非難を表す四字熟語(その1)傲岸・傍若無人

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頤指気使

漢字発祥の国だけあって、中国の「四字熟語」は、人生訓にもなるような含蓄に富んでおり、数千年の悠久の歴史を背景とした故事に由来するものも多く、人類の叡智の結晶とも言えます。

そこで今回は、「非難」を表す四字熟語のうち、「傲岸・傍若無人」を表す四字熟語をご紹介したいと思います。

1.傲岸・傍若無人

(1)頤指気使(いしきし)

横暴な態度で人を酷使すること。または、横暴な態度で人に指図することのたとえ。

「頤」は顎のこと。言葉ではなく、顎や指で指示を出すということから。

「頤(あご)もて指(さ)し気(き)もて使(つか)う」と訓読します。

(2)我慢勝他(がまんしょうた)

他の人以上に自分の考えを押し通すこと。
または、自分は他の人よりもすぐれていると思い上がって見下すこと。

仏教の言葉で、「我慢」は七慢のうちの一つで、自負心が強いこと。
「勝他」は他の人よりもすぐれていると思うこと。

(3)驕慢放縦(きょうまんほうじゅう/きょうまんほうしょう)

自分勝手におごり高ぶっている様子。

「驕慢」は他人を見下して、好き勝手にすること。「放縦」は自分勝手に振る舞うこと。

(4)蒹葭玉樹(けんかぎょくじゅ)

愚かな人が、富貴な親戚の勢いと力を借りること。
または、勢いのある親戚のおかげで繁栄することを軽蔑していう言葉。
または、それを謙(へりくだ)って言う言葉。

「蒹葭」は成長しきっていない、オギとアシのことで、身分の低い人のたとえ。
「玉樹」は宝石のように美しい木のことで、身分が高く、富のある人のたとえ。
植物のオギとアシが、宝石のように美しい木に寄りかかるという意味から。

「蒹葭玉樹に倚(よ)る」を略した言葉。

(5)傲岸不遜(ごうがんふそん)

おごりたかぶって人を見下すさま。思いあがって謙虚さのないさま。

「傲岸」はお高くとまって威張ること。「傲」はおごる意。「岸」は切り立った崖の意で、際立って高い、角立つさま。「不遜」は高ぶってへりくだらないこと。

(6)傲岸無礼(ごうがんぶれい)

人を見下して、礼儀に外れている様子。

「傲岸」はいばり人を見下すこと。「無礼」は礼儀に外れている様子。

(7)傲慢不羈(ごうまんふき)

人を見下して偉そうな態度で、誰にも縛られないこと。

「傲慢」は人を見下し、偉そうな態度をとること。
「不羈」は誰にも縛られないこと。または、すぐれた才能があり、自由に振舞うこと。

(8)傲慢不遜(ごうまんふそん)

いい気になって、人を見下す様子。

「傲慢」は人を見下す態度。「不遜」は他人を敬うことがないこと。

(9)傲慢無礼(ごうまんぶれい)

おごりたかぶって、他人をあなどり、礼儀を知らないような態度をとること。また、そのさま。

「傲慢」は、おごりたかぶって、他人をあなどること。「無礼」は、礼儀を知らないこと。また、そのさま。

(10)傲慢磊落(ごうまんらいらく)

人を見下して偉そうな態度で、小さなことをないがしろにすること。

「傲慢」は偉そうに他者を見下す態度のこと。
「磊落」は心が広く、小さなことにこだわらないこと。

(11)狐仮虎威(こかこい)

権力や権威のある者の威力を借りて、自分勝手に振る舞うたとえ。また、有力者の威力をかさに着て、勝手に振る舞う者のたとえ。

「狐(きつね)、虎(とら)の威(い)を仮(か)る」と訓読します。

「虎の威を仮(か)る狐」が慣用句。

(12)自高自大(じこうじだい)

大きな態度をとって他人を見下すこと。

「自高」と「自大」はどちらも自分で自分を大きいものだと思うこと。

(13)自負自賛/自負自讃(じふじさん)

自分の行為をすぐれていると思い込み、自分の行為を褒めること。

「自負」は自分の才能をすぐれていると思い込むこと。
「自賛」は自分の行いを自分で褒めること。

(14)出言不遜(しゅつげんふそん)

