皆さんは秋に背の高い美しい房状の紫色の花をたくさん咲かせる「シオン(紫苑)」はご存知でしょう。ひょっとしたら、最近の若い世代は「見たことも聞いたこともない」という人がいるかもしれませんね。
このシオンによく似た山野草に「ハルジオン」と「ヒメジョオン」があります。これは、写真を見れば「どこかで見たことがある」という方が多いと思います。
ところで、皆さんは「ハルジオン」と「ヒメジョオン」をちゃんと区別できますか?少しマニアックな話題ですが、今回はこれについてご紹介したいと思います。
1.ハルジオンとは
「ハルジオン(春紫苑)」は、キク科ムカシヨモギ属に分類される多年草で、北アメリカ原産の「帰化植物」です。
(参考)「シオン(紫苑)」は日本原産で、キク科シオン属の多年草です。
ハルジオンはヒメジョオンと同様に道端に普通に生えている雑草です。
背丈は30~80cmで、4~5月ごろに白やピンクのシオンによく似た花を咲かせます。
ハルジオンは、1920年代に「観賞用」として持ち込まれました。1980年代に、除草剤に耐性のある個体が出現し、関東地方を中心に全国に拡大しました。農作物や牧草の生育を妨害する厄介な雑草です。また、日本の在来植物と競合して駆逐するほどの繁殖力です。
「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(略称:外来生物法)により「要注意外来生物」に指定されています。
「日本生態学会」はハルジオンを「日本の侵略的外来種ワースト100」に選定しています。
2.ヒメジョオンとは
そもそも、植物にあまり詳しくないか、関心がない方は、この植物を「ヒメジオン(姫紫苑)」だと勘違いしていることが多いようです。
「ヒメジョオン(姫女苑)」は、ハルジオンと同じくキク科ムカシヨモギ属に分類される多年草で、北アメリカ原産の「帰化植物」です。
背丈は50~150cmで、5~8月ごろに白のシオンによく似た花を咲かせます。
ヒメジョオンは、日本には1865年に「観葉植物」として持ち込まれました。明治時代には線路沿いによく生える雑草として全国的に広がったため、「鉄道草」とも呼ばれました。
しかし、在来植物の生育を妨げるほど繁殖力が強く、特に自然豊かで希少な植物が多く生息する国立公園などでは、大いに問題となっています。
「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(略称:外来生物法)により「要注意外来生物」に指定されています。
「日本生態学会」はヒメジョオンを「日本の侵略的外来種ワースト100」に選定しています。
3.ハルジオンとヒメジョオンの区別の仕方
(1)花びらの幅の違い
ハルジオンは、1mm以下の細い幅の花びらで、ヒメジョオンは、約1.5mmの幅の花びらです。
(2)茎の中が空洞か否か
茎を折って見ると、ハルジオンは中が空洞ですが、ヒメジョオンの茎は中身が詰まっています。