.ゴルフ会員権暴落の損失を免れた先輩の話

私が会社の先輩から聞いた「ゴルフ会員権」にまつわる面白い話をご紹介します。その先輩は「営業マン」だったのですが、バブル全盛期のころ、50歳になったので「そろそろゴルフ会員権でも買おうか」と思い立ち、知り合いのゴルフ会員権業者に相談したそうです。すると、その会員権業者は、「自分は知り合いでない人にはゴルフ会員権を売るが、知り合いには売らない」と言い放ち、会員権を販売するのを断ったそうです。

先輩が理由を聞いてみると、「まず、会員権を持つと、ビジターを連れて行ってプレーすることになるが、メンバーフィーに比べてビジターフィーは高いので、どうしても昼食代を奢ることになったりして、かえって高くつく。それに、今は異常に高くなっており、やがて下落する。だから知り合いには買わないように忠告している」とのことでした。

それで、先輩もなるほどと納得し、会員権を買わなかったそうです。先輩の同僚の中には、借金までして高値の時にゴルフ会員権を買って、今や大暴落して大損している人も多いとのことで、その誠実な会員権業者の忠告に従って買わなくてよかったとしみじみと話していました。

今や、ゴルフ会員権ばかりでなく、「接待ゴルフの減少」や、「若者のゴルフ離れ」で、プロゴルフも含めた「ゴルフ人気」は落ちています。

日本各地のゴルフ場の多くも経営難で、アメリカのゴルフ場運営会社のPGMやアコーディア・ゴルフなどの傘下に入って経営再建を目指しています。今や平日なら「昼食代込みで1万円」でプレーすることも可能で、予約も昔のように「メンバーの紹介」がなくても出来るようになったので、「ゴルフ会員権」を持つ価値は、大幅に減っています。

今後、日本でまたバブルが起きるかどうかはわかりませんが、もし起きた時は、個人においても政府・日銀においても、前のバブル時代の教訓を胸に刻んで対処すべきでしょう。