前に「大阪メトロの外国語版サイトで駅名や路線名等の英語表記に誤訳」がたくさん見つかった話を記事に書きましたが、2020東京五輪の会場である「新国立競技場」の英語表記にもネイティブから見て「奇妙な表現」や「理解できない表現」がいくつか見られるようです。
1.「新国立競技場」の不適当な英語表記
これは2019年12月15日に新国立競技場が報道陣に公開された時に、外国人特派員や記者などのジャーナリストから指摘が出たものです。
(1)HELLO, OUR STADIUM.国立競技場
これは、国立競技場に入る時に最初に目に飛び込んでくる「案内ディスプレイ」です。
「ようこそ、新国立競技場へ」と言いたいのであれば、「Welcome to our new national stadium.」でよさそうなものです。少し長ったらしいですが・・・
ただし、この「HELLO, OUR STADIUM.」というのは、「新国立競技場のオープニングイベントの名称」だそうです。「競技場に来てくれた人に対する歓迎の挨拶」の意味ではなく、「観客目線で、スタジアムに対して挨拶してもらう」ことが狙いなのだそうです。
しかし、この表現はネイティブには「不自然な英語表現」と映ったようです。「こんにちは!我々のスタジアム」という感じなら、「Hello new stadium!」や「Say Hello to Our New Stadium.」の方がまだ自然な表現だそうです。
(2)情報の庭”joho no Niwa”
これは、日本語がわからない人にとっては、何の意味も持たない「ローマ字表記」です。しかも、日本語がわかっている人でも「情報の庭」とは一体何なのか理解できません。もっとも、「KARAOKE」「SUSHI」「SUKIYAKI」「NINJYA」「SAKE」「BONSAI」のように日本語がそのまま外国人に通じるようになった言葉は別ですが・・・
スタジアムの計画資料によれば、この場所は、「イベントスペース」だそうです。奇を衒った斬新なネーミングをしたつもりなのでしょうが、日本人にも外国人にも不親切だと思います。
ネイティブで日本語にも堪能な人によれば、日本語は「イベントスペース 情報の庭」とし、英語は「Event space”joho no Niwa”」とすればよいとのことです。
ただ、新国立競技場を運営する独立行政法人「日本スポーツ振興センター」は、今のところ英語表記を変更する予定はないそうです。
2.公的機関や公共の場所での英語表記の見直し・チェックの必要性
私企業の英語案内や商店の英語看板であれば、スペルの間違いや不自然な表現、誤訳・珍訳があっても、「笑って許して」と言われれば、「笑って済ませる」ことができるでしょう。しかし公的機関や公共の場所での英語表記については、そういうわけには行かないと思います。
現在は「Google翻訳」や「Microsoft」などの自動翻訳機能ソフトもありますが、その翻訳精度は発展途上ではないかと思います。「日本スポーツ振興センター」のウェブサイトサイトでは、英語の堪能な人が、自動翻訳機能ソフトも使って「英語版」を作成しているのでしょうが、普通の日本人には、「その英語表現が不自然かどうか」はなかなかわかりにくものです。やはり微妙な日本語表現については、その意図するところを汲み取れる「日本語もよく理解しているネイティブ」によるチェックが必要だと思います。
「自動翻訳機能」に頼りすぎて、ネイティブによるチェックをしないと、上記のような「奇妙な表現」や「理解できない表現」が出て来てしまいます。
「新型コロナウイルス肺炎騒動」に伴う中国人や韓国人の観光客の激減という事態もありましたが、2020東京五輪を機にさらに外国人観光客を飛躍的に増やそうという政府の基本方針からすれば、これは重要なことだと思います。関係各位の再考をお願いしたいと思います。
「新型コロナウイルス肺炎感染拡大」の影響で、オリンピックの実施が1年程度延期になったことでもありますので、じっくり時間をかけて見直し、改善してほしいと思います。