コロナ禍で運動不足になるのを解消するために、毎日30~40分ほど散歩するようになりました。晴れた日は燦燦と降り注ぐ太陽の光を浴びて、「幸せホルモン」と呼ばれる「セロトニン」を感じながら気持ちよく歩きます。また青空も、嫌なことを忘れさせてくれて大変爽快な気分になります。
ところで、晴れた日の日中の空はなぜ青色なのでしょうか?
今回はこれについてわかりやすくご紹介したいと思います。
1.可視光線
空気は透明で、太陽光は無色なのに、なぜ空は青く見えるのでしょうか?
まず前提の知識として、人間の眼に見える「可視光線」の特徴を理解する必要があります。
光は波で、人間の眼に見えるのは波長の長い赤色(780nm)~波長の短い紫色(380nm)の七色のごく限られた範囲だけです。これが「可視光線」です。
「可視光線」は、波長の短い方から紫・藍・青・緑・黄・橙・赤の順の虹の七色です。また、紫よりも波長の短い光は紫外線、赤よりも波長の長い光は赤外線です。
なお、「可視光線」より長い波長領域は、スマホやテレビやラジオ、各種の無線機などの多様な通信手段に使われている光の帯域です。
昼間の太陽光が白く見えるのは、この七色が均一に交じり合っているからです。「光の三原色」のR(赤)G(緑)B(青)を混ぜると白く見えるのと同じ原理です。
2.波長の長い赤色は屈折(散乱)しづらく波長の長い紫や青は屈折(散乱)しやすい
上の図のように白色光が屈折すると七色に分かれます。波長が長いほど屈折しづらく、波長が短いほど屈折しやすい性質があります。
つまり波長の長い赤色は屈折(散乱)しづらく波長の短い紫や青は屈折(散乱)しやすいのです。
3.晴れた日の日中の空が青色に見える理由は「レイリー散乱」
光には粒子にぶつかると進行方向が変わって散ってしまうという性質を持っています。その中でも光の波長よりも小さい粒子にぶつかることによって起きる光の散乱を「レイリー散乱」と言います。
この「レイリー散乱」は粒子の直径が大きいほど、起きやすくなります。逆の見方をすると、同じ大きさの粒子で満たされた空間であれば、波長の短い光の方がレイリー散乱が起きやすいということです。
「レイリー散乱」が起きやすいのは、青や紫の光です。そして、このレイリー散乱が地球の大気圏で起きることによって、空が青色に見えるのです。
「光の散乱は、空気中の窒素や酸素の分子にあたって散乱している」と結論づけたのが、イギリスの物理学者「レイリー卿」こと第3代レイリー男爵ジョン・ウィリアム・ストラット(1842年~1919年)(上の写真)です。散乱にもいろいろの種類がありますが、この空気中の分子による散乱を特に「レイリー散乱」というのはそのためです。
大気中には非常に小さな粒子(空気分子そのもの。とくに酸素分子と窒素分子)が大量に存在しています。
「可視光線」は上述の7色が均一に交じり合っている色のスペクトルです。青や紫は波長が短いので、大気中の酸素分子や窒素分子に、より頻繁に衝突します。頻繁に衝突した青の波長はありとあらゆる方向へ散乱します。
散乱された青や紫の光はその周辺の微粒子により更にまた何度も散乱が繰り返され(多重散乱)、空一杯に散乱光が広がっていきます。
一方、赤色は波長が長いため大気中の微粒子とぶつかる比率が各段に少ないのです。このため、晴天の空は青色が散乱して空一杯に広がるため、空全体が青く染まって見えることになります。
4.青色より短い波長の紫色が目に見えない理由
青色より短い波長の紫色がより多く散乱しているはずなのに眼に見えないのは、上の図のように人間の眼の色の感度は光のスペクトルの真ん中に位置する色をより感度が高く鮮明に捉えられるようにできているからです。
紫が空気中に多く散乱しているにも関わらず空が青く見えるのは、私たちの目が紫色よりも青色に感度が高いため紫色を感じないのです。
最も波長が短い紫色を感じないのは、紫の光が青の光のエネルギーに比べて弱く、平地では人間の目まで届かないためですが、高い山に登ると、暗いぐらいの紺碧の空を見ることができます。