1.「使い捨て」が流行し始めた1980年代
私がゴルフを始めた昭和54年(1979年)頃から、各社の「使い捨てカイロ」が発売されるようになり、冬のゴルフには欠かせないアイテムになりました。
「写ルンです」のような「使い捨てカメラ」や「パンパース」のような「使い捨て紙おむつ」が発売されたのも1980年代ではないかと思います。何かと「使い捨て」が流行するようになった時代です。
2.「使い捨てカイロ」が温まる原理
ところで、「ホカロン・ホッカイロ・桐灰はる」等の「使い捨てカイロ」はなぜ温まるのでしょうか?
(1)「使い捨てカイロ」発熱の仕組み
鉄を濡れたまま放置しておくとさびが出ます。これは「鉄の酸化」、つまり「鉄が空気中の酸素と反応して酸化鉄(水酸化第二鉄)になる化学反応」です。
この「酸化鉄になる化学反応が起こる時に出る熱を有効利用したもの」が「使い捨てカイロ」です。
鉄がさびる時にも熱が出ているのですが、普通はゆっくりと反応が進むので熱として感じることがないのです。
(2)「使い捨てカイロ」各成分の役割
①鉄粉
酸化反応になくてはならないもので、さびることにより発熱します。原料の半分以上は鉄粉(純鉄)です。
②水
鉄粉がさびる速度を早くします。
③塩類
「触媒」としての働きをします。自らは変化しません(酸化反応には直接関与しません)が、鉄粉がさびる(酸化反応する)のを促進する働きがあります。
④活性炭
表面の微孔に空気中の酸素を吸着させて、酸素の濃度を高め、鉄粉が早くさびるようにします。
⑤保水材
水で鉄粉がベタベタするのを防ぐために、水を含ませておきます。観葉植物の保水土として利用される「バーミキュライト」が多く使われます。
「バーミキュライト」は、日本名「ヒル石」という雲母系の原鉱石から作られる人工用土です。
カイロにはかなりの水が含まれているのに、中の鉄粉がサラサラしているのは、バーミキュライトの表面の小さな穴に水分を取り込んで保水材の役割を果たしているからです。
(3)使い捨てカイロの酸化反応の化学式
3.「使い捨てカイロ」の温度を早く上げる方法
冬になると大活躍する「使い捨てカイロ」ですが、いざ使う時になるとなかなか温まらず、一生懸命振ったり揉んだりしている人をよく見かけます。
昔の「使い捨てカイロ」は、中の鉄粉が片寄ってしまうことがあり、振ったり揉んだりすることで均一にする意味があったのですが、最近のカイロは片寄りにくく改良されているため、その必要はありません。
カイロの温度を早く上げるには、「息を吹きかける」ことが一番の近道です。息に含まれる酸素によって鉄粉の酸化を助け、早く温めることができるというわけです。
そう言えば、私の子供の頃は五右衛門風呂の焚き口で「火吹き竹」に息を吹き込んで薪を燃えやすくしました。あの「燃焼の原理」と同じですね。
4.「カイロ(懐炉)」の歴史
「カイロ(懐炉)」は、「懐中に熱源を入れて暖を取る道具」のことです。
「カイロ」の始まりは、温めた石を布で包んで懐中に入れる「温石(おんじゃく)」と言われています。平安時代末期から江戸時代まで人々に親しまれて来ました。「懐石料理」の「懐石」は「温石」に通じるものです。
明治時代になると、麻殻の粉末や桐灰などを容器の中で燃やす「懐炉灰(かいろばい)」が普及しました。さらに大正時代に入ると、ベンジンが気化して出るガスを使って熱を作る「ベンジンカイロ」が使われるようになりました。
そして昭和50年代に、現在主流となっている「使い捨てカイロ」が登場することになるわけです。