「ケインズの一般理論」とは?わかりやすくご紹介します

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ケインズ

ケインズと言えば、教科書にも出てくる有名な経済学者ですが、「ケインズの一般理論」という言葉を聞いたことはあっても、内容については詳しく知らない方も多いのではないでしょうか?

1.「ケインズの一般理論」とは

一般に「ケインズの一般理論」と呼ばれていますが、正式には「雇用・利子および貨幣の一般理論」と言います。

この理論は、「失業・所得格差という資本主義の問題を政府はどのように解決していくべきか」を述べたものです。

(1)ケインズ以前の経済学

この理論が発表された当時は、アダム・スミス(1723年~1790年)の考え方に基づく「古典派経済学」が主流でした。アダム・スミスの「労働価値説」(労働が価値を生み出す源泉であるとの考え方)や「神の見えざる手による市場の自動調節機能と市場における自由競争原理」の考え方は、イギリス産業革命の理論的支柱となり、資本主義社会の発展をもたらしました。

一方、カール・マルクス(1818年~1883年)は、「資本論」で「資本主義経済には限界があり、労働者と資本家の格差は広がり続ける」と説き、「資本を社会の共有財産に変えた計画・管理による社会主義」を主張しました。

しかしケインズは、「適切に政府が市場に介入していけば、資本主義は持続可能だ」と説きました。

(2)ケインズの「一般理論」の要点

①「均衡財政」による経済的リスク

ケインズ以前の一般的な「財政政策」は、「均衡財政」でした。

「財政政策」とは、「政府がお金を支出して経済に影響を及ぼす政策」のことです。

「均衡財政」とは、「経常支出総額が経常収入総額に等しい財政状態」のことです。つまり「税金で得られる収入の範囲内で、政府は支出しましょう」という考え方です。

しかし、この「均衡財政」には、「一度不景気に陥ると、そのスパイラル(悪循環)から抜け出せなくなる」という問題点があります。

②「国債発行」と「公共投資」

これに対してケインズは、「国債発行によって公共事業に支出するなどの公共投資によって、雇用を創出し景気を回復させることができる」と主張しました。

つまり財政政策による政府の積極的介入を行うことで、景気回復を図る考え方です。

アメリカの「ニューディール政策」もその一例です。

「ニューディール政策」とは、1930年代にアメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領が、世界恐慌を克服するために行った大規模な公共事業などの一連の積極的な経済政策のことです。

「ニューディール政策」は「世界で初めてケインズの理論を取り入れた」と言われることもありますが、ケインズの「一般理論」の出版は1936年で、この政策が開始された1933年より後)です。

この政策の原案は、いち早く世界恐慌から脱した日本の「時局匡救(きょうきゅう)事業」と大半の部分で共通しており、これを参考にしたのかもしれません。「時局匡救事業」は、時の大蔵大臣高橋是清(1854年~1936年)が考案した大規模な公共土木事業政策です。

ケインズは、「どんな無意味な公共事業でも景気対策になる」という考え方で、そのたとえ話として「公共事業でピラミッドを建設しても景気対策になる」と述べています。

③「有効需要」の原理

有効需要の原理とは、「有効需要が、雇用量や国民所得といった国の経済水準を決定するという原理」です。

有効需要」とは、「貨幣の裏付けのある需要」のことです。単に欲しいと思うだけでなく、それを買うお金を持っている必要があるということです。逆に言えば、「貨幣的裏付けのない需要は有効ではない」ということです。

有効需要が大きいほど景気が良いと言えます。

④非自発的失業

ケインズが考えた「資本主義経済の問題点」は、「完全雇用が実現できず、失業者が出ること」でした。

失業者には、「自発的失業者」と「非自発的失業者」がいます。

「自発的失業者」とは、「賃金や職場環境などを理由に、自発的に就業を拒否することによる失業者」です。「非自発的失業者」とは、「働く能力・意思はあるが、雇用機会がないことによる失業者」です。

「完全雇用」とは「非自発的失業者がいないような状態」のことです。

ケインズは「完全雇用を実現するためには、政府による公共事業を増やすべき」であると主張しました。「公共事業は雇用創出と企業の売上上昇をもたらす」という考えに基づいています。

