マルクスを経済的に終生支え続けた親友エンゲルスとはどんな人物だったのか?

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エンゲルス

現代の「共産主義体制の国家」では多くの国民が貧しい暮しをしており、当初のマルクス・エンゲルスの理想とは程遠い「絶対王政」のような「共産党一党独裁国家」になっていることは、皆さんご存知の通りです。当時「地上の楽園」と喧伝された「北朝鮮への帰国事業の悲惨な結末」でも明らかです。

ロシア・中国・北朝鮮を見ると、裏では血塗られた激しい権力闘争があります。スターリンによる大規模な恐怖の「スターリン粛清」やプーチン大統領による政敵暗殺疑惑、毛沢東による文化大革命の名を借りた政権奪還闘争や習近平主席による汚職撲滅運動に名を借りた政敵粛清、金正恩総書記による政敵の公開処刑による粛清などです。

今ではプーチン大統領・習近平主席・金正恩総書記による「帝国主義的な独裁国家」が確立されたと言ってよく、中でも北朝鮮は「金日成・金正日・金正恩」と三代続く「金王朝」です。

このように「共産主義」は現実の政治体制としては日本のような資本主義体制の国家には受け入れがたいものですが、最初に共産主義を提唱したマルクスとエンゲルスはどのような考えだったのでしょうか?

そして、浪費家でいつも金銭的に困っていた「資本論」で有名なマルクスを、経済的に終生支え続けた親友エンゲルスとはどんな人物だったのでしょうか?

1.マルクスとエンゲルスの思想

(1)マルクス主義

マルクス主義」とは、弁証法的唯物論や階級闘争論などからなる社会主義思想体系の一つです。社会主義は科学であるとの立場から「科学的社会主義」とも称されます。

マルクスとエンゲルスの密接な協力の中で時間をかけて諸思想や理論が構築されました。資本主義の矛盾から社会主義へ移行せざるをえないとし、階級闘争を通じて労働者の解放が実現されると説きました。

マルクス主義は、弁証法的唯物論の思想の上に展開されます。マルクス主義における歴史観も弁証法的唯物論に従い、資本家と労働者階級の間における闘争の歴史と解釈されました。

弁証法的唯物論」とは、マルクスとエンゲルスが、ドイツの哲学者ヘーゲル(1770年~1831年)の「弁証法」とドイツの哲学者フォイエルバッハ(1804年~1872年)の「唯物論」を解釈し直して創始した説で、社会や歴史の発展過程を、固有の法則に従って弁証法的に発展する物質の機能であるとするものです。この説は革命の哲学とされ、のちにレーニン、スターリンや毛沢東などによって発展して行きました。

エンゲルスとマルクスが生きた19世紀のヨーロッパは、産業革命によって社会が大きく変革し、資本金を手にしたブルジョワ階級が台頭し、極度の貧富の格差が生まれた時代でした。

マルクスとエンゲルスは、人間の意思を離れて絶えず拡大しようとする資本に問題の原因を見て、資本主義批判と社会改革を主張しました。

(2)「資本論」は実質的にマルクスとエンゲルスの共著

エンゲルスは家業の紡績工場を経営しながら、困窮していたカール・マルクスとその家族の生活を支えました。さらにマルクスの死後に遺稿を整理し、マルクスが生前に刊行できなかった「資本論」の第2巻と第3巻を完成させました。

エンゲルスは公私ともにマルクスを支え、マルクスの「資本論」の執筆にも協力しました。「資本論」は実質的にはマルクスとエンゲルスの共著でした。

2.エンゲルスとは

フリードリヒ・エンゲルス(1820年~1895年)は、ドイツの社会・政治思想家で革命家です。エンゲルスは、盟友カール・マルクス(1818年~1883年)とともに、社会主義体制の理念を構築し、革命運動や社会主義運動の指導的な役割を果たしました。

エンゲルスは公私ともにマルクスを支え、マルクスと並ぶマルクス主義の創立者とされています。

エンゲルスはライン州の紡績工場主の家に生まれ、ベルリン大学で哲学などを聴講しヘーゲルを学びました。1843年イギリス・マンチェスターの父の工場に入り、ここで産業資本主義下のイギリスの労働者階級の状態をつぶさに見聞して社会主義者へ脱皮しました。

