日本語の面白い語源・由来(う-⑬、え-①)外郎・上の空・海老・エモい・えげつない

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外郎

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.外郎(ういろう)

外郎

ういろう」とは、うるち米やもち米の粉などに、黒砂糖・水などを混ぜ、型に入れて蒸した菓子で、「外郎餅(ういろうもち)」が正式名称です。

『和漢三才図会』における外郎餅の解説記事

<『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』における外郎餅(ういろうもち)の解説記事>

ういろうの語源には、痰(たん)切り・口臭消しなどに効く薬の別名が「外郎」や「外郎薬」で、その薬に色や形がよく似ていたため、菓子もこう呼ばれるようになったという説と、その薬の口直しに用いたためという説があります。

薬の名は、律令で定められた定員外の官を意味する中国の官僚の名前「員外郎(いんがいろう)」からです。

官僚の名が薬の名になったのは、室町時代に元(げん)の礼部員外郎(れいぶいんがいろう)であった陳宗敬が日本に帰化した際、「透頂香」という薬を伝え、陳宗敬の家名を「外郎」と称したため、薬の別名にもなりました。

「外」を「うい」と読むのは唐音です。

「ういろうもち」の現在の製法は、室町時代に周防山口の秋津治郎作が考えたそうです。

虎屋ういろ

余談ですが、私は松坂屋高槻店で時々出張販売する伊勢名物の「虎屋ういろ」が大好きです。「虎屋の羊羹」とは全く別ですが、なかなか美味です。

2.上の空(うわのそら)

上の空

上の空」とは、他の事に心が奪われていて、集中できないことです。

上の空は、空の上方の意味として、平安時代から使われ始めました。

落ち着かないさまを意味する「心空なり」という形容動詞があるため、「空なる心」を強調する表現として「上の空なる心」と使われ、のちに、心が奪われる意味として、単独で「上の空」と使われるようになったと考えられます。

3.海老/蝦/蛯(えび)

海老

エビ」とは、甲殻類十脚目に属する長尾類の総称です。海水または淡水にすみ、珪藻やプランクトンなどを食べます。食用のほか、魚類の餌として重要です。

エビの語源には、枝のようなヒゲがあることから「エビ(枝髭)」の説や、味がうまいことから「エミ(吉美)」の説エビは大きな魚の重要や餌となっており、尾のある餌の意味で「エビ(餌尾)」の説などがあります。

その他、エビの体色がブドウの色に似ていることから、ブドウの古名「えび(葡萄)」に由来するとの説もあります。しかし、「えび」と呼ばれていたブドウは、「ヤマブドウ」や「エビヅル」です。
山の近くに生息し、青や黒に近い紫色をしたエビはいないため、諸説ある中で最も考え難い説です。

4.エモい

エモい

エモい」とは、何とも言い表せない気持ち、大きく感情が揺さぶられるさまのことです。

エモいの「エモ」は、「感情的」を意味する英語「emotional(エモーショナル)」に由来しますが、「エモい」に至るまでの過程については次の二説あります。

音楽ジャンルの一つで、感情的な音楽性で抒情的な歌詞が特徴的な「Emo(エモ/イーモウ)」に由来し、感情を揺さぶられ、一言では表現できない心情を表す言葉として、「エモい」と言うようになったとする説。(「Emo」は「emotional」に由来)

「言葉で何とも言い表せない」という意味の「得(えも言われぬ」と掛かっているとする説

2016年頃から認知度が高まった言葉ですが、タレントなどから広まった流行語とは異なり、若者言葉が一般に広まった言葉のため、明確な由来の特定は困難です。

「エモーショナル」の「エモ」に形容詞を作る「い」を加えた単純なものの可能性もあれば、上記が複合して生まれた可能性もあります。

2000年代前半にも「エモい」という言葉は存在し、コギャルを中心に女子高生の間で使われていました。

コギャル
この「エモい」は、「エロ」と「キモい(気持ち悪い)」の合成語で、エロくて気持ち悪いことや人を意味しました。

感情が揺さぶられる意味の「エモい」と繋がりはありませんが、新たな「エモい」の語が生まれる際、うっすら聞き覚えのある「エモい」の音が影響した可能性は考えられます。

なお「エモい」については、「『エモい古語辞典』は、従来の『古語辞典』と違って新鮮で楽しい読み物になる!」という面白い記事を書いていますので、ぜひご覧ください。

5.えげつない

えげつない

えげつない」とは、やり方や言い方が露骨でいやらしい、図々しい、あくどいことです。元は関西方言。

えげつないの語源は不明ですが、あくが強い味覚の「えぐい」や「えごい」に関係する説があります。
この説は、「えぐい(えごい)」は「ひどい」「残酷」の意味でも使われていることから、えげつないは「えげつけない」が転じた語で、「け」は「気」、「ない」は甚だしいことを表す形容詞的接尾語というものです。

また、江戸時代の方言辞典『物類称呼』には、えげつないの類語として「いげちない(意気地ない)」や「むげちなき」が見られるため、「いげちない」の訛りという説もあります。

「いげちない(むげちなき)」は「情けない」を意味した語で、人情味がないところから「厚かましい」「むごい」などを意味するようになった可能性は考えられます。