皆さんは山登りの経験はあるでしょか?
関西であれば六甲山(931.6m)・愛宕山(924m)・伊吹山(1,377m)、関東であれば高尾山(599.3m)などに登ったことのある方は多いと思います。
1,000m前後の山の場合は空気が薄くなったと感じることはあまりありませんが、富士山(3,776m)や北アルプス・南アルプスの3,000m級の山に登ると空気が薄くなったと実感します。私は「立山黒部アルペンルート」という観光コースで立山に登りました。
エベレスト(8,848.86m)などでは「高山病」にかかる人も多いですね。
86歳の三浦雄一郎氏(1932年~ )は南米最高峰の「アコンカグア(6,960.8m)」に挑戦しましたが、2019年1月21日、登頂を「断念」しました。アコンカグアは登頂成功率30%の難関です。
80歳でエベレスト登頂に成功(3度目)した三浦雄一郎さんでさえ、大変苦しそうでした。
ところで、山に登るとなぜ空気が薄くなるのでしょうか?
今回はこれについてわかりやすくご紹介したいと思います。
1.山に登ると空気が薄くなる理由
「空気が薄い」とは、大気圧が下がって空気の密度が低くなることを指します。つまり、同じ体積の中にある空気の量を標高の高い所と低い所で比べると、標高の高い場所の方が気圧が低く、空気の量が少ないのです。
「空気」とは、主に窒素・酸素などの気体によって構成されている混合気体のことです。空気は、地球の大気圏の下層部分を構成している気体になります。
空気を構成している気体のほとんど(約99%)を占めているのが窒素と酸素で、
他の約1%の中にアルゴンや二酸化炭素など数多くの気体が含まれています。
空気についての詳細な気体構成は下図のようになります。
空気を構成している気体は上図のような構成になりますが、人間などの生物が生きていくために必要なのは空気中の「酸素」になります。
酸素は人間などの生物が動くために必要なエネルギーになるので、十分に酸素を体内に取り入れることができないと酸欠状態になり体の機能が低下します。
上図のように、空気に含まれる酸素の割合は一定なので、空気の密度が低ければ酸素の量も少なく、その場所にいる人は息苦しく感じるというわけです。
山登りのときは標高の低いふもとから頂上へゆっくり登っていくので、登山者にかかる大気圧も徐々に下がっていきます。そのため、大気圧の変化を感じるのは難しいかもしれません。そこで、大気圧が低いことが一目で分かる例を紹介しましょう。
「山登りに持って行ったお菓子のポテトチップスを頂上で取り出したら、袋がパンパンに膨らんでいた」という体験をしたり、映像や写真で見たりしたことがあるのではないでしょうか?
あの膨らんだ袋が、標高の高い所は低い所より大気圧が低いという証拠です。袋を膨らませているのは、空気です。袋の口は閉じられていますから、袋の中の空気の量は、麓でも頂上でも変わりません。それなのに袋が膨らむのは、袋を外から押す力、つまり大気圧が小さくなったからです。
2.高い山ほど気圧が低くなる理由
大気圧は緯度によって少しずつ変わりますが、標高0mでは約1,013hPa(1気圧)だとされています。それが、10m高くなるごとに約1hPaずつ下がっていきます。富士山の高さは3,776mで、頂上の大気圧は約630hPa。エベレストの高さは8,850mで、頂上の大気圧は約300hPaまで下がります。
では、標高の高い所ではなぜ、大気圧が低くなるのでしょうか?
それは、上に積み重なっている空気の量が少ないからです。大気圧は、その上にのっている空気の重さを受けてはたらく力ですから、空気の量が少なければ、圧力も低くなります。
このことは、「水圧」に置き換えて考えるとイメージしやすいでしょう。
「水圧」は、水中の物に水がおよぼす力です。10m潜るごとに水圧が約 1気圧ずつ上がっていき、水深が1万m以上のマリアナ海溝の底では水面の1,000倍に達します。深い所ほど水圧が高いのは、その上にある水の量が多いためです。
私の個人的な体験ですが、風邪気味なのにプールで泳いでいた時のことです。息継ぎのタイミングが合わず、誤ってプールの水を飲んで咳込んだあと、息を吸い込もうとしましたが、胸が強く圧迫されるような大変な水圧を感じて息が出来なくなり、死にそうになったことがあります。
3.平地で人間の体やポテトチップスの袋がペチャンコにならない理由
我々人間の体も、平地では1,013hPaの圧力(大気圧)をあらゆる方向から受けながら生きています。
このままだと人間の体は大気圧によってペチャンコになってしまいそうです。
しかし人間の体がペチャンコにならないのは、体の内側から大気圧と同じ力で押しているからなのです。
ポテトチップスの袋も同じように内側から押して形を保っているわけです。