1844年パリでマルクスに会い、二人の終生の友情の基礎ができました。1848年2月に共同で「共産党宣言」を著し、同年「三月革命」に失敗したのち、再びイギリスに渡ってマンチェスターで実業につき、マルクスに経済的援助を与えました。「資本論」執筆を助けつつみずからも多くの著作を行い、唯物史観の確立に努めました。

その後ロンドンに移り、マルクスとともに国際労働者協会「第1インターナショナル」の指導などに当たりましたが、マルクスの死後は彼の原稿を整理して「資本論」2・3巻を刊行し、1889年に創設された「第2インターナショナル」への援助や、1890年のロンドンでの「第1回メーデー」への参加など、国際労働運動や社会主義運動への指導や参加を続けました。

エンゲルスとマルクスが生きた19世紀のヨーロッパは、産業革命によって社会が大きく変革し、資本金を手にしたブルジョワ階級が台頭し、極度の貧富の格差が生まれた時代でした。

マルクスとエンゲルスは、人間の意思を離れて絶えず拡大しようとする資本に問題の原因を見て、資本主義批判と社会改革を主張しました。

3.マルクスとエンゲルスの著作

(1)「ドイツ・イデオロギー」(共著、1845年)

マルクスとエンゲルスは、唯物論の視点から資本主義社会を検討しました。過去の歴史では、ひとつの時代の経済的状況によって動機を与えられた多数の個人が、法律やイデオロギーなどを形成したと主張しました。

本書により、歴史を唯物論から把握する「唯物史観論」が明示されました。

(2)「共産主義者宣言(共産党宣言)」(共著、1848年)

「共産主義者宣言」(または「共産党宣言」)は、マルクス主義の基本文献です。有名な句「今日までのあらゆる社会の歴史は階級闘争の歴史である」に始まり、それまでの歴史観を根本的に覆した革命的宣言を行いました。

労働者が団結することで搾取してきた資本家を打倒できることや、共産主義の基本的な考え方が説かれ、これ以降のあらゆるプロレタリア運動の指針となりました。

「共産主義者宣言」から始まるマルクス主義の思想は、後の時代にレーニンやスターリンが都合良く作り変え、ロシア革命の指導理念となりました。

結びに記された「万国の労働者、団結せよ!」の言葉は共産主義の最も有名なスローガンとなり、ソビエト連邦の国是ともなりました。

(3)「空想から科学へ」(エンゲルス、1880年)

「空想から科学へ」は、社会主義の入門書として一般の人々に向けてエンゲルスが書いたもので、エンゲルスのベストセラーとなりました。当時から広く読まれており、難解な「資本論」の世界観も本書により理解することができます。「空想から科学への社会主義の発展」が正式名称です。

具体的には、「空想的社会主義」の意義と限界について考察し、空想的社会主義を「科学」に変えるうえで、ヘーゲルの弁証法が与えた影響について述べられています。空想的社会主義とは「ユートピア社会主義」ともいい、初期の社会主義思想を指します。

また、1867年に刊行された「資本論」第1巻の内容を引用し、生産が社会化しても利益取得は私的なままであるという「資本主義の基本矛盾」を説明しました。結論として、資本主義は社会主義に移行せざるを得ないと主張しました。

4.最近の日本の政策や風潮は社会主義的になり過ぎている!?(蛇足)

「共産主義国家」(ないし「社会主義国家」)がうまく機能しないことは、現実の「共産主義国家」の実態を見れば明らかですが、最近の日本の政策や風潮が、「社会主義的になり過ぎている」点は気になります。

日本に留学している中国人が「日本は、理想的な社会主義の国ですという感想を述べたという話を聞いたことがあります。その中国人留学生によると「中国では、地方の農村と上海や北京のような大都市との貧富の格差は日本とは比べものにならないくらい非常に大きい。日本は誰が金持ちで誰が貧しいかわからない。中国はこういう国を作りたかった。」とのことです。

これについては、前に「最近の日本の政策や風潮は社会主義的になり過ぎていないか?」という記事に詳しく書いています。ぜひご一読ください。

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