「秋の七草」と言えば、秋を代表する草花を集めたもので、日本人の繊細な季節感を表すものですが、今では一般に馴染みのないものも入っています。
そもそもこれは誰がどのような基準で選んだのでしょうか?
今回はこの「秋の七草」の名前と由来や覚え方をご紹介したいと思います。
1.秋の七草とは
(1)オミナエシ(女郎花)
女郎花の名前の由来は、花の美しさが美女を圧倒するためという説があるほど、優雅で美しい花として古代の人に親しまれた花。
女郎花の根と全草には、解毒・鎮痛・利尿などの作用があります。
(2)ススキ(芒)
別名は「尾花(おばな)」で、お月見には欠かせない飾りの一つ。
(3)キキョウ(桔梗)
桔梗はその形の良さから多くの武将の家紋に用いられました。中でも明智光秀の水色桔梗の家紋は有名です。
桔梗の根を乾燥させ粉末にしたものは、痰や咳の薬として用いられます。
(4)ナデシコ(撫子)
日本女性の清楚さを表す「大和撫子」の「撫子」はこの花のこと。
(5)フジバカマ(藤袴)
藤袴の名前の由来は、花の色が淡紫色で、弁の形が筒状で袴に似ているため。乾燥させると桜餅の桜葉と同じ良い香りがするため、洗髪や香水にも用いられます。
(6)クズ(葛)
葛湯・葛切り・葛餅などで今でも親しみ深い花。葛の根を乾燥させた「葛根(かっこん)」は民間治療薬として、風邪や胃腸不良などに用いられます。
(7)ハギ(萩)
秋のお彼岸に供える「おはぎ」の名前の由来にもなっています。
2.秋の七草の由来
秋の七草は、日本の秋の花を代表するものとされています。誰が選定したという記録はありませんが、奈良時代の歌人「山上憶良(やまのうえのおくら)」(660年?~733年?)が詠んだ次の2首の歌(2首目は「旋頭歌(せどうか)」)が由来と言われています。
・秋の野に咲きたる花を指折り(およびをり)かき数ふれば七種(ななくさ)の花
・萩の花尾花葛花瞿麦(なでしこ)の花姫部志(をみなへし)また藤袴朝貌(あさがほ)の花
このうち、「朝貌の花」が現在の何の花を指すかについては、朝顔・木槿(むくげ)・桔梗・昼顔など諸説ありますが、桔梗とする説が最も有力です。
「春の七草」は「食」を主眼としていますが、「秋の七草」は「花」を主眼として選ばれています。また、春の七草の「七草粥」のような行事は何もなく、あくまでも観賞用です。
なお、江戸時代の好事家が、外来種も取り入れた次のような「新秋の七草」を選んでいます。
①リンドウ(竜胆)(中国原産)
②オシロイバナ(白粉花)(南アメリカ原産)
③トロロアオイ(黄蜀葵)(中国原産)
④ヒオウギ(檜扇)
⑤ゴジカ(午時花)(熱帯アジア原産)
⑥ユウガオ(夕顔)
⑦カラスウリ(烏瓜)
3.秋の七草の覚え方
(1)「語呂合わせ」で覚える方法(その1)
「お好きな服は?」:「おみなえし」「すすき」「ききょう」「なでしこ」「ふじばかま」「くず」「はぎ」の頭文字を取った覚え方で、一番覚えやすいと思います。
(2)「語呂合わせ」で覚える方法(その2)
「おきなはすくふ(沖縄救う)」:「おみなえし」「ききょう」「なでしこ」「はぎ」「すすき」「くず」「ふじばかま」の頭文字を取ったものですが、「歴史的仮名遣い」に基づく頭文字なので、難しいかもしれません。
4.「七草」とは
「七草」とは、7種類の野草・野菜のことです。
野菜が入った粥(七草粥)を「人日(じんじつ)の節句」(1月7日)の朝に食べる風習が今でも残っています。
元々の「七草」は「秋の七草」を指し、「小正月(こしょうがつ)」(1月15日)のものは「七種(ななくさ)」と書きます。一般に7日正月のものは「七草」と書きます。
今ではもともとの意味は失われ、人日の風習と小正月の風習が入り混じり、1月7日に「七草粥」が食べられるようになったと考えられています。
年末年始やお正月を終え、胃や身体をいたわるために七草粥を食べ、今年一年の無病息災を願う行事です。野菜が乏しい冬場に不足しがちな栄養素を補うという効能もあります。