言葉遣いや話し方が偉そうで、他人を敬わない、無礼な人のこと。

「出言」は言葉を出すこと。または、言葉そのもののこと。「不遜」は無礼なこと。

(15)飛揚跋扈(ひようばっこ)

思うままにのさばり振る舞うこと。また、臣下が権威をほしいままにして君主をしのぐたとえ。規制や拘束などを無視して横暴に振る舞うこと。

「飛揚」は猛禽(もうきん)が飛び上がる、舞い上がること。「跋扈」の「扈」は水中に仕掛けて魚を捕らえる竹垣の意。「跋」は越える意で、大魚がそれを越えて抜け出ること。

(16)眄視指使(べんししし)

他人を見下した態度をとること。

「眄視」は視線だけで横を見る目つき。「指使」は見下した態度で指で指示を出すこと。
どちらも傲慢な態度で人を使う様子をいう。

(17)目指気使(もくしきし)

言葉でなく、目で合図したり顔色で示したりして、自分より目下の者を指図し、こき使うこと。また、勢い盛んで、傲慢な態度のことをいう。

「目指」は目くばせで、人を指図し使うこと。「気使」は口にすることなく、手ぶりで人に命令すること。

中国前漢の貢禹(こうう)は、「行為が犬や豚のようであっても、裕福な家で勢い盛んであるならば、目くばせや顔つきだけで目下の者をこき使い、このようなことをすぐれたこととしている」と元帝に上書したという故事から。

(18)唯我独尊(ゆいがどくそん)

この世で、自分ほど偉いものはいないとうぬぼれること。この世の中で自分より尊いものはいないという意味。

釈迦が生まれたときに七歩歩き、一方で天を指し、他方で地を指して唱えたという言葉と伝えられる。

「天上天下(てんげ)唯我独尊」の略。「唯我」はただ自分のみということ。「独尊」は自分だけが一人尊いということ。

(19)放歌高吟(ほうかこうぎん)/高吟放歌(こうぎんほうか)

あたり構わず、大きな声で歌うこと。

「放歌」は周囲を気にせず大声で歌うこと。「高吟」は大きな声で詩を吟ずること。

「高歌放吟(こうかほうぎん)」ともいう。

(20)傍若無人/旁若無人(ぼうじゃくぶじん)

人前をはばからず、勝手に振る舞うさま。他人を無視して、勝手で無遠慮な言動をする様子。

「傍(かたわら)に人(ひと)無(な)きが若(ごと)し」と訓読します。

(21)放縦恣横(ほうじゅうしおう/ほうしょうしおう)

好き放題に振る舞うこと。

「放縦」と「恣横」はどちらもわがままという意味で、同じ意味の言葉を重ねて強調した言葉。

(22)放縦不羈(ほうじゅうふき/ほうしょうふき)

何ものにも縛られず、好きなように振る舞うこと。

「放縦」は好き勝手に振る舞うこと。「不羈」は何ものにも縛られないこと。

(23)放蕩三昧(ほうとうざんまい)

酒色にふけって身を持ち崩すこと。品行が悪く、勝手気ままにふるまうこと。

「放蕩」は、酒と女に溺れて身持ちが悪いこと。「三昧」は、他をかえりみないほど、あることに熱中すること。

(24)放蕩不羈(ほうとうふき)

思うまま好き勝手に振る舞うこと。

「放蕩」は好き勝手に振る舞うこと。「不羈」はなにものにも縛られないこと。

(25)放蕩無頼(ほうとうぶらい)

酒色にふけり、勝手気ままに振る舞って品行の定まらないさま。

「放蕩」はほしいままに振る舞うこと。酒色におぼれて身もちが定まらないこと。「無頼」は定職をもたず素行の悪いさま。

(26)放辟邪侈(ほうへきじゃし)

勝手気ままで、わがまま放題に悪い行為をすること。

「放」はほしいまま、わがままの意。「辟」は偏る意。「邪」はよこしまの意。「侈」はおごり高ぶる意。

(27)慢業重畳(まんごうちょうじょう)

非常に傲慢なこと。または、そのような気持ちを持つこと。

「慢業」は仏教の言葉で、人に自分のことを誇ったり、偉そうな態度をとったりすること。
「重畳」は何重にも重なり合うという意味の言葉で、「慢業」の意味を強めるための言葉。