私たちの生活で日々目にする雲ですが、なぜ白く見えるのでしょうか?
雲自体が白い物体でできているわけではありません。
空の色に関しては前に「空はなぜ青色なのか? 空の色の不思議(その1)」「日の出や日没の空はなぜ赤色に見えるのか?空の色の不思議(その2)」「薄明の焼け空・ブルーモーメント・ビーナスベルトとは? 空の色の不思議(その3)」という記事を書きましたが、原理的には空の色と同じ「光の乱反射」です。
そこで今回は、晴れや曇りの日の雲が白く見える理由をわかりやすくご紹介したいと思います。
1.雲の成分は水と氷の粒の塊
そもそも雲は「 雲粒(うんりゅう、または、くもつぶ)」と言われる微小な水と氷の粒 が集まってできています。この雲粒の大きさは直径約数μmから10μm程度と言われています。
もし、上昇流や空気の移流によってこの雲に新たな水の供給があると、雲粒同士が衝突し大きくなり、やがて雨粒(直径約1mm程度)になります。
これが重力の作用によって地上に落ちることで、我々は雨と認識するわけです。
2.晴れや曇りの日の雲の色が白く見える理由
雲の色が白く見えるのは、太陽光が雲に入射する際の「光の散乱現象」が影響しています。
「光(可視光線)がその波長よりも大きな分子に当たった時に起こる散乱」のことを「ミー散乱」といいます。(ドイツの物理学者グスタフ・ミーが発見したので、このように呼ばれます)
ちなみに、「光の波長よりも小さいサイズの粒子による光の散乱」のことは「レイリー散乱」と言います。これは空の色が青く見える理由のところで説明しました。
先ほど、雲は微小な水と氷の粒でできているといいましたが、これらは数十マイクロメートル程度の大きさです。
光の波長はそれよりも100分の1程度小さいため、大きな粒に当たった光は波長の長さにかかわらず均一に散乱します。この均一に散乱するというのがポイントです。
「ミー散乱」が起こるということは、この七色の光が四方八方に飛び散る(散乱する)わけです。
私たちの目はモノが青く見えるときは青色の光が、赤く見えるときは赤色の光が強く目に届いています。
白く見えるときは様々な色の光が目に届いているときです。そのため太陽光が雲に当たって散乱が起きると、雲は白く見えるのです。
太陽の光には、虹に代表されるように「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」の七色の光が混ざっています。
絵具で様々な色を混ぜると最終的は黒になりますが、光は性質上、様々な色を混ぜると白色になります。これが、雲が白く見える理由です。
なお、色と光の性質については、「光の三原色と色の三原色の違いとは?わかりやすく紹介します!」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。
次に、太陽光に含まれている様々な色の光は、それぞれ波長の長さが異なっており、寒色系(紫や青)になるほど波長が短く、暖色系(赤、オレンジ)になるほど波長が長くなります。
光が空気中を通過するとき、大気の分子や雲内の雲粒に衝突することによって散乱が起きます。
まず、光が単に地球大気を通る時を見てみましょう。この場合、光は大気中に含まれる 非常に小さい窒素分子や酸素分子とだけ衝突 します。
そのため、波長が小さい青系の光は散乱され広範囲に広がりますが、波長が長い赤系の光はほとんど散乱せずに透過します。これにより、空は青色に見えます。
一方、雲は水や氷でできた「雲粒」によって構成されています。
雲粒は直径約数μmから10μm程度と定義されていますが、成長段階だと100μm程度になっているものも存在します。
この大きさは、地球大気に含まれる窒素分子や酸素分子に比べ、非常に大きいため、光の散乱の特性も変わってきます。
下の図を見てください。左は光が地球大気を通過する際の様子、右は光が雲を通過する際の様子です。
光が地球大気を通過する場合は、波長の短い青い光のみが散乱され空は青く輝きますが、光が雲を通過する場合は、雲粒の大きさが比較的大きいため、波長の長い赤い光も含め、可視光域のほとんどの光が散乱されることになります。
可視光域のほとんどの光が全方向に散乱されることによって、様々な色の光が混ざり雲が白色に見えるという理屈です。
なお「雲」の種類については「雲は最も日常的で身近な自然だが、眺めていると太古の昔に立ち返る気分になる」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。