1.鰤起し(ぶりおこし)
「鰤起し」は「冬」の季語です。
「鰤起し」とは「ブリの獲れる頃、十二月・一月ごろに強風とともに鳴る雷のこと」です。北陸地方では豊漁の前兆だと言って縁起を担ぎます。
漁師には鰤漁の始まりの合図であり、人々には冬の到来を告げるものです。
例句としては、次のようなものがあります。
・鰤起し杉山檜山色褪せぬ 阿波野青畝
・立山の襞引き締めて鰤起し 蔵巨水
・茶畑の空はるかより鰤起し 飯田龍太
・鰤起し一つとどろく佐渡泊り 高木良多
2.木の葉髪(このはがみ)
「木の葉髪」は「冬」の季語です。
「木の葉髪」とは「夏の紫外線や暑さで髪の成長が阻害され、晩秋から初冬にかけて抜け毛が多くなるが、それを木の葉が落ちるのにたとえて言ったもの」です。
季節感と相まって侘しさを感じます。
例句としては、次のようなものがあります。
・よき櫛の我が身と古(ふ)りぬ木の葉髪 松本たかし
・木の葉髪大木のごと横たはる 長谷川櫂
・その生涯入坑採鑛木の葉髪 及川貞
・木の葉髪汝も妻子養ふや 下村槐太
3.冬萌/冬萌え(ふゆもえ)
「冬萌」は「冬」の季語です。「子季語」には「冬木の芽(ふゆきのめ)」があります。
「冬萌」とは「冬の暖かい日に思いがけず木の芽が萌え出している様子のこと」です。日溜まりでは草も萌え出ます。
例句としては、次のようなものがあります。
・冬萌や海と平らに仔牛の背 須並一衛
・冬萌冴ゆ調子昂(たか)めるよいとまけ 加藤知世子
・冬萌や赤子の好きな肩車 真山尹
・秋声(しゅうせい)の碑(いしぶみ)ひそと冬萌ゆる 加藤耕子
4.夜の秋(よるのあき)
「夜の秋」は「夏」の季語です。
「夜の秋」とは「夏の終わり頃、夜になると涼しく何となく秋めいた感じのすること」です。
例句としては、次のようなものがあります。
・涼しさの肌に手を置き夜の秋 高浜虚子
・旅馴れてトランク一つ夜の秋 星野立子
・粥すゝる杣(そま)が胃の腑や夜の秋 原石鼎
・夜の秋や戸にはさまりし絲すゝき 木津柳芽
5.夜食(やしょく)
「夜食」は「秋」の季語です。「子季語」には「夜食とる」「夜食喰ふ」「夜食粥」「夜食どき」があります。
「夜食」とは「通常の食事以外に夜中にとる食事のこと」です。昔の農村では、「夜業(やぎょう)」(よなべ)をした後に雑炊などの夜食を食べました。
私も受験生の頃は、毎晩のように「チキンラーメン」を夜食に食べていました。サラリーマンになってからは、毎日のように長時間の残業がありましたので、店屋物のチャーハン、焼きそばやうどんの出前を頼んだり、自動販売機の「カップヌードル」などをよく食べました。
例句としては、次のようなものがあります。
・面やつれしてがつがつと夜食かな 高浜虚子
・梟(ふくろう)が鳴けば夜食となりにけり 青木月斗
・黙々と人のうしろに夜食かな 大森雅村
・夕空見てから夜食の箸とる 尾崎放哉