1.毒舌家
(1)毒舌家とは
「毒舌家」というのは、「本音をずばっと言うけれども、その発言は決して一方的な悪意を含んでいない。そして、聞いた人の共感を呼び、笑いも誘う人」ではないかと、私は思っています。
よく年配の人から、「昔は大人が、よその子供でも、悪いことをしていたら叱った。決して憎くて怒っているわけではなく、その子供の将来のためを思って叱った。」という話を聞きます。
今なら、「よその子供を叱ったりすると、逆ギレされて、殺されることもあるご時世だから、あまりお節介な説教などはしない方がよい。」というのが現実ですが・・・
(2)時事放談
かなり前の話になりますが、政治評論家の細川隆元(たかちか)さん(「りゅうげん」と読まれることも多い)が毒舌家として有名でした。新聞記者出身で、衆議院議員も務めた方です。
彼が、小汀利得(おばまとしえ)さん(「りとく」と読まれることも多い)や藤原弘達(ひろたつ)さん(「こうたつ」と読まれることも多い)と対談する「時事放談」という番組は、私も好きでよく見ていました。
歯に衣(きぬ)着せぬ毒舌で、当時の政治家たちをこき下ろす姿は、見ていてとても痛快でした。
2.毒舌キャラ芸人・タレント
さて、最近「毒舌キャラ」を売り物にするタレントが多くなってきましたね。梅沢富美男さん、坂上忍さん、ヒロミさん、有吉弘行さん、太田光さん、上田晋也さん、マツコ・デラックスさん、デヴィ夫人・・・
しかし、私の好きな「毒舌キャラ」芸人は、ちょっと古いですが次のおふたりです。今風の毒舌キャラとは一味違う、「愛すべき毒舌家」たちです。
(1)綾小路きみまろさん
有名なキャッチフレーズ「潜伏期間30年」の遅咲きの漫談家・お笑いタレントです。
元々は、歌舞伎町のキャバレーで、春日八郎、ディックミネ、淡谷のり子、殿様キングスらの歌手を紹介する司会者からスタートし、日劇で森進一、小林幸子、伍代夏子らの司会をするようになった由。
意外なことに、彼は五代目鈴々舎馬風の門下で、「落語協会」の会員でもあるそうです。
確かに、彼の皮肉たっぷりの毒舌漫談には、落語的要素も垣間見えますね。
団塊世代の1歳下ですが、ほぼ同年代なので、「中高年の悲哀」「人生の悲哀」をユーモアたっぷりに、ちょっぴり山葵(わさび)を利かせて語る漫談は、共感するところが多いのです。
「過去と現在との差に愕然とするネタ」の間に入れる「あれから40年」というフレーズや、ライブの最後の「一言多かったことをお詫び申し上げます。」というのも、いかにも彼らしいと思います。
「サラリーマン川柳」にも似た味わいで、「中高年エレジー漫談」とでも言うのでしょうか?
彼が偉いところは、「ネタ帳」をたくさん持っていることです。これは、日頃面白いと思ったことを書き留めておいて、それをネタにするのです。
(2)毒蝮三太夫さん
毒蝮三太夫さんは今年82歳で、団塊世代の一回り上の世代ですが、元々は「鐘の鳴る丘」という演劇で「戦争孤児役」として役者デビューしたそうです。「ウルトラマン」というテレビドラマにも出演していました。
かねてからの知り合いであった七代目立川談志さんに誘われて、日本テレビの「笑点」の二代目「座布団運び」もやりました。
年配者相手に、「じじい」「ばばあ」といった毒舌トークをしますが、嫌みがなく笑えるので、「おばあちゃんのアイドル」「巣鴨のスター」との異名を持っているのでしょう。宜(むべ)なるかなです。
最近の「毒舌キャラ」タレントは、「バラエティー番組で毒舌が受ける」ということで、殊更に「毒舌」を強調しすぎて、外連味(けれんみ)たっぷりなように思うのですが、皆さんはどう思われますか?