1.最近の環境問題への取り組みには疑問が多い
ごみの「分別」(可燃ごみ・リサイクルごみ・不燃ごみ)収集は、日本では1975年に静岡県沼津市で始まりました。全国的に「資源ごみの分別収集」が行われるようになったのは、1991年に「再生資源利用促進法」が制定されてからではないかと思います。それでも、もう30年経ちます。しかし、高コストのため実際にリサイクルに回されているのはわずかです。
また「プラスチックごみ問題」が声高に叫ばれるようになり、2019年に大阪で開催されたG20では「海洋プラスチックごみ問題」が取り上げられました。しかし、最大の排出国は中国で、日本はわずかです。
2020年7月からは「レジ袋の全面的有料化」が実施されました。しかし、これがどうして環境問題の解決につながるのか理解に苦しみます。デメリットの方が大きいようです。
「自動販売機からペットボトルを排除」する動きもあります。これなどは「プラスチック憎し」という感情論のようで、全くナンセンスです。
ファーストフード店の「ミスタードーナツ」で「プラスチック製ストローの提供取りやめ」が行われるようになりました。ただし、その代用として「プラスチック製マドラー」を提供しているのは不思議なことです。「プラスチック製ストロー」はダメで、なぜ「プラスチック製マドラー」はOKなのか訳が分かりません。
「割りばしが環境破壊につながるので使用しない」という主張も聞かれますが、私は「森林の間伐材の有効利用」になるので、日本の林業のためにはむしろ「割りばしの使用を推進すべき」だと思っています。
2.「偽善エコロジー『環境生活』が地球を破壊」という武田邦彦氏の主張は傾聴に値する
武田邦彦氏の主張のポイントは次の通りです。私も同感のところが多く、現在の世界に蔓延している「温暖化問題」や「プラスチックごみ問題」についての安直で不合理な風潮に、正しく鋭い警告を発していると私は思います。
(1)ほとんどのリサイクル(再生使用)は無駄
①エコバッグは「エゴバッグ」、レジ袋を使う方がエコ
・レジ袋は石油の捨てる部分を利用して作っているので、資源の無駄使いではない
・エコバッグを作る材料の消費のほうが、レジ袋を作るより環境に負担がかかる
・ごみを捨てる時にレジ袋を使えば無駄がない。レジ袋の使い回しもリユース(再利用)
②マイ箸もエコではない
・「森林を守るため」という大義名分で始まった「割りばしを使わないマイ箸運動」だが、端材となった木材を有効利用する割りばしは悪者ではない
③生ごみを堆肥にすると危険性もある
・自宅で出た生ごみをコンポストで処理して堆肥にしても、有害な食品添加物が混入している可能性があるし、自宅以外に設置したコンポストなら有害物質が混入される恐れもある
④古紙のリサイクルも問題が多い
・「100%リサイクル紙」が実はほとんどリサイクル紙でなかったという「リサイクル紙偽装問題」があったが、その原因は「リサイクル紙を作るには資源をかえって多く使うため」
・紙の原料は繰り返し使うと繊維がダメになり劣化する
・リサイクルには大量の石油を必要とする
・処理する時に大量の薬品を使うので、その廃棄問題も起きる
⑤牛乳パックのリサイクルは意味がない
・回収量が紙全体で見ると少なすぎるので、手間をかけてリサイクルする意味がない
⑥ペットボトルのリサイクルも意味がない
・ペットボトルは有害物質も出ずきれいに燃えるので、生ごみを燃やすエネルギーとなる
⑦ガラス瓶や食品トレーもリサイクルに向かない
・「ガラス瓶」はリサイクルするのに大変手間がかかるので、リサイクルに向かない
・「食品トレー」はペットボトルと同様に生ごみを燃やすエネルギーとして有効利用すべき
(2)ダイオキシンは危険ではない
「ダイオキシン」は焚火でもタバコでも焼き鳥でも出るそうです。本当に有害ならこれらも規制すべきことになります。「ダイオキシン」が有害物質として問題視されることによって、それ以外の有害物質に目が行かないリスクがあると警告しています。
これは、現在の「新型コロナウイルス肺炎」騒ぎで、コロナだけが注目されてその他の病気に目が向けられていない状況に似ていると私は思います。
(3)「ドイツ信仰」はやめるべき
よくドイツが「環境先進国」と言われますが、武田教授によれば「日本人の方が、ドイツ人よりごみを出さない生活をしている」とのことです。
(4)金属以外のごみはリサイクルしない方がよい
武田教授は、ごみは「金属」と「その他のごみ」の2種類に分別すれば十分だと提唱しています。レアメタルなどを含む「金属ごみ」は「都市鉱山」とも言われるように宝の山で、資源小国の日本にとっては貴重な資源です。
(5)武田邦彦氏とは
武田邦彦氏(1943年~ )は、東大教養学部基礎科学科卒の工学博士で、現在は中部大学総合工学研究所特任教授です。東大卒業後、旭化成に入社し、ウラン濃縮の研究などに携わり、ウラン濃縮研究所長も務めました。
本来の専攻は資源材料工学ですが、2007年からは地球環境問題について、自身の主張をテレビ・ラジオ等のマスメディアへの露出や著書の出版、ウェブサイトなどで情報発信しています。
3.プラスチック業界も「プラスチックの再利用はコストに見合わない」と認めた
プラスチック業界は、「プラスチックをリサイクルすれば人類をプラスチック汚染から遠ざけることができる」と、膨大な予算を賭けて長年にわたって呼び掛けて来ました。
しかし、ほとんどのプラスチックのリサイクル処理はコストがかかりすぎることが、公共ラジオNPRとドキュメンタリー番組「フロントライン」が2020/9/11に公開したレポートで明らかになりました。
プラスチック業界は数十年間ものあいだ、この「現実」から目をそらし続けてきたのです。
EPA(米国環境保護庁)によると、1960年以降に生産されたプラスチックのうち、リサイクルされたのはわずか10%未満だということです。
しかも、プラスチックのリサイクルには多大な費用がかかる上、再生可能な回数は1回か2回程度だということです。