紫苑は秋の美しい花で和歌や俳句にも多く詠まれています。花言葉もご紹介します

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紫苑

紫苑は、私が子供のころ住んでいた古い家の庭にもありました。9月~10月ごろに薄紫色の房状の花が咲く子供の背丈以上にもなる花で、特に印象に残っています。

山の姿がくっきりとした秋の清々しい景色を表す「刻露清秀(こくろせいしゅう)」という四字熟語がぴったりの花です。

1.紫苑(しおん)を詠んだ和歌

紫苑拡大図

与謝野晶子(1878年~1942年)に、紫苑を詠んだ次のような和歌があります。

「紫苑咲く わが心より 上りたる 煙のごとき うすいろをして」

「思ひ出づや 紫苑一(ひと)もと 大ぞらの 雲より高く 立ちし草むら」

与謝野晶子といえば、「みだれ髪」の「柔肌の 熱き血潮に 触れもみで 寂しからずや 道を説く君」という情熱的でコケティッシュな歌が有名ですが、上の二首は爽やかな感じがします。

2.紫苑を詠んだ俳句

シオン

正岡子規(1867年~1902年)に、紫苑を詠んだ次のような俳句があります。

「淋しさを 猶も紫苑の のびるなり」

正岡子規は、若くして結核を患い、7年間の寝たきりの闘病生活を経て、最後は結核菌によって発症した脊椎カリエスで、34歳の若さでこの世を去りました。

根岸の自宅の病床にあって、喉に絡む痰に苦しみながらも、狭い庭を眺めて、丈の高い紫苑が更に伸び行く様を素直に写生しています。

「痰一斗 糸瓜の水も 間に合わず」という俳句が有名ですね。

3.花言葉

(1)日本での花言葉

「遠方にある人を思う」「思い出」「君を忘れない」「追憶」です。

これらの花言葉は、平安時代後期の説話集「今昔物語」の中にある次のような説話に基づいています。

また、美しい花なのに別名「の醜草(しこぐさ)」と呼ばれるのも、次の説話が由来です。

昔のこと、父を亡くした兄弟があった。兄はまめに墓参りをしていたが、やがて多忙になり墓参りに行けなくなった。兄はせめてもの慰めにと墓前に「忘れ草」(萱草・かんぞう)を植えた。

しかし弟は、「お兄さんは父を忘れても、私は絶対に忘れない」と墓前に「忘れな草」(紫苑)を植え、墓参りを欠かさなかった。

ある年、墓前の弟の前に、父の墓を守る役割のが現れた。弟の父を慕う心に感じ入った鬼は、弟に「予知能力」(予知夢を見られる力)を授けた。

それから弟は、自分の身の上に起こる出来事をはっきりと夢に見ることが出来るようになったということです。

(2)西洋・英語での花言葉

西洋では、シオン属のアスター(Aster)全般の花言葉として、「patience(忍耐)」「daintiness(優美、繊細)」「symbol of love(愛の象徴)」が挙げられています。


与謝野晶子歌集改版 与謝野晶子自選 (岩波文庫) [ 与謝野晶子 ]


正岡子規絶句集 [ 正岡子規 ]

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