「炭」「ジャケット」「玉霰」「大晦日」「咳」「小春」など冬の面白い季語

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火鉢と炭

1.炭(すみ)

松阪牛・和田金

炭と言っても、最近はあまり見かけませんが、先日松阪牛で有名な「和田金」に行った時、炭火ですき焼きを頂きました。

人気アニメ「鬼滅の刃」の主人公は「竈門炭治郎(かまどたんじろう)」という名前ですが、「竈(かまど)」も「炭(すみ)」も今では身近なものでなくなりました。

「炭」とは、木炭のことで、楢(なら)・櫟(くぬぎ)・栗・樫(かし)などを炭焼竈で蒸焼にした燃料用材です。

樹木に水気の乏しい冬季が炭焼の季節であり、炭を焼く白い煙には山里の風情があります。現在は主に料理や茶の湯などで用いられるだけですが、かつては冬の暖房用として欠かせないものでした。

子季語・関連季語には、「木炭(もくたん)」「黒炭(こくたん)」「炭の香」「備長(びんちょう)」「鞍馬炭」「小野炭」「佐倉炭」「炭納屋(すみなや)」などがあります。

例句としては、次のようなものがあります。

・学問の さびしさに堪へ 炭をつぐ(山口誓子

・いざ子ども はしりありかん 玉霰(松尾芭蕉

・朝晴れに ぱちぱち炭の きげんかな(小林一茶

・美しき 姿崩れず 炭の尉(すみのじょう)(*)(瀧井孝作)

(*)「炭の尉」とは、「炭火の白い灰となったもの」のことです。清少納言の「枕草子」にも「昼になりて ぬるくゆるびもていけば 炭櫃火桶の火も白き灰がちになりてわろし」とあります。

2.ジャケット

ジャケット

「オーバー」や「コート」なら冬の真っ最中の服装ですが、「ジャケット」は少し寒くなって来た時に、セーターの上などに着て暖かくするもので、季節感を重視する俳句ならではの季語だと思います。

子季語・関連季語には、「ジャケツ」「ジャンパー」などがあります。

例句としては、次のようなものがあります。

・厚ジャケツ 一枚着足す 国境(くにざかい)(鈴木栄子)

・屑買ひは 青空仕事 紺ジャケツ(香西照雄)

・ジャケツ真赤く 縄飛は まだ出来ず(冨安風生)

・跫音(あしおと)高し 青きジャケツの 看護婦は(石田波郷)

3.玉霰(たまあられ)

玉霰

「玉霰」は、「霰」の美称で、雪の結晶に雲の水滴が付着してできるもので、白く小粒の玉となって降って来ます。

気温の冷え込む朝夕に多く見られます。地を跳ね、軒を打ち、さっと降ってすぐにやむさっぱりと潔いものです。

「雪霰」と「氷霰」がありますが、どちらも粒々は丸くて美しいものです。「玉霰」などと愛でられる所以(ゆえん)です。

子季語・関連季語には、「初霰」「夕霰」「雪あられ」「氷あられ」「急霰(きゅうさん)」などがあります。

例句としては、次のようなものがあります。

・石山の 石にたばしる あられ哉(松尾芭蕉)

・玉あられ 鍛冶が飛火に まじりけり(久村暁台)

・夕霰 ねんねんころり ころり哉(小林一茶)

・鉄鉢の 中へも 霰(種田山頭火

4.大晦日(おおみそか/おおつごもり)

大晦日

「大晦日」は、言うまでもなく12月31日のことですが、「晦日」は三十日とも書き、月の三十番目の日で、転じて月の末日を指すようになりました。

なお、「大晦日」前日の12月30日は、「小晦日」と書いて「こつごもり」と読みます。

昔は「節季払い」と言って、勘定の締め括りをするのが、盆と暮れの二回でした。特に暮れは庶民にとって大変だったようで、井原西鶴の浮世草子「世間胸算用」や落語の「掛取万歳」「尻餅」にも登場します。

子季語・関連季語には、「大三十日(おおみそか)」「大歳(おおどし)」「除日(じょじつ)」「大年(おおとし/おおどし)」などがあります。

例句としては、次のようなものがあります。

・大晦日 定めなき世の さだめ哉(井原西鶴)

・大年も 雀の遊ぶ 垣ホカな(杉山杉風)

・鶴おりて 日こそ大きに 大晦日(宝井其角)

・侘しさや 大晦日(おほつごもり)の 油売り(河合曾良)

5.咳(せき)

咳の子

「咳」は、寒さや風邪などの病気により、喉や気管に刺激を受けて短く強い息が起こるもので、身体の防御反応の一つです。

2020年のコロナ禍発生以降、多くの人が過敏なほど用心するようになってきました。

湿った咳や乾いた咳などさまざまな咳がありますが、激しく咳き込む姿は傍目にも辛いものです。

子季語・関連季語には、「しはぶき」「咳(せ)く」などがあります。

例句としては、次のようなものがあります。

・咳の子の なぞなぞあそび きりもなや(中村汀女)

・咳止んで われ洞然と ありにけり(川端茅舎)

・思ふこと 多ければ咳 しげく出づ(日野草城)

・咳をしても 一人(尾崎放哉)

6.小春(こはる)

小春日和

「小春」(小春月)は、陰暦10月の異称です。

冬囲いに精を出したり、越冬野菜を取り入れたり、大根や柿を吊るし干しにしたりして、本格的な冬に備える頃の日和です。

まだ本格的な冬とはならず、暖かい日和が春先の陽気を思わせますが、春とは区別して「小春」と言います。

さだまさしが作詞・作曲して山口百恵に提供した「秋桜」に「こんな小春日和の穏やかな日は あなたの優しさが浸みて来る」というフレーズがあるので、「秋」の季語と思っている方が多いかもしれませんが「冬」の季語です。

これは「旧暦と新暦の季節感の違い」が原因です。

子季語・関連季語には、「小六月(ころくがつ)」「小春日(こはるび)」「小春日和(こはるびより)」「小春空(こはるぞら)」「小春風(こはるかぜ)」「小春凪(こはるなぎ)」などがあります。

例句としては、次のようなものがあります。

・月の鏡 小春に見るや 目正月(めしょうがつ)(*)(松尾芭蕉)

(*)「目正月」とは、美しいものを見て目が楽しむことで、「目の正月」「目の保養」とも言います。「秋の穏やかな日に、鏡のように澄んだ月を見るのは目の正月だ」という句意。

・古家の ゆがみを直す 小春かな(与謝蕪村

・草山の 重なり合へる 小春哉(夏目漱石)

・小春日の あり余る日の 影を恋ふ(稲畑汀子)

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