日の出や日没の空はなぜ赤色に見えるのか? 空の色の不思議(その2) 

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夕焼け

<「夕焼け」の写真>

朝焼け

<「朝焼け」の写真>

コロナ禍で運動不足になるのを解消するために、毎日30~40分ほど散歩するようになりました。晴れた日は燦燦と降り注ぐ太陽の光を浴びて、「幸せホルモン」と呼ばれる「セロトニン」を感じながら気持ちよく歩きます。また青空も、嫌なことを忘れさせてくれて大変爽快な気分になります。

「青空」については、前回「空はなぜ青色なのか? 空の色の不思議(その1)」という記事を書きましたので、ぜひご覧ください。

ところで、晴れた日の日の出や日没の空はなぜ赤色(朝焼け・夕焼け)に見えるのでしょうか?

今回はこれについてわかりやすくご紹介したいと思います。

1.空気中の移動距離が長い場合、波長の短い「可視光線」は散乱して消える

夕焼け

日の出や日没の時に空が赤や橙に見えるのはなぜでしょうか?

朝や夕方は、太陽の高度が低く、光が空気の層を斜めから差し込むため、大気の中を通る距離が長くなります。

日の出や日没の時は、波長の短い青い光が早い時点で散乱し、そのエネルギーが弱いため私たちの目に届く前に消えてしまい、波長の長い赤や橙の光だけが届くようになるのです。

2.空気中の移動距離が短い場合、波長の短い「可視光線」だけが届く

空の色が青い理由

一方で昼間は、太陽の高度が高く、光が空気の層を真上から差し込むため、大気の中を通る距離が短くなります。

波長の短い青い光が、波長の長い赤や橙の光よりも早い時点で散乱するため私たちの目に届く昼間の空の色は青く見えるのです。

3.空気中の移動距離が中間の場合、七色の「可視光線」が混じり合い白色になる

可視光線

空の色としては、日中の青色と日の出・日没時の赤色(朝焼け・夕焼け)が強く印象に残りますが、よく観察すると朝と夕方は白く(白っぽく)見えます

これは昼間の太陽光が白く見えるのと同じで、七色の「可視光線」が均一に交じり合っているからです。「光の三原色」のR(赤)G(緑)B(青)を混ぜると白く見えるのと同じ原理です。

4.「朝焼け」と「夕焼け」について

(1)「朝焼け」とは

朝焼け

「朝焼け」とは、東の空から太陽が昇る時、空が赤く染まる自然現象のことです。時間帯は朝で、厳密な時刻は季節によって変わります。

「夕焼け」と同じく、夏の季語です。また、「朝焼け」を英語では “sunrise” や “sunrise glow” と表現します。 “glow” には「高温物質からの光、光の反射による輝き」という意味があります。

ちなみに、「テキーラ・サンライズ」というカクテルがありますが、これはテキーラにオレンジジュースとグレナデンシロップを加えたものです。鮮やかなオレンジ色をしており、「朝焼け」をイメージさせる見た目になっています。

「朝焼け」で空が赤くなる理由も、「夕焼け」と同じです。日の出の時には太陽が東の地平線にあり、光が通り抜ける空気の層の距離が長くなります。すると、日中よりも赤い光が散乱するため、空が赤くなります。

しかし、「朝焼け」は「夕焼け」よりも赤色が薄いことが多いです。また、地表に届く光が強く、光がまぶしく感じます。それは空気中の水蒸気やチリが関係しています。

夜は昼に比べて気温が下がるため、上昇気流は発生しにくいのです。そのため、夜のうちに空気中にあった水蒸気やチリは地表に落ちてきます。すると朝の空には、光を散乱させる物質が少ない状態になります

その結果、朝の光は「夕焼け」の時よりも散乱せず、地表にまっすぐ届きます。それが赤色の薄さや光のまぶしさに繋がります。

(2)「夕焼け」とは

夕焼け

「夕焼け」とは、西の空に太陽が沈む時、空が赤く染まる自然現象のことです。時間帯は夕方で、厳密な時刻は季節によって変わります。

「夕焼け」を英語では “sunset” や “sunset glow” と表現します。 “glow” には「高温物質からの光、光の反射による輝き」という意味があります。

ちなみに、「テキーラ・サンセット」というカクテルがありますが、これはテキーラにレモンジュースとグレナデンシロップを加えたものです。これは名前からも分かるように、「夕焼け」をモチーフにしたカクテルです。

