熟語の読み方・どちらが正しいか(その1)早急・施行・依存・世論・面目

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早急の読み方

皆さんは熟語の読み方で、二つの読み方が行われていて、どちらが正しいのか、あるいはどちらも正しいのか迷ったことはありませんか?

今回はいくつか具体例をあげて解説したいと思います。

1.早急

「そうきゅう」と「さっきゅう」の二つの読み方が行われており、「そうきゅう」と読む人のほうが多いような気がしますが、本来の正しい読み方は「さっきゅう」です。

「早」という漢字は「早退」「早朝」「早期」など、「そう」という読みで使われることがほとんどで、「さっ」と読むのは「早速(さっそく)」ぐらいです。そのため「そうきゅう」と読みがちです。

そのため、近年では読み間違いが広がり、「さっきゅう」と読める人がとても少なくなってきています。

なおNHKでは「さっきゅう」を正しい読みとして使用しています。

2.施行

一般には「しこう」と「せこう」の二つの読み方がありますが、本来の正しい読み方は「しこう」です。

『小学館デジタル大辞泉』では、「法令の効力を発生させること」また「実際に行うこと、計画を実行すること」と説明されています。

一般的な辞書では「しこう」の読みをとっていますが、「せこう」と読む場合もあります。これは、法律関連において「執行(しっこう)」と区別するため「せこう」と読む慣用があるからだとされています。

ただ、一般的には、工事を実施することを意味する「施工(せこう)」と区別するために、「しこう」の読み方が多く用いられています。NHKでもこのように区別しています。

なお、仏教用語で「功徳のために僧などに物を施す」意味の「施行」は、「せぎょう」と読みます。

3.依存

「いぞん」と「いそん」の二つの読み方が行われており、「いぞん」と読む人のほうが多いような気がしますが、本来の正しい読み方は「いそん」です。

かつてNHKでは、放送用語としては「いそん」を採り、「いぞん」は原則として使わないことにしていました。

しかし平成26年(2014年)2月の第1379回放送用語委員会で話し合った結果、放送で優先させる読みを変更し、現在は「①いぞん、②いそん」で「いぞん」を優先させています。

これは、平成22年(2010年)にNHKが行った調査で「薬物に依存する」の読みを聞いたところ、「いぞん」が92%、「いそん」が6%という結果になったことが理由のようです。

4.世論

「よろん」と「せろん」の二つの読み方が行われていますが、「世論調査」の場合は「よろんちょうさ」と読むのが一般的なようです。

「世論」の読み方は、後述するように、「せろん(せいろん)」が本来の正しい読み方です。「よろん」の読み方は、「輿論」という熟語から来たものです。

「輿論」は、「世間一般の人々の考え」という意味の言葉ですが、「世論」とは微妙に意味合いが違います。「輿論」が「人々の議論あるいは議論に基づいた意見」を表すのに対し、「世論」は「世間一般の感情あるいは国民の感情から出た意見」を表しています。

しかし、「輿論」の「輿」という字が昭和21年に公布された「当用漢字表」に含まれなかったことから、「世論」の表記が代用されました。

そのため、「世論」に「よろん」の読み方が加わったという経緯があります。ただ、現在では、「よろん」の読みの方が多数派となっています。

NHKでは、「せろん」は「原則として、放送では使わない」とし、「よろん」だけを使うことにしています。

5.面目

「めんぼく」と「めんもく」の二つの読み方が行われており、「面目ない」は「めんぼくない」と読みますが、「面目躍如(めんもくやくじょ)」や「面目一新(めんもくいっしん)」のような四字熟語では「めんもく」と読む場合が多いようですが、「新明解四字熟語辞典」(三省堂)によれば「めんぼくやくじょ、めんぼくいっしんとも読む」とあります。

つまり、「めんぼく」と「めんもく」はどちらも正しい読み方だということです。

なおこの言葉は、そもそもは仏教用語の「面目(めんもく)」から転じた言葉です。

「面目」の意味は「世間での立場」「世間からの評価や名誉」です。立場を保ったり、立場を失ったりする状況で「面目」が使用されます。また、「面目」は古くから使用される言葉であり、古語としては「顔」「顔の様子」を意味します。

日葡辞書では「めんぼく」と「めんもく」を区別し、前者は名誉の意、後者は顔、または趣旨・主張の意としています。この区別が確かにあったかどうかは明らかではありませんが、名誉の意の例は「めんぼく」となっているものが圧倒的に多いようです。

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