Rー指定、ナイツ、神田松之丞、さだまさし、谷村新司、上岡龍太郎は、芸風に落語の影響

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R-指定

<2023/6/2追記>芸人についての名言を残した上岡龍太郎さんが逝去

切れ味鋭い毒舌(正鵠を射たスカッとする爽やかな毒舌)で私も好きだった上岡龍太郎さんが81歳で亡くなられました。ご冥福をお祈りいたします。有り難うございました。

1980年~1982年のごく短い期間でしたが、全国的に「漫才ブーム」というのがありました。これは「花王名人劇場」や「THE MANZAI」などのテレビ番組が起爆剤となったようです。

その後、全国的にブームは下火になりましたが、大阪ではまだ「漫才」の人気があります。

しかし「落語」は、「漫才ブーム」のような爆発的人気は起きませんでしたが、静かで地味ながら根強い人気があります。日本テレビ系列の「笑点」は1966年放送開始で「日本や世界で最も長く放映されるテレビ演芸バラエティー番組」として「ギネス世界記録」を保持しています。この中の落語家たちによる「大喜利コーナー」は大変人気があります。

1.芸風に落語の影響がある芸能人

(1)Rー指定(1991年~ )

最近何気なくテレビを見ているとラップ調の面白いしゃべくりをしている芸人がいました。「芸人」と思ったのは私の勘違いで、「R-指定」という今大人気のラッパーでした。

彼は番組では「聖徳太子スタイル」という「フリースタイルラップ」を披露していました。これは客席などから出された複数のお題のワードを使い、即興でラップをするというものです。

「陰キャ」(陰気なキャラ、イケてない人)ではありますが、自虐ネタ漫談の「ヒロシ」やギター侍の「波田陽区」とは一味違った「ラップに乗せた面白い語り」となっています。

彼は落語が好きでよく聴くそうで、自身のラップは歌謡曲や落語の影響を受けていると語っています。

(2)ナイツ

お笑いコンビの「ナイツ」の塙宣之(1978年~ )と土屋伸之(1978年~ )の漫才を聞いていると、どこか落語の味がします。それもそのはずで、「ナイツ」は「漫才協会」と「落語芸術協会」の両方に所属している芸人です。そして二人は創価大学落語研究会で出会っています。

(3)神田松之丞(1983年~ )

神田松之丞は、「今最もチケットが取れない講談師」ということで大人気となっている人です。彼の講談が若い人にも受けるのは、旧来の講談にはない落語のスパイスが入っているからではないかと私は思います。

彼は大学時代に落語をよく聴いたそうですが、落語家は既にたくさんいる上、新作落語や英語落語、手話落語などもあって、自分が開拓する余地が少ないと判断し、競争相手が少なく未開拓の分野のある「絶滅危惧職」の「講談師」になったそうです。

なお、神田松之丞は2020年2月11日付けで、講談の大名跡である「神田伯山」を六代目として襲名しました。

(4)さだまさし(1952年~ )

さだまさしは、「グレープ」としてデビューして「精霊流し」などを歌っていた当時は、バイオリンを弾きながら唄うひ弱で暗い歌手というイメージでしたが、「関白宣言」あたりから解き放たれたように弾け、コンサートも彼の明るいしゃべりが大きな魅力となりました。

彼は「グレープ」の解散コンサートで解散理由を、「精霊流し、無縁坂、縁切寺と来たらあとは墓場しかない」と述べています。

彼は高校・大学と落語研究会に所属し、「人生は明るく、歌は暗く」をモットーとしているそうです。

コンサートでは、「トーク」や「噺」と呼ばれる「曲と曲の間のしゃべり」がありますが、彼の場合は「3時間のうちの1時間がしゃべり」だそうです。その内容はほとんど落語か漫談のようです。本人曰く「ある落語家が弟子に『さだまさしのコンサートに勉強しに行って来い』と言った」そうです。

(5)谷村新司(1948年~2023年)

前に記事に書きました谷村新司も、さだまさしと同様、コンサートでのしゃべりが面白いことに定評があります。テレビ番組などに出演しているのを見ても、思わずクスッと笑わせる話術が巧みで「ストーリーテラー」の面目躍如といった感じです。

(6)上岡龍太郎(1942年~2023年)

もう引退しましたが、上岡龍太郎も落語好きだったようです。彼は少年時代、フーテンの寅さんのような香具師(やし)や芝居、歌舞伎や映画に熱中していたそうです。

彼は自分の芸を次のように語っています。

僕は知的だといわれますが、適当なことばっかり言ってるんです。もっと知識のある人が僕を見て、「愛い(うい)やつじゃ」と嗤ってくれればいいんです

僕はしょうもないことはよく覚えてて、大事なところの知識がない。これを僕は「知識のドーナツ化現象」と名付けてます。

彼の立て板に水を流したような流暢で小気味よい語り口や、切れ味鋭い毒舌を吐きつつ最後は芸人らしくオチを付けるしゃべくりのスタイルは、香具師の口上と講談と落語を綯(な)い混ぜにしたように思えます。番組の自己紹介で「芸は一流、人気は二流、ギャラは三流。恵まれない天才、私が上岡龍太郎です」と述べていましたが、彼の特徴をよく表しています。

実際彼は講談師「旭堂南蛇(きょくどうなんじゃ)」として高座に立ったこともあり、立川談志の落語立川流の門下(高座名:立川右太衛門)でもあります。

立川談志は彼のことを「芸人に憧れ、憬れ続け、尚も芸人になろうとしたが結局、芸人に成り切れなかった芸人」と評しています。

2.その他の落語好きな芸能人

他にも落語好きな芸能人はたくさんいます。

志村けんは桂枝雀や古今亭志ん生のファンだそうです。

ビートたけしも古今亭志ん生のファンだそうです。2019年の「いだてん~東京オリムピック噺~」で「ナレーション」と「古今亭志ん生役」で出演しましたが、どちらも滑舌が悪すぎてがっかりでした。「名人古今亭志ん生とはこの程度だったのか?」と誤解されるのではないかと心配になるほどでした。

これは脚本家の宮藤官九郎が落語好きで、このドラマに古今亭志ん生を入れるのにこだわり過ぎて、無理やり入れたことも災いしたようです。