⑤「利子率」と「利潤率」

ケインズは、公共事業とは別の方法による景気回復方法についても述べています。

それは「利子率」と「利潤率」という考え方です。

「利子率」とは、「銀行に預けておいた時に増えるお金の割合」のことです。

「利潤率」とは、「事業に投資した場合に増えるお金の割合」のことです。

利子率と利潤率の高低によって、投資家と中央銀行の行動が変わってきます。

利子率<利潤率の場合は、投資家は事業投資を行い、利子率>利潤率の場合は、投資家は銀行に貯蓄します。しかしこれでは経済が停滞し、景気が悪くなります。

そこで中央銀行は、利子率を引き下げる「金融政策」を行います。それにより、利子率が利潤率より低くなれば事業投資が増え、景気対策になるというわけです。

2.ケインズ理論の欠点

しかし、このケインズ理論は欠点も指摘されています。

ケインズが生まれ育ったケンブリッジの「ハーヴェイロード6番地」にちなんで「ハーヴェイロードの前提が崩れた」と言われます。

ハーヴェイロードの前提」とは、「政府は民間経済主体に比べて経済政策の立案能力・実行能力に優れているという仮説」です。

ハーヴェイロードの前提

ケインズ理論は、「国が借金をして公共投資を行い、雇用と所得が増えて、国の税収が増えれば、国は借金を返すだろうという前提」に立っていました。

しかし、国は借金を返すことはありませんでした。なぜなら急に公共投資をやめれば、有権者に反発されますし、景気が少し上向いたからといって増税を行っても反発されるからです。

このように、「財政政策」面での「ハーヴェイロードの前提」は失われています。昨今のマクロ経済安定化政策が「金融政策」主体となっているのはそのためです。

実際、日本国家の借金は今や1200兆円にまで膨れ上がっています。(2020年12月末時点で1212兆円)

日本国債残高推移

3.ケインズとは

ジョン・メイナード・ケインズ(1883年~1946年)は、イギリスの経済学者・官僚で貴族(男爵)でもあります。イングランド銀行理事なども務めました。

20世紀における経済学者の代表的存在で、「有効需要理論」に基づき「ケインズ経済学」と呼ばれる「マクロ経済学」を確立させました。

経済学の大家アルフレッド・マーシャル(1842年~1924年)の弟子であり、論敵で「厚生経済学」で有名なアーサー・セシル・ピグー(1877年~1959年)とは兄弟弟子です。

4.最近話題になっているMMTの問題点

前に「MMT(現代金融理論)は健全財政を否定する詭弁でハイパーインフレの危険性大」という記事を書きました。

この「国はいくらでもお札を刷ればよい」というMMTを推進すれば、やがて取り返しのつかない「ハイパーインフレ」になることは目に見えています。MMT推進派の人々は、「インフレになれば、その時点で止めればよい」としていますが、「車が急には止まれない」のと同様、うまくコントロールできない(制御不能になる恐れが強い)のではないかと私は思います。

第一次世界大戦後の敗戦国ドイツの悪夢のような猛烈なハイパーインフレは絶対に避ける必要があります。ドイツは「1918年から1923年までの約5年間で物価は1兆倍」になりました。

日本も、太平洋戦争の敗戦後、「準ハイパーインフレ」とも呼ぶべき猛烈なインフレに見舞われ、インフレが鎮静化した1955年の物価は開戦当初に比べて約180倍に高騰していました。

日本の地方公共団体を見ても、放漫財政の結果、実質財政破綻状態に陥りかけた大阪府のような例もあります。橋下徹元大阪府知事が危機意識を持って立て直しを図りましたが、国については、監督するところがありません。

MMT政策は、日本の国家としての信用を毀損し、日本の国債のさらなる格付下落を招くのではないでしょうか?現在海外投資家の日本国債保有比率が、10%未満だとしても今後増加する可能性もあり、財政破綻の危険がゼロとは言い切れません。

MMTは、決して日本の取るべき金融政策ではないと私は思います。麻生財務大臣に期待したいことは、しっかり菅首相を説得し、間違った金融政策を取らないようにすることです。

なお、サマーズ元米財務長官やイエレン前FRB議長、パウエル現FRB議長も、MMTに批判的です。

5.日本の景気対策

私は、現在の日本の景気対策としては、製造業の日本回帰によるサプライチェーンの中国依存の脱却、製品価格の適正な引き上げによる企業の収益力強化と労働分配率向上、預金金利の段階的引き上げによる金利収入向上が必要だと思っています。

これについては次の三つの記事に詳しく書いていますので、ご一読ください。

今こそ「製造業(工場)の日本回帰」でサプライチェーンの中国依存を脱却すべき

人事の2020年問題では、内部留保増加に比べ低い労働分配率の向上が最重要!

マイナス金利政策は早急に中止し、金利を引上げて景気回復を実現すべき!



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