言動を表す四字熟語(その1)立ち居振る舞い・熟考

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衣食礼節

漢字発祥の国だけあって、中国の「四字熟語」は、人生訓にもなるような含蓄に富んでおり、数千年の悠久の歴史を背景とした故事に由来するものも多く、人類の叡智の結晶とも言えます。

そこで今回は、「言動」を表す四字熟語のうち、「立ち居振る舞い」「熟考」を表す四字熟語をご紹介したいと思います。

1.立ち居振る舞い

(1)衣食礼節(いしょくれいせつ)

日常の生活が満ち足りて、安定していればこそ、人は礼儀を知り節度をわきまえることができるということ。

「衣食」は、着るものと食べるもので、生活の必需品。「礼節」は、礼儀と節度。

一般に「衣食足りて礼節を知る」という。

(2)一挙一動(いっきょいちどう)

ちょっとした動作・振る舞いのこと。ちょっとしたしぐさ。ちょっと手を挙げたり、ちょっとからだを動かしたりの意から。

立ち居振る舞い・しぐさを表す「挙動」を分けて、「一」をそれぞれに添えたもの。「一挙手一投足」と類義。「一」はちょっとした、また一度の意。

(3)外寛内深(がいかんないしん)

見た目は大らかに見えるが、心は厳しく、無慈悲なこと。

「外寛」は見た目は寛大に見えること。「内深」は心の中は無慈悲なこと。

(4)嘉言善行(かげんぜんこう)

戒めとなる素晴らしい言葉と立派な行いのこと。

「嘉言」は素晴らしい言葉。「善行」は立派なよい行い。

(5)起居動静(きこどうじょう)

日常。または、普段の生活の立ち居振る舞いのこと。

「起居」は立つことと座ること。または、普段の生活での動作のこと。
「動静」は様子や動きのこと。

(6)行住坐臥(ぎょうじゅうざが)

日常の立ち居振る舞いのこと。転じて、ふだん・常々の意。

「行」は歩くこと。「住」はとどまること。「坐」は座ること。「臥」は寝ること。仏教ではこれを四威儀(しいぎ)という。

(7)挙止迂拙(きょしうせつ)

立ち居振る舞いがぎこちないこと。

「挙止」は動作、立ち居振る舞いのこと。
「迂拙」は不器用なこと。または、役に立たないこと。

(8)挙止進退(きょししんたい)

人の立ち居振る舞いや身の処し方。

「挙止」「進退」はともに立ち居振る舞い・動作・行動の意。また、身の処し方。「挙」は事を起こす、行動を起こす意。

(9)挙措失当(きょそしっとう)

事に当たって対処の仕方や振る舞いが適当でないこと。

「挙措」はからだのこなし。動作。態度。立ち居振る舞い。「失当」は適当さを欠くこと、適当でないこと。

「挙措(きょそ)、当(とう)を失(しっ)す」と訓読する。

(10)挙措動作(きょそどうさ)

「挙」は、上にあげること。「措」は、下におくこと。「挙措」は、身のこなし・立ち居振る舞いのこと。

出典(『漢書』匡衡)の「挙措動作、物は其(そ)の儀(ぎ)に遵(したが)う。故(ゆえ)に形(かたち)仁義(じんぎ)法則(ほうそく)を為(な)す」による。

(11)軽挙妄動(けいきょもうどう)

軽はずみに何も考えずに行動すること。是非の分別もなく、軽はずみに動くこと。

「軽挙」は深く考えずに行動すること。「妄動」は分別なくみだりに行動すること。

(12)坐臥行歩/座臥行歩(ざがこうほ)

立ち居振る舞いのこと。座ったり、寝たり、歩いたりする意から。

(13)坐作進退/座作進退(ざさしんたい)

立ち居振る舞いのこと。日常の動作。座る、立つ、進む、退くの意から。

「作」は立つ意。

(14)左程右準(さていゆうじゅん)

全ての行動が道徳的な手本の通りなこと。

「程」や「準」はどちらも物事を行う上での基準。

(15)持盈保泰(じえいほたい)/保泰持盈(ほたいじえい)

安らかで満ち足りた状態を維持し続けること。
または、慎重に行動して災いを招かないようにすること。

「持盈」は満ち足りた状態を維持すること。「保泰」は安らかなことを維持すること。

(16)常住坐臥(じょうじゅうざが)

日常、座っているときでも寝ているときでも、いつも。ふだんの生活で。四六時中。

「常住」は、歩くことと立ち止まることの意の「行住(ぎょうじゅう)」の誤用。本来の意味は、一定の場所に住むこと。「坐臥」は、座ることと横になって寝ること。

(17)立居振舞(たちいふるまい)

立ったり座ったりの身のこなし。日常の動作。たち振る舞い。

(18)日常坐臥/日常座臥(にちじょうざが)

寝ているときも座っているときも。ふだん、いつでも。

「坐臥」は座ることと寝ること。すなわち、起きているときも寝ているときもの意。

2.熟考

(1)三思九思(さんしきゅうし)

何度も繰り返して深く考えること。

「三思」と「九思」はどちらも深く考えること。
「三…九…」は何度もという意味。

(2)三思後行(さんしこうこう)

物事を行うとき、熟慮したのち、初めて実行すること。三たび思い考えた後に行う意から。

もとは、あまりに慎重になり過ぎると断行できず、また、別の迷いを生ずるのを戒める言葉であったが、今では一般に軽はずみな行いを戒める語として用いられる。

「思」は思い考える、熟慮する意。

一般に「三(み)たび思(おも)いて後(のち)に行(おこな)う」と訓読を用いる。

中国魯(ろ)国の家老の季文子(きぶんし)はきわめて慎重な人で、三度考えてから初めて実行したが、孔子はこれを聞いて、「二度考えればそれでよろしい」と言った故事から。

(3)熟思黙想(じゅくしもくそう)

黙って、心を平静にしてじっくりと考えること。

「熟思」は十分に考える、よく考えをめぐらすこと。「黙想」は黙って、心を静かにして思いにふけること。

(4)熟読三思(じゅくどくさんし)

しっかりと考えながら読んで、その内容を繰り返し考えること。

「熟読」は文章をしっかりと考えながら読むこと。「三思」は何度も考えること。

(5)深識遠慮(しんしきえんりょ)

これから先の出来事までしっかりと考えること。

「深識」は判断力や理解力が深いこと。「遠慮」はこれから先のことを深く考えること。

(6)審念熟慮(しんねんじゅくりょ)

物事の本質を明らかにして、正しい筋道を得るために深く考えること。

「審念」は物事の本質を見極めるために深く考えること。「熟慮」は深く考えること。

(7)千思万考(せんしばんこう)

何度も考えること。また、あれこれ考えて思いをめぐらすこと。

「千」「万」は数の多いことを示す。「思」は細かいことを考える。何回も思考してみるという意味。

(8)沈思凝想(ちんしぎょうそう)

しっかりと集中して考えること。

「沈思」は一心に考えること。「凝想」はじっと考えること。

(9)瞑目沈思(めいもくちんし)

目を瞑って深く考えること。

「瞑目」は目を瞑ること。「沈思」は落ち着いてしっかりと考えること。