最近「クラフトビール」という言葉をよく聞きます。しかし、どこで作っているビールなのか、はっきりしたことはわかりません。
一時「地ビール」というのが一種のブームのようになりましたが、これとも少し違うようです。
ただ、アサヒやキリン、サッポロなどの「大手メーカーのビール」と違うことはわかります。
そこで今回は、「クラフトビール」とは何か、「大手メーカーのビール」や「地ビール」とはどう違うのかについて、わかりやすくご紹介したいと思います。
1.「クラフトビール」とは
「クラフトビール」(craft beer)とは、小規模な醸造所が作るビールで、手工芸品(クラフト)に例えて言う語です。
英語で「職人技のビール」「手作りのビール」などを意味する表現で、大手のビール会社が量産するビールと対比して用いられる概念です。
また「地ビール」が地域性に注目した用語であるのに対して、「クラフトビール」の場合はビールの個性に注目することが多いようです。
まず、日本において、ビールと発泡酒に税法上の区別があるような形で、ビールとクラフトビールは区別されてはいません。
また、現在のところ、明確な定義も広まっておらず、クラフトビールとはなにか、正解が無い状態だそうです。
ただ、次のような点が大手メーカーのビールと違うと言われています。
- 希少性
- 多様性
- コミュニケーション
2.「大手のビール」との違い
(1)希少性
①クラフトビールは醸造時期・量が決まっているものが多い
クラフトビールは小規模の醸造所が多く、醸造される時期、量が決まっているものが多いです。
1年を通して飲めるビールもありますが、季節限定のフルーツを使ったものや、ブルワリー同士がコラボレーションしたものなど、クラフトビールとの出会いは一期一会の場合も少なくありません。だからこそ、ビールを知り、愛でる人たちが多いのかもしれません。
②大手メーカーのビールは安定供給されることが重要
一方、大手メーカーのビールは、とにかくブレずに安定供給することが重要です。また、多くの人に受け入れられることも大事です。
多くの関係者がいる中で、芸術家的なビール造りよりも、大衆を意識したビール造りを(大きく言えば)社会から求められています。
(2)多様性
①ビールには多様なスタイルが存在する
ビールには多様なスタイルがあります。2016年、アメリカで開催されたワールドビアカップ2016において審査されたカテゴリー(ビアスタイル)は96もあります。しかし日本の大手メーカーが造っているビールは、(最近のものを含めても)10程度しかありません。「スポーツの中の柔道」のように「ビールの中のピルスナー」というスタイルだったりします。
クラフトビールは、そのスタイルに固執せずに造り手が自分の造りたいものを造るという側面もあるため、醸造家の数だけビールができると言っても過言ではありません。
いろいろなクラフトビールを揃えているビアバーはもちろん、ひとつの醸造所で数十のスタイルを造っているところもあり、そのビールを飲み比べるのも面白いものです。
クラフトビールは多様で、それゆえさまざまな料理に合わせて楽しむことができるのも特徴です。
(3)コミュニケーション
①大手メーカーのビールは属人的ではない
大手メーカーのビールはいろいろな工場で造られ、何人、何十人ものスタッフが関わっていますし、誰が造ったのかは重要視されません。
大手メーカーのコンテンツは属人的で無いことが重要です。たとえるなら「誰が書いた記事か」ではなく「どの媒体に載っている記事か」で見てもらわないといけません。
②クラフトビールは醸造家や醸造所の個性がポイント
その点、クラフトビールは、小規模だということも含め、醸造家と顧客の距離が近く、コミュニケーションが取りやすいのが特徴と言えるでしょう。
コミュニケーションによって、味が変わるわけではありませんが、ビールを楽しむという点においては、生産者とのコミュニケーションがポジティブに働くことは大いにあります。
クラフトビールに関してはマーケティングよりも醸造家や醸造所の個性がポイントで、それをどうデザインするか、伝えるかも重要です。
ビールでは無く、醸造所という単位で考えるのであれば、大手メーカーが望むのは「loyalty(忠誠)」で、クラフトビールを醸造しているブルワリーが望むのは「friendship(友好)」という違いもあります。
3.「地ビール」との違い
地ビールブームの時には、ビールの醸造所は増えましたが、主にドイツスタイルの数種類のスタイルを生産する醸造所が多く、スタイルに関して多様性が広がった感は少なかったです。
現在、「地ビール」ではなく、「クラフトビール」として広がりを見せているのも、多様性という要因があるようです。
最近は大手メーカーが「ビールの多様性=クラフトビール」ということを打ち出しつつ、いろいろなスタイルの商品を販売しています。消費者として、スーパーやコンビニで、いろいろなスタイルのビールを安定的に買えるのは喜ばしいことです。
ただ、それをクラフトビールだと言うのは、少し違うようです。