日本語の面白い語源・由来(わ-①)我儘・渡りに船・吾亦紅・ワクチン・分かる・惑星・割り勘

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我儘

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.我儘/我が儘(わがまま)

我儘

わがまま」とは、「他を顧みず自分勝手に振る舞うこと。また、そのさま」です。

漢字で「我が儘(我儘)」と書くとおり、わがままの語構成は、代名詞「わ(我)」+助詞「が」+名詞「まま(儘)」です。

「まま」は「意のままになる」「思いのまま」などに使われる「まま」で、わがままは「自分の思い通りになること」をいいます。

そこから転じて、他を顧みることなく、自分勝手に振る舞うことを「わがまま」というようになりました。

代名詞の「わ」の部分に他の語を使った、「身がまま(身まま)」や「おのがまま」などの語もあります。

2.渡りに船(わたりにふね)

渡りに船

渡りに船」とは、「必要なものや人、望ましい条件が都合よく揃うことのたとえ」です。

渡りに船は、川を渡ろうとする時に、渡し場に都合よく船がいるというところから、必要なものが揃ったり、望ましい状態になったりして好都合なことをいうようになりました。

仏教の書物『法華経‐薬王品』にある「如子得母渡得船」が出典といわれ、古くは「渡りに船を得たる」や「渡りに船を得る」と言いました。

「船」は「舟」とも書くきます。

3.吾亦紅(われもこう)

ワレモコウ

ワレモコウ」とは、「山野に生え、秋に分枝した茎の先に赤紫色の花穂をつけるバラ科の多年草」です。

ワレモコウは『源氏物語』や『徒然草』にも見える古い名で、語源は諸説ありますが、その中でも有名な説は以下の3つです。

①キク科のモッコウ(木香)に似た香りがすることから、日本の木香の意味で「和の木香」や「吾(われ)木香」に由来する説。
②神が赤い花を集めていた時、この花が自ら「吾もまた紅なり」と申し出たという説。
③宮殿や神殿の御簾に描かれる模様の「帽額(もこう)」を割ったように見えることから。また、帽額に描かれる家紋の「木瓜紋(もっこうもん」を割ったように見えることから。

葉茎に香気はありますが、それほど強い香りとは言えず、ワレモコウは外見の方が特徴的なので、①の説は「吾木香」の漢字が当てられた由来と考えるのが妥当です。

「吾亦紅」と表記するのは近世以降のことなので、②の説は漢字の「吾亦紅」を基に作られた俗説です。

なお、吾木香や吾木香のほか、ワレモコウには吾妹紅、我妹紅、我毛紅、我毛香など多くの漢字表記があります。

ワレモコウの語源は特徴的な花穂から③の説が有力と考えられますが、帽額・木瓜紋には様々な種類があり、どの模様を割ったら花穂に似て見えるのか定かではありません。

織田信長の木瓜紋を由来とする説もありますが、平安時代から見られるワレモコウの名が、織田木瓜に由来するというのは理解できません。

③から派生した説では、木瓜紋の中に「割り木瓜(わりもっこう)」の家紋があるため、帽額・木瓜紋を割ったと考えるのではなく、「割り木瓜」が転じて「ワレモコウ」になったとする説もあります。

「吾亦紅」は秋の季語で、次のような俳句があります。

・しやんとして 千種の中や 吾亦紅(八十村路通

・浅間越す 人より高し 吾亦紅(前田普羅)

・折とつて 珠のゆれあふ 吾亦紅(高橋淡路女)

・哀れにて やさし竃馬 吾木香(信徳)

4.ワクチン/vaccine

ワクチン

ワクチン」とは、「人や動物の感染性疾患の予防接種に用いる医薬品。病原体やその毒素から作られた免疫源。また、コンピュータウイルスを検出・除去するウイルス対策ソフト」のことです。

ワクチンは、英語「vaccine」からの外来語で、「牝牛」を意味するラテン語「vacca」に由来します。

1796年、イギリスの医学者 エドワード・ジェンナーが、牛痘ウイルスを人に接種することで天然痘の予防ができることを発見しました。

その後、新種のワクチンは作られていませんでしたが、1870年代、フランスの細菌学者 ルイ・パスツールが、さまざまな感染症に対するワクチンの製造法を確立しました。

パスツールは、世界初のワクチンを発見したジェンナーに敬意を示し、これを「ワクチン」と命名しました。

ウイルス対策ソフトを意味する「ワクチン」は、ウイルスにたとえた「コンピュータウイルス」を駆除するためのソフトであることから、比喩的に用いたものです。

5.分かる(わかる)

わかる

わかる」とは、「理解できる。了解する。明らかになる。知る」ことです。

わかるは、「わける(分ける)」と同源です。
混沌とした物事がきちんと分け離されると、明確になることに由来します。

わかるに似た意味をもち「分ける」に通じる言葉には、「理解」「区別」「判別」「分別」「ことわり・ことわる」「わきまえる」など多くあります。

漢字は「分かる」と「解る」と「判る」がありますが、わかるの様々な意味に対応できる漢字は「分かる」です。

6.惑星(わくせい)

惑星

惑星」とは、「恒星の周囲を公転する、自ら発光しない比較的大きな天体」のことです。太陽系では、水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星を指し、冥王星は2006年に準惑星に分類されました。遊星。

惑星は、「恒星」に対する語です。
規則的に動く星を「恒星」と呼ぶのに対し、惑うように位置を変えることから「惑星」と呼ぶようなりました。その不規則さから、「遊星」とも呼びます。

中国の古代天文学では、木火土金水の五行に当て「惑星」を「行星(こうせい)」と呼びました。
日本でも「行星」の使用例は見られますが、「恒星」と同音のせいか使われなくなり、「惑星」が一般的な呼称となりました。

7.割り勘(わりかん)

割り勘

割り勘」とは、「費用を人数で割り、各自が等分に出し合って代金を支払うこと。また、各自が自分の勘定を支払うこと」です。

割り勘は、「割り前勘定」の略です。

前は「分け前」や「三人前」など、それに相当する分量・金額を表す接尾語で、「割り前」は割り当てる金額の意味です。「勘定」は代金を支払うことや、その代金を意味します。

「割り前勘定」を略した「割り勘」は、大正末期頃から見られるようになります。
割り勘を考案したのは戯作者の山東京伝といわれ、「京伝勘定」とも呼ばれていました。

また、足並みを揃えるように等分に支払うことからか、いつ死ぬか分からない立場であり互いに貸し借りしないところからか、古くは「兵隊勘定」ともいいました。