「じゃんけん」は日本起源のスマートな勝敗決定方法。原型は「拳遊び」

フォローする



じゃんけん

「じゃんけん」(大阪では「いんじゃん」と言っていました)は私たちにとって子供の頃から慣れ親しんだもので、「何を今さら」と思われるかもしれませんが、この「じゃんけん」は日本発祥(ただし諸説あり)というのをご存知でしょうか?

そこで今回は「じゃんけん」にまつわる面白い話をご紹介したいと思います。

1.「じゃんけん」とは

じゃんけん相関図

(1)「じゃんけん」とは

「じゃんけん」(石拳、両拳、雀拳)は、「3種類の指の出し方(グー・チョキ・パー)で三すくみの関係を構成し、その出した種類によって勝敗を決める遊戯」です。

中国では、「猜拳」、英語圏では「Rock-paper-scissors」あるいは「Scissors Paper Stone」と呼ばれているそうです。

短時間で決着がつく上、「コイントス」や「くじ」などと違って、道具を用意する必要がないので、大変スマートな勝敗決定方法です。

「じゃんけん」のような遊戯は、日本だけでなく東アジアから東南アジアにかけての地域に多く見られるそうです。

(2)「じゃんけん」の歴史

「じゃんけん」の起源については、①日本で古くから伝承されている「虫拳」や「数拳」をもとに明治時代に考案されたとする説、②中国あるいは朝鮮半島に起源を持ち、九州から伝来したとする説などがあります。

ウィーン大学で「日本学」を研究する「拳の文化史」(1998年、角川書店)の著者セップ・リンハルト氏は、「現在のじゃんけんは、江戸時代から明治時代にかけての日本で成立した」としています。

江戸時代末期に幼少時代を過ごした浮世絵師の四代目歌川広重(本名:菊池貴一郎)(1849年~1925年)は、1905年(明治38年)に刊行した「絵本江戸風俗往来」の中で往時を懐かしんで「じゃんけん」について記しています。

現在でも西日本に数多く残る「拳遊び(けんあそび)」から、日本に古くからある「三すくみ拳」(虫拳、狐拳、虎拳など)に17世紀末に東アジアから伝来した「数拳」(本拳、球磨拳、箸拳など)の手の形で表現する要素が加わって、考案されたというのが真相のようです。

19世紀に日本で誕生した「じゃんけん」は、20世紀に入ると、日本の海外発展や柔道などの日本武道の世界的普及、日本発のサブカルチャー(漫画、アニメ、コンピュータゲームなど)の隆盛に伴って急速に世界中に広まりました。

2.「じゃんけん」の原型としての「拳遊び」

「拳遊び(けんあそび)」とは、「指や手や腕の動作を用いて勝敗を決する遊戯」「拳という名称のつく遊戯」です。日本には、古来多くの拳遊びがありましたが、現在では「じゃんけん」とお座敷遊びの「虎拳」や「箸拳」以外はほとんど廃(すた)れました。

ただし、「三すくみ拳」はアニメゲームなどで新しい形で用いられているようです。

日本古来の「拳遊び」には、大別して「三すくみ拳」と「数拳」の二つがあります。

(1)三すくみ拳

これは、三者が互いに得意な相手と苦手な相手を持ち、そのため三者とも身動きが取れなくなるような状態、すなわち「三すくみ」になる拳遊びです。

①虫拳(むしけん)

虫拳

ヘビはカエルに勝ち、カエルはナメクジに勝ち、ナメクジはヘビに勝つ。

ヘビはカエルを一飲みにする。ヘビには負けるカエルだがナメクジならやすやすと舌で取って食べる。カエルに負けるナメクジにはヘビ毒は効かず、身体の粘液でヘビを溶かしてしまう。

最後のナメクジがヘビに勝つ科学的根拠はありませんが、古い時代の日本ではそう信じられていたようです。

なお、この「虫拳」はかなり古くから行われていたようで、平安時代の文献にも出てくるそうです。

②狐拳(きつねけん)

狐拳

キツネは猟師に鉄砲で撃たれるのでキツネは猟師に負け、猟師は依頼主の庄屋に頭が上がらないので負け、庄屋はキツネに化かされるのでキツネに負ける。

これは、「庄屋拳(しょうやけん)」とも言います。

③虎拳(とらけん)

虎拳

近松門左衛門の人形浄瑠璃「国姓爺合戦(こくせんやかっせん)」の主人公である「和藤内(わとうない)の虎退治」、もしくは「加藤清正の虎退治」をモチーフにしています。

和藤内(または加藤清正)は虎に勝ち、虎は老婆に勝ち、老婆は息子の和藤内(または加藤清正)に勝つ。

これは屏風仕立てのフリがつくお座敷遊びの代表的なものです。花街では、部屋に屏風を立て、「虎」は「四つん這い」、「老婆」は「杖を突くジェスチャー」、「武将」は「槍で突くこと」で表現するタイプが今は主流です。

これは、囃子歌から「とらとら」とも言います。

④その他の三すくみ拳

・歩兵→騎兵→大砲→歩兵・・・

歩兵の槍衾(やりぶすま)は騎兵の突撃を止め、騎兵の突撃は大砲の陣地を崩し、大砲は歩兵を吹き飛ばす。

・象→人→アリ→象・・・

象は人を踏み潰し、人はアリを踏み潰し、アリは象を刺し殺す。

インドネシア周辺の「じゃんけん」はこの形だそうです。ちなみに象は親指、人は人差し指、アリは小指で表します。

・炎→草→水→炎・・・

炎は草を燃やし、草は水分を吸い取り、水は炎を消す。これはポケットモンスターシリーズ、パズル&ドラゴンズ、モンスターストライクなどに見られる三すくみです。

・剣→斧→槍→剣・・・

剣は斧に強く、斧は槍に強く、槍は剣に強い。ただし、これを逆転させる武器も存在します。ファイアーエムブレムに見られる三すくみです。

・皇帝→市民→奴隷→皇帝・・・

皇帝は市民を支配し、市民は奴隷を酷使することで生活設計を立て、奴隷は捨て身の行動で皇帝に襲い掛かる。

奴隷は市民から強制労働を強いられますが、一方で奴隷には人間としての権利などはありません。したがって、命や生活が惜しいなどとは考えずに、殺されて元々の状態で皇帝に襲い掛かる可能性があるということです。このように皇帝は奴隷に反逆行為を受けて命を狙われることに常に怯えなければならないため、奴隷は皇帝より強いとされるのです。

賭博黙示録カイジに登場するギャンブルの一つであるEカードに見られる三すくみです。

余談ですが奴隷の反逆と言えば、歴史上有名な「スパルタクスの反乱」があります。

スパルタクス(?~B.C.71年)はB.C.73年に仲間の剣闘士とともに、南イタリアのカプアの剣闘士養成所を脱走してヴェスヴィウス山に立て籠もり、討伐隊を撃退しました。近隣の奴隷たちも反乱に加わって、数万~十数万人の群衆に膨れ上がり、B.C.72年には執政官の率いるローマ軍団を数度にわたって撃破し、イタリア半島を席巻しました。しかしB.C.71年になると、クラッススの率いる軍団によってイタリア半島南端部に封じ込められ、クラッススとの決戦に敗れた奴隷反乱軍は全滅し、スパルタクスも戦死しました。

ちなみに、カール・マルクスは、彼を「古代プロレタリアートの真の代表者」と評しています。

(2)数拳

数拳は、「数合わせ」「数当て」「数の大小」などによって勝負を競う遊戯です。

①本拳(ほんけん)

本拳は、2人で遊ぶ「同時当て物型」の拳遊びです。各自指で0から5までの数を作り、同時に前に出す。この時、手と同時に二人の出した指の合計を予想して口で言い、合っていれば勝ちとなる。

これは「長崎拳」「崎陽拳(きようけん)」とも言います。

②球磨拳(くまけん)

球磨拳

球磨拳は、熊本県人吉市周辺で遊ばれている拳遊びの一種です。片手で0から5までの形を作って同時に出し、優劣を競うものです。江戸時代参勤交代の頃から始まったと伝えられています。

数字が一つ多い方が勝ちになります。たとえば1は0に勝ち、2は1に勝ち、3は2に勝ち、4は3に勝ち、5は4に勝ちます。ただし0は5に勝ちます。つまり「六すくみ」なのです。それ以外(差が2以上)の場合は「無勝負(あいこ)」となります。

③箸拳(はしけん)

箸拳

箸拳のカルタ

これは高知県に伝わるお座敷遊びです。

箸拳は、二人が相対して3本ずつの赤箸を前面に突き出し、箸の合計本数(自分のものと相手のもの)を威勢よくリズミカルな調子で当てる拳遊びです。

2.「じゃんけん」と類似のもの

古代中国の思想である「陰陽五行説」(陰陽五行思想)の「五行」のうちの「五行相克(ごぎょうそうこく)」は、「じゃんけん」の考え方に似ています。

「五行相克」とは、「水は火に勝ち、火は金に勝ち、金は木に勝ち、木は土に勝ち、土は水に勝つ」という関係のことです。

具体的に言えば、「水は火を消し、火は金を溶かし、金で出来た刃物は木を切り倒し、木は土を押しのけて生長し、土は水の流れを堰き止める」という関係のことです。



シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする