「重箱読み」と「湯桶読み」とは?例をまじえて分かりやすくご紹介します

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重箱読みと湯桶読み

1.「重箱読み(じゅうばこよみ)」と「湯桶読み(ゆとうよみ)」

(1)「重箱読み」とは

日本語における熟語の変則的な読み方の一つで、語の上の字を「音読み(おんよみ)」し、下の字を「訓読み(くんよみ)」するものです。

「重箱」(下の画像)は「おせち料理」などでお馴染みですが、古い時代の蒔絵の美しい重箱は少なくなって来たのではないかと思います。

蒔絵の重箱蒔絵重箱桔梗の重箱

ちなみに「音読み」とは「中国の発音を元にした読み方」で、「訓読み」とは「日本で作られた独自の読み方」のことで、「聞いただけで意味がわかる読み方」とも言えます。イメージとしては下の具体例を見ていただく方が分かりやすいと思います。

一つの熟語について、日本語では基本的なパターンは「音読み」か「訓読み」のいずれかに統一するものですが、その基本的パターンとは異なる読み方です。

ただし、「重箱読み」や「湯桶読み」のような読み方は決して「間違った読み方」ではなく、平安時代からあります。これまでに発見されている最古の「湯桶読み」は、「万葉集」から読み取れる「手師(てシ)」(文字を巧みに書く人、能筆の意)だと言われています。

現代の日本語においては、「和語」と「漢語」が結合した「混種語」も日常語として深く浸透しており、慣用になっているものも少なくありません。

(2)「湯桶読み」とは

「重箱読み」とは反対に、漢字二字の熟語の上の字を「訓読み(くんよみ)」し、下の字を「音読み(おんよみ)」するものです。

ちなみに「湯桶」(下の画像)とは、「湯や酒を注ぐための容器」のことです。現代の日本では、懐石料理店や蕎麦屋くらいでしか使われませんが、近代以前には一般的なものでした。

湯桶湯桶・絵柄入り蒔絵の湯桶

広義では、漢字二字のみに限らず、前半を音読みで後半を訓読みするものを「重箱読み」、前半を訓読みで後半を音読みするものを「湯桶読み」と言います。

2.「重箱読み(じゅうばこよみ)」と「湯桶読み(ゆとうよみ)」の具体例

(1)「重箱読み」の具体例

①あ行

・音読み(オンよみ)

②か行

・懐中物(カイチュウもの)

・額縁(ガクぶち)

・客間(キャクま)

・経木(キョウぎ)

・金熊(キンくま)

・金歯(キンば)

・金星(キンぼし)

・訓読み(クンよみ)

・碁石(ゴいし)

・工場(コウば)(「コウジョウ」とも読みます)

・後手(ゴて)

③さ行

・残高(ザンだか)

・桟橋(サンばし)

・試合(シあい)

・磁場(ジば)

・地場(ジば)

・重箱(ジュウばこ)

・定宿(ジョウやど)

・新顔(シンがお)

・新橋(シンばし)

・頭突き(ズつき)

・先手(センて)

・雑木(ゾウき)

・総花(ソウばな)

④た行

・台所(ダイどころ)

・大横綱(ダイよこづな)(「おおよこづな」とも読みます)

・反物(タンもの)

・団子(ダンご)

・蝶番(チョウつがい)(「チョウバン」とも読みます)

・賃上げ(チンあげ)

・豚汁(トンじる)(「ぶたじる」とも読みます)

⑤は行

・馬鹿(バか)

・派手(ハで)

・番組(バンぐみ)

・本棚(ホンだな)

・本屋(ホンや)

⑥ま行

・毎年(マイとし)(「マイネン」とも読みます)

・味方(ミかた)

⑦や行

・役場(ヤクば)

⑧ら行

・路肩(ロかた)

ほかにも、明治時代の実業家で天竜川の治水事業で有名な金原(キンぱら)明善(1832年~1923年)のような人名(苗字)の「重箱読み」もあります。

(2)「湯桶読み」の具体例

①あ行

・相性(あいショウ)

・合図(あいズ)

・朝晩(あさバン)

・雨具(あまグ)

・粗利(あらリ)

・言分(いいブン)

・初陣(ういジン)

・梅酒(うめシュ)

・大仰(おおギョウ)

・大勢(おおゼイ)

・遅番(おそバン)

・親機(おやキ)

②か行

・株券(かぶケン)

・切土(きりド)

・消印(けしイン)

・小判(こバン)

・小兵(こヒョウ)

③さ行

・白菊(しらギク)

「菊」は漢音・呉音ともに「キク」で、音読みしかなく、訓読みはありません。「キクは訓読み」と勘違いしている方も多いのではないかと思います。

・敷金(しきキン)

・下絵(したエ)

「絵」の漢音は「カイ」、呉音は「エ」で、訓読みはありません。「エは訓読み」と勘違いしている方も多いのではないかと思います。

④た行

・高台(たかダイ)

・薪能(たきぎノウ)

・強気(つよキ)

・手順(てジュン)

・手数(てスウ)

・手帳(てチョウ)

・手本(てホン)

・時計(とケイ)

・鶏肉(とりニク)

「肉」の漢音は「ジク」、呉音は「ニク」で、訓読みは「しし」です。「ニクは訓読み」と勘違いしている方も多いのではないかと思います。

なお、訓読みの「しし」は「太り肉(ふとりじし)」(よく太っていること、肉づきのよいこと)などと使います。

⑤な行

・庭下駄(にわゲタ)

・野宿(のジュク)

⑥は行

・豚肉(ぶたニク)

・太字(ふとジ)

・古本(ふるホン)

⑦ま行

・身分(みブン)

・見本(みホン)

・目線(めセン)

・盛土(もりド)(「もりつち」とも読みます)

⑧や行

・家賃(やチン)

・湯茶(ゆチャ)

・湯桶(ゆトウ)

・夕刊(ゆうカン)

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