最近、実の親が子を虐待したりする事件が後を絶ちませんが、時々父母や祖母が子供や孫の乳幼児を激しく揺さぶる虐待をして死亡させたという事件があります。
私は、「育児ノイローゼ」か「行き過ぎたしつけ」なのかと思いましたが、「乳幼児」ですので少し違和感がありました。
また「継父母」による「継子(ままこ)いじめ」は昔からありましたし、今もあると思いますが、「実の父母・祖父母」が子供や孫を虐待するというのは、普通は考えにくいことです。
1.乳幼児揺さぶられ症候群死亡事件の「冤罪」発覚
最近、その中に「冤罪」があることがわかって来ました。医師の鑑定で、「乳幼児を激しく揺さぶったことによる死亡としか考えられない」とされてきた症状が、虐待によるものではなく、実は別の原因による突発的な病死の可能性が出てきたのです。
2.「乳幼児揺さぶられ症候群」とは
「乳幼児揺さぶられ症候群(Shaken Baby Syndrome)」とは、赤ちゃんが激しく揺さぶられることによって起こる症状で、脳が傷ついて重い後遺症が残ったり、死亡したりすることがあり、虐待によることが多いとされています。
この「SBS」が広まったのは、1971年にイギリスの小児神経外科医が「頭部外傷がなくても、揺さぶりによって乳幼児の硬膜下血腫が生じる可能性がある」と発表したことが始まりです。
この説を受けて、80~90年代にかけてアメリカで「3つの症状(頭部内の出血である硬膜下血腫・眼球内部の出血である網膜出血・脳浮腫)があり、他に原因が発見できない場合には、揺さぶられたことにより死亡、障害が生じたと推定できる」というSBS理論が定着しました。
「揺さぶられっ子症候群は危ない」という議論は、次第に「養育者が揺さぶりによって加害を加えたものと推定できる」として虐待に結び付けられていったそうです。
しかし、日本の動きとは反対に、海外では90年代以降、「揺さぶり以外によっても3つの症状は生じるのではないか」という「SBS理論への疑念」が提起されるようになって来ました。
3.医師の「鑑定の正確性」の問題
しかし、弁護側の努力によって、「揺さぶり以外による死亡の可能性がある」ことが証明されました。それは脳神経外科の専門医が死亡した乳幼児の脳の画像を見て、「どうしてこれを『乳幼児揺さぶられ症候群』と判断したのか首を傾げる」と話したことからわかってきたのです。
二審の「逆転無罪判決」では、一審で「乳幼児揺さぶられ症候群」による死亡とされたことにつき、別の原因による死亡の可能性を指摘しました。また「養育者による加害(虐待)に間違いない」と鑑定(断定)した小児科の医師が、「脳の画像を正しく見分ける知識があったか疑わしい」とも指摘しました。
前に記事に書きましたが、私も個人的に「医者の誤診」でひどい目にあったことがあります。
4.警察・検察の「見込み捜査」の問題
また、警察・検察の「見込み捜査」も問題です。常識的に考えて、実の父母や祖父母による乳幼児虐待というのは、めったに考えられないことであるにも拘わらず、医師の安易な鑑定(断定)で、養育者を犯人と決めつけた捜査をしていた疑いがあります。
一般の犯罪捜査では「動機」が非常に重要視されているように見えますが、「養育者の虐待」のように動機がなかなか見つけにくい事件でいとも簡単に冤罪が生まれるとは恐ろしい気がします。
これは「本当は真犯人が別に存在する冤罪事件」ではなく、医師の鑑定と警察・検察の見込み捜査が作り上げた「本当はありもしない架空の事件(言わば『でっち上げの事件』)による冤罪事件」であり、本当に空恐ろしいことです。
このような捜査がまかり通れば「暗黒の司法」と言われても仕方がないと思います。