「伊吹山(いぶきやま)」と言えば、古事記や日本書紀で、「日本武尊(ヤマトタケルノミコト)」が伊吹山の神を倒そうとして、逆に返り討ちに遭ったと伝えられる山です。
私は、仕事で東京へ出張する時は、北側の窓際の席を指定して、伊吹山と富士山を眺めるのを楽しみにしていました。
車窓から間近に聳える伊吹山は石灰石の採掘の結果、山肌の露出している部分が多い山ですが、山頂の「お花畑」には高山植物が見られます。
昔は自由に歩き回ることが出来たのですが、今は「遊歩道」が作られ、柵が設けられていますので、尾瀬などと同様に遊歩道からしか眺められないのは少し残念な気もします。
1.伊吹山とは
標高1377mの伊吹山は、滋賀県米原市と岐阜県揖斐川町・関ケ原町にまたがる伊吹山地の最高峰で、滋賀県の最高峰でもあります。
(1)石灰石
伊吹山は約3億年前に噴火した「海底火山」で、地層には約2億5000万年前の「古生代」に海底に堆積した石灰質の層が含まれているため、中腹より上部には石灰岩が広く分布しています。
石灰石の採掘は、江戸時代から始められ、現在も私たちの生活に欠かせないセメントの原料とするため採掘が続けられています。一方、採掘跡の「緑化復元」工事も並行して進められているそうです。
(2)「日本武尊(ヤマトタケルノミコト」の伝説
日本武尊が東国征伐の帰途、伊吹山に荒神がいると聞いて、荒神を征伐するため伊吹山に登りましたが、山頂近くで大きな白い猪が現れたため、弓矢で威嚇して前に進みましたが、急に毒気に当たり、気を失って倒れてしまいます。
実は大きな白い猪は荒神の化身で、日本武尊はその怒りに触れたのでした。家来が彼を背負って麓まで退却し、清水が湧くところで冷水を飲ませると、たちまち目覚めたということです。
ここが「醒ヶ井(さめがい)」で、「醒ヶ井の水」は「日本百名水」の一つに数えられています。初夏にはこの地の透き通った小川に「梅花藻(バイカモ)」が美しい花を咲かせます。
2.伊吹山のトレッキング
(1)日本百名山
1964年に、随筆家で登山家の深田久弥氏(1903年~1971年)によって「日本百名山」に選定されると、「百名山ブーム」もあり、登山対象の山として全国的に知名度が高まりました。1965年に「伊吹山ドライブウェイ」が開通し、9合目まで容易に登れるようになり、山頂は観光地化しました。
以前、私は「ロープウェイ(伊吹山ゴンドラ)」に乗って3合目まで行ったこともあります。ちょうど「六甲ケーブルカー」に乗って神戸の下界を見下ろすのと同様に、滋賀県ののどかな田園風景を見ることが出来ました。しかしこの「ロープウェイ」は利用者の減少のために「廃業」となったようです。
(2)花の百名山
1980年に、脚本家・随筆家で山の花をこよなく愛する田中澄江氏(1908年~2000年)が「花の百名山」という本を書き、花の美しい山を紹介しましたが、伊吹山もその一つに選定されています。
高山植物は、園芸用の花と違って、厳しい自然環境の中で密やかに、小さな可憐で美しい花を咲かせるものが多いようです。
私も、NHKのホームビデオで、「日本百名山」や「花の百名山」をよく見ました。私自身は今では膝や腰が痛くて登山は不可能ですが、今後も時々ビデオを見て楽しみたいと思っています。
皆さんも、ご興味があればぜひ「日本百名山」や「花の百名山」に登ってみてください。登山が無理な方は私と同じようにビデオで楽しんでください。