「夕焼け」は、「朝焼け」と同じく夏の季語となります。また「夕焼け」により赤く染まった雲のことを「夕焼け雲」といいます。

「夕焼け」で空が赤くなる理由としては、太陽の光の性質が深く関係しています。

光には、波長の違いがあり、波長の違いに応じて色が変化します光の色を波長が長い順に並べると、次のようになります。

  • 赤色
  • オレンジ色
  • 黄色
  • 緑色
  • 青色
  • 藍色
  • 紫色

光は小さな粒子にぶつかると、散乱します。この現象のことを「レイリー散乱」といいます。

また、光は波長が短いほど、空気中の分子に多くぶつかり、散らばってしまいます。逆に、波長が長いほど、空気中の分子をすり抜け、遠くまで届きます。つまり、上記の色のうち、波長の短い藍色や紫は散らばりやすく、波長の長い赤色やオレンジ色は散らばりにくいといえます。

晴れた日の空が青いのは、上空で青系の色の光が大気中のチリや分子に当たり、散乱しているためです。この時、赤色やオレンジ色の光の多くは、散乱することなくまっすぐ地表に届いています。

一方、夕方になると、日中は頭上にあった太陽が西の地平線近くに移動してきます。すると、太陽の光が通り抜ける空気の層の距離は、日中よりも長くなります。そのため、日中は地表に届いていた赤色やオレンジ色の光も、夕方には上空で散乱するようになりますこれが「夕焼け」で空が赤くなる理由です。

「朝焼け」の場合も、同様のメカニズムです。日の出の時も太陽が東の地平線にあるため、日中に比べて太陽の光が通り抜る距離が長くなります。そのため、空が赤くなります。

(3)「朝焼け」と「夕焼け」の違い

しかし、「夕焼け」と「朝焼け」では、空の見え方が異なります。

夕焼け」の特徴は、比較的眩しさが少なく、濃い赤色であることです。「夕日(夕陽)」の色も「朝日(朝陽)」の色に比べて眩しさが少ない濃い赤色ですね。その原因は、上昇気流にあります。

日中は地表に日光が当たり、空気が温められます。空気は暖かいほど上にあがる性質があるので、上昇気流が発生します。そこに地上の水蒸気やチリが乗っかり、舞い上がるため、夕方の空には色々な物質が浮いている状態になります。

空気中に水蒸気やチリがあると、光は散乱するため、「夕焼け」は眩しさは少なく、ぼんやりとした輪郭になります。また、赤系の光が大量に散乱するため、鮮やかな赤色になりやすいです。この度合いは、季節によって異なります。

ちなみに「夕暮れ」とは「日が沈む時間帯」のことをいいます。空が赤くなる自然現象のことを指す「夕焼け」とは意味的に異なります。

(4)「朝焼けは雨、夕焼けは晴れ」ということわざは本当か?

朝焼けは雨、夕焼けは晴れ」ということわざがあります。これは「朝焼け」がきれいに見えたときにはその日は雨が降り、「夕焼け」がきれいに見えたときには次の日に雨が降るという意味です。

このことわざは、ある程度は当たりますが、必ずしもそうとはいいきれません。

まず、「朝焼け」後に雨が降るということについて説明します。

上空には、常に「ジェット気流」という風が吹いており、西から東へ空気が流れています。そのため、天気は西から東に向かって変化していくことが多いのです。

「朝焼け」が見えるということは、東の空に雲がないということです。逆に言うと、これからの天気を表す西の空の様子は、直接は分かりません。

しかし、春と秋には、高気圧(天気が良くなる状態)と低気圧(天気が悪くなる状態)が交互に来ることが多いです。そのため、春と秋においては、東の空の天気が良ければ、西の方角から雨雲が来ている可能性が高いといえます。

そのため、「朝焼け」後に雨が降ることは、春・秋においてはある程度当てはまります

次に、「夕焼け」の次の日が晴れることについて説明します。

「夕焼け」が見えるということは、西の空の天気が良いということです。天気は西から東に向かって変化していくため、「夕焼け」が見えるということは、しばらくは雨が降らないということを意味します

もちろん雨雲の足が速いこともありますし、春や秋には高気圧の後には低気圧がやってくるため、確実に翌日晴れるとはいえません。しかし、ある程度は当てはまります。