秋になると木々が紅葉や黄葉に色づき、京都や奈良の神社仏閣やその他の「紅葉の名所」に「紅葉狩り」に出かける人も多くなります。
また童謡「もみじ」に歌われているように山々も美しく彩られ、「錦秋(きんしゅう)」という言葉がぴったりします。
ところでなぜ落葉広葉樹は紅葉あるいは黄葉するのでしょうか?また楓(かえで)のように「黄葉から徐々に紅葉するもの」と、銀杏のように「黄葉だけのもの」があるのはなぜでしょうか?
1.黄葉と紅葉
(1)なぜ黄葉するのか?
木の葉には、「クロロフィル」という緑色の色素と、「カロチノイド」という黄色の色素が含まれています。
これらは葉の葉緑体の中にあり、春と夏の日差しの良い日には協力して「光合成」を行います。この時点では「クロロフィル(緑)」の方が強いので、葉の色は緑です。
しかし、秋になって日差しが弱くなると、先に「クロロフィル」の方が先に分解されてしまい、「カロチノイド(黄)」だけが残ります。この時点で葉の色は黄になります。
これが黄葉です。イチョウやクヌギなどが代表的なものです。
(2)なぜ紅葉するのか?
ところが、カエデやトウカエデのように紅葉する植物は、葉の中に糖分が増え、「アントシアニン」という紅い色素が合成されます。この時点で葉の色は紅になります。
これが紅葉です。
(3)葉の色の変化
葉の色の状態をまとめると次のようになります。
・緑色→クロロフィルの分解
・黄色→カロチノイドの分解
・紅色→アントシアニンの合成
①葉が緑色から黄色になるもの(黄葉)
黄色から紅色の反応がほとんど見られないため、黄の葉のまま散ってしまいます。
(例)イチョウ・クヌギ・カバノキなど
②葉が緑色から紅色になるもの(紅葉)
厳密に言うと黄色になる時もありますが、黄と紅がほぼ同時に進行します。そのため、黄色の状態が飛ばされたように見えます。
(例)カエデ・モミジ・ツツジなど
③葉が緑色から黄色を経て紅色になるもの(紅葉・黄葉)
葉の要素が順番に分解と合成を経て色が変わります。
(例)トウカエデなど
2.なぜ枯れると葉が茶色になるのか?
葉は黄色や紅色になった後、茶色に変化します。この原因は紫外線を吸収したり、葉を動物に食べられにくくする働きを持つ「タンニン」という物質によるものです。
葉の中に残っていた黄色の色素・カロチノイドや赤色の色素を作るアントシアニンが、葉の老化によって分解されると、葉の細胞の中に含まれるタンニンが他の分解された物質と多数結合することによって葉が茶色に変化するわけです。
3.常緑樹は黄葉(あるいは紅葉)しないのか?
秋の黄葉(あるいは紅葉)の時季になっても、クスノキやツバキなどの常緑樹は変化がありません。
では常緑樹は全く黄葉(あるいは紅葉)しないのかというとそうではありません。常緑樹の葉も古くなってくると順に枯れて、葉が枯れ落ちる時には紅葉します。
しかし、落葉広葉樹のように一斉に紅葉してから葉が落ちるわけではないので、目立たないだけです。
常緑樹が紅葉して落葉することを「常磐木落葉(ときわぎおちば)」と言い、初夏の季語です。4~5月頃のクスノキの落葉を観察しているとよくわかります。