1.AI化で47%の仕事がなくなる?
2013年に発表された研究論文で、オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授は、「今後10年~20年の間に、47%の仕事がAI・ロボットなどの機械に取って代わられる」と大胆な予測をしました。
これは、彼が米国労働省のデータに基づいて、702の職種が今後どれだけコンピューター技術によって自動化されるかを分析した結果だそうです。
2.AI化でなくなる仕事
主な「消える職業」「なくなる仕事」のリストには次のような職種が載っていました。
「銀行の融資担当者」「スポーツの審判」「不動産ブローカー」「レストランの案内係」「保険の審査担当者」「動物のブリーダー」「電話オペレーター」「給与・福利厚生担当者」「レジ係」「金融機関のクレジットアナリスト」「建設機器のオペレーター」・・・
このリストを見て、衝撃を受けた方も多いのではないでしょうか?
3.AI化で完結できるのか疑問
ただ、仔細に見て行くと、果たして全てAIで完結できるのか疑問の余地があると私は感じました。
たとえば、「銀行の融資担当者」ですが、決算書の数字を簡単なスコアリング形式で判定して、少額の融資の可否を判断する程度であれば「AI」でも可能でしょうが、「巨額融資」や「粉飾決算の有無」「経営者の人物・経営手腕がどうか」の判定といった点なども含めた総合的判断は、やはり「AI」では限界があるように思います。
「スポーツの審判」にしても、「奈良判定」などがまかり通るのは絶対に許せませんが、「技術点」(*)はともかくとして、「芸術点」などは「AI」には無理なような気もします。
(*)体操の「技術点」については、いろいろな角度からとらえた立体映像で、AIが精密な採点を出来るめどがついたので、2020年の東京五輪には、人間の審判の補助としてAIが採用されることになったとのニュース報道がありました。他の競技についても順次開発を進めているそうです。
4.危険な場所での作業には「ロボット」を積極的に活用すべき
しかし、人間が被ばくする恐れのある放射能汚染個所などの危険な場所での作業や、壁面や高所・狭所・海底などでの作業など、人間の作業が難しい場所では、「スパイダーマン」「ドローン」や「海底探査ロボット」のような「ロボット」を積極的に活用して行くべきだと思います。
5.あくまでも「人間が主役」で、AIは補助ないし補完する存在
あくまでも、「主役は人間」であり、「人間を補助ないし補完する存在がAI」だということを忘れてはならないと思います。
かつて、産業革命で人間の仕事が奪われると思った労働者たちが機械を打ちこわし破壊する運動を起こしたことがあります。
これは、「ラッダイト運動」と呼ばれるもので、1811年~1817年ごろにイギリス中・北部の織物工業地帯で起こった機械破壊運動です。産業革命に伴う機械普及により、失業の恐れを感じた手工業者・労働者が起こした「産業革命に対する反動」であり、「労働運動の先駆」とも言われています。
このような愚に陥らないように、「AI」の限界も見極めて、しっかりと冷静にAI化を受け止める必要があると思います。「AI」の活用は悪いことではないのですが、それに頼り過ぎて、プロの職業人が本来持っているべき能力、たとえば上の「銀行の融資担当者」の例で言えば、「決算書の分析力」や「企業の将来性の分析力」「経営者の資質・経営手腕を見抜く眼力」が落ちてしまっては元も子もありません。
ただ、一方で、「AI」の技術はどんどん進化しているようです。囲碁や将棋のプロとAIが対戦するというデモンストレーションが行われていて、2013年には、アメリカのGoogle社が開発した「AlphaGo」という名のAIソフトが、韓国のイ・セドル九段に初めて勝利するという「快挙」がありました。
またつい最近、「AI」技術を活用した「詐欺の架空請求はがきを、瞬時に見破って撃退できるスマホアプリ」が開発されたというニュースがありました。埼玉県の川目武彦弁護士らが開発したもので、アプリ名は「Scam Detector(スカム ディテクター)」です。
「身に覚えのない請求書やはがきなどをスマホで写真撮影してアプリで送信すると、過去の詐欺事案で使われた文面などのデータを蓄積したAIが数秒間で判定し、「架空請求の可能性が濃厚です!」などと表示するとのことです。
6.AIと自動化の違い
蛇足ですが、「AI」と「自動化」の違いは、「AI」が「人間の思考をシミュレートできるように設計されている」のに対し、「自動化」は「あらかじめプログラミングされた規則に従っているだけ」ということです。
したがって、「AI」は、長年にわたって作り上げられた囲碁の膨大な定石を全て記憶した上で、色々な局面でどういう手が有効かということを高速でシミュレーションして学習し、蓄積しているからプロにも勝つことが出来るようになったというわけです。