「ゴーストライター」の新垣隆氏は、嘘で塗り固めた佐村河内守氏告発で有名に!

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ゴーストライター

1.音楽業界のゴーストライター

2014年に、「耳の聞こえない作曲家」として売り出していた佐村河内守(さむらごうちまもる)氏(1963年~ )が、「実際は自分で作曲していないこと、また言われるほど聴覚障碍がないこと」を、彼の「ゴーストライター」である作曲家・ピアニストの新垣隆(にいがきたかし)氏(1970年~ )が告発して、レコードと本が出荷停止される事件がありました。

この事件は、通常は表に出ない「ゴーストライター」が公になったことでも大変注目を集めました。

「ゴーストライター」について、新垣氏は次のように語っています。

私はお金とか名声が欲しいのではありませんでした。佐村河内の依頼は現代音楽ではなく、調性音楽でしたから、私の仕事の本流ではありません。彼の申し出は一種の息抜きでした。あの程度の楽曲だったら、現代音楽の勉強をしている者なら誰でも出来る。どうせ売れるわけはない、という思いもありました。自分が作曲した作品が、映画音楽であれゲーム音楽であれ、多くの人に聴いてもらえる。その反響を聞くことが出来る。そのことが純粋に嬉しかったのです。

「代作の実態」については、次のように語っています。

彼は実質的にはプロデューサーだった。彼のアイデアを実現するため、私は協力した。彼が依頼し、私が譜面を作って渡すという、そのやり取りだけの関係。彼と私の情熱が非常に共感し合えた時もあったと思う。

新垣氏が告発に踏み切った理由は、はっきりしていませんが、私は「金銭問題」と「佐村河内氏が障害や作曲手法のことなど嘘で塗り固めて名誉を得ていることに対する正義感からの反発」ではないかと思っています。

佐村河内守氏は、自ら嘘をついて名誉を得ていたことへの当然の報いですが、世間からは激しい非難を浴び、音楽界からも抹殺されたようです。一方新垣隆氏は、結果的にこの告発事件で有名になり、テレビにも出演するなどタレントのような活躍を見せています。「人間万事塞翁が馬」のような話です。

作曲家の伊東乾氏は、この事件の解説で次のように述べています。

日本の音楽業界では、映画やテレビドラマなどの『機会音楽』から、オペラのようなものに至るまで、トップの名前で仕事を取ってきて、時間がないためスタッフが手分けして作曲作業し、スタッフには買い取りでギャランティを払っておしまい、クレジットや著作権登録はトップの名前というケースは山のようにあります」また、「ここから先は、すでに人口に膾炙したミュージシャンも多数関わっていることなので、一切の実名を避けてお話しせざるを得ません」と前置きした上で、「アンカーはずっとアンカー、つまり裏方のまま30歳、40歳と年を重ねてしまうこと、また、若い世代に人材が出ると古い人は仕事が減るといった、アシスタント食いつぶしの状況が見られる

2.小説界を含む出版業界のゴーストライター

これは、私が「マスコミ関係者」から聞いた話なので、真偽のほどは保証の限りではありません。山崎豊子氏(1924年~2013年)の「ゴーストライター」にまつわる話です。

山崎豊子氏は、私の大好きな作家の一人です。彼女は元毎日新聞の記者ですが、新聞記者らしく綿密な取材を重ね、それを基にして壮大な構想を練り上げあの魅力的な小説に仕上げて来ました。

彼女には長年にわたる「有能な秘書」の女性がいて、彼女の取材や資料の整理、タイプなど全面的にサポート出来る人でした。

この秘書は、長年にわたるサポートの結果、彼女がどういう筋立て・展開をするかとか文体も熟知していて、「ゴーストライター」の資格十分だった訳です。

全ての作品ではないでしょうが、また一つの作品の一部分かも知れませんが、この秘書が「ゴーストライター」を務めていたという噂があるということです。

山崎豊子氏と秘書との間にも、「処遇面の不満」や「金銭トラブル」があって、それがマスコミ関係者にも聞こえて来たようです。

ビジネス書や実用書では、ゴーストライターの起用が当然となっているのが出版業界です。近年は小説でもゴーストライターを使う例が見られるようになったそうです。

本人が話したことを一言一句そのまま書かせる「口述筆記」から、本人の書いた文章を読みやすく加除訂正する「編集・リライト」もあれば、ほとんど書下ろしに近い「代筆」まで、様々なケースがあります。

執筆の実作業を担った人物に対して謝辞その他の何らかの形で名前が出る場合もあれば、全く出ないことも少なくありません。「構成」や「協力」「編集協力」など、一見するとあいまいな名目で本の扉の裏側や目次の最後や奧付の前など目に付かない形で名前が出る場合もあります。

ゴーストライターが勝手に名乗りを上げることは、出版業界のモラル上の大きなタブーとされていますが、ゴーストライターがゴースト以外の作品で成功した場合、その名前を表に出してゴースト時代の作品が復刊されることもあります。

「著者」の態度は、人によって様々で、ゴーストライターに手伝ってもらったことを公にする人から、追及されない限り黙っている人や、あくまで自分で書いたかのように振舞う人も多いそうです。

余談ですが、東野圭吾氏(1958年~ )の「悪意」は、「ゴーストライターによる作家殺害」を扱った推理小説です。これには「大どんでん返し」があるのですが、ネタバレになるのでここでは書きません。なかなか面白い小説ですので、興味のある方はご一読ください。

3.私の仕事もゴーストライターのようなもの?

私は2019年6月まで、派遣社員の仕事をしていました。そこで「担当者」の仕事の「アシスト」をしていました。具体的には、過去の資料や担当者の折衝記録なども読み込み、それも参考にしながら「起案書類」の「下書き」や資料の検索・プリントアウトをしていました。

もちろん、担当者が目を通して文案を修正したりすることはありましたが、一応「完成した起案書類」として仕上げていました。そういう意味で「ゴーストライター」だったと言えるかも知れませんね。


音楽という<真実> [ 新垣 隆 